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ヒマワリの誓い~郵便猫ルカの配達日誌~  作者: 咲晴


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7/8

約束の場所

 オルソンの「早く読んだ方がよい」というアドバイスが気になったミミは、急いで閉店作業を行いました。

 そして、奥で植物図鑑を見ているオリバーに、店じまいの報告をしました。

 

「オリバーさん、閉店作業終わりました」

「ありがとう。もうそんな時間か。おや? 今日は少し早いね」

「ええ。今日はお客さんも落ち着いてたので」

「そうかい。今日はゆっくり休みなさい」

「ありがとうございます。オリバーさん、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


 ◆

 

 オリバーに挨拶を済ませると、ミミは足早に店の二階に間借りしている自分の部屋へ戻りました。

 

 ミミは、夕食は後回しにして冷たいハーブティーだけ用意すると、早速手紙を読み始めました。

 ハーブティーにしたのは、ミナを思い出したからでした。

 いつも飲んでいるお茶なのに、一口飲むとなんだかとても懐かしい気持ちになりました。

 

 封筒を開けると、ミナからの手紙と空の封筒、そしてヒマワリ色の封筒が入っていました。

 ヒマワリ色の封筒にも、『ミミへ』と自分の名前が宛名に書かれていました。

 ミミは、ミナの手紙から読むことにしました。

 

 『ミミへ

 

 元気にしていますか?

 突然あなたが引っ越して連絡もないので、風見の町のみんなが今も心配しています。

 

 空の封筒に手紙を入れると、風が私の元に手紙を運んでくれます。

 近況を教えてください。

 時間ができたら、風見の町のみんなに顔を見せてあげて。


 それから、ヒマワリ色の手紙です。

 あなた宛てのこの封筒が風見の町のポストに入っていたそうです。

 でも引っ越し先が分からず、届けることができませんでした。

 森の向こうの町であなたを見かけたことがあったから、ルカから手紙を預かり、友人のオルソンに手紙を託しました。

 

 無事にヒマワリ色の手紙が、あなたに届いていますように。

 風の恵みがあらんことを。


 ミナ』


 ミミは、読み進めていくうちに懐かしさを覚えました。同時に、風見の町のみんなに心配させてしまったことに胸を痛めました。

 空の封筒を見つめながら、ミミは思いました。

 

「ダメだわ……私って、いつもそそっかしくて。この封筒のように、ミナさんの心遣いを見習わなきゃ」

 

 ミミは後でミナへ手紙を書こう、と決めました。

 空の封筒の代わりに、ヒマワリ色の封筒を手に取ります。

 裏を返すと、差出人には『リオ』と書かれていました。

 

「まあ……リオからだわ」

 

 少し前に偶然会ったきりで、彼にも連絡をしていませんでした。

 ヒマワリ色の封筒は、『またヒマワリの丘に行きたいね』というリオとの約束を思い出させました。

 封筒を開けると、そこにはたった一行だけ書かれた便せんが入っていました。


 『日曜日、約束の場所で待っています』


 ミミは、とても困惑しました。


「日曜日……明日なの? もうリオったら、これじゃ、いつの日曜か分からないじゃない。……どうしましょう」


 ミミは、すぐさま部屋を飛び出して階段を駆け下り、オリバーの元へ向かいました。

 答えが出るよりも先に体が動いていました。

 

 ◆

 

 トントントン――。


「はい。ミミちゃん、どうしたんだい?」

「お休みのところすみません、オリバーさん。それと急で申し訳ないのですが、お願いがありまして――」


 オリバーは、『とりあえず、中へお入り』と、快くミミを迎えてくれました。


 椅子に座ると、ミミは困り顔で言いました。


「本当に急ですみません。明日お休みをいただけないでしょうか。友達から手紙が来て、会えないかと。それが、明日みたいで――」

「店のことは気にせず、いっておいで。大丈夫だから。そういえば、お休みらしいお休みをあげられてなかったね。休みのはずなのに、ミミちゃん手伝ってくれるから」


 オリバーは、にっこりと微笑んで言いました。

 オリバーの返事を聞いて、ミミの顔はパッと花が咲いたように明るくなりました。


「ありがとうございます」

「楽しんでおいで」


 ミミは、もう一度『おやすみなさい』と声をかけ、部屋を後にしました。

 階段を上がる足取りは、軽やかでした。


 

「そうだったわ、忘れないうちに、手紙を書きましょう」


 ミミは、可愛らしい花柄の便箋を引き出しから持ってきて、ミナへ手紙を書き始めました。


 ミミは、手紙を届けてくれたお礼、近況と明日風見の町へ遊びに行くことを書きました。

 風見の町へは、ヒマワリの丘からの帰りに寄ろうと考えていました。

 書き終わると、ミナが同封してくれた空の封筒に手紙を入れます。

 

 すると、不思議なことに封筒はふわり、ふわりと浮かび上がり、窓に向かって飛び始めました。

 しかし、窓は閉まっていて、手紙は何度も窓にぶつかっていました。

 

「ふふふっ」


 ミミは、なんだかその様子がおかしくて、笑ってしまいました。

 『よろしくね』とそっと手紙に声をかけ、窓を開けると手紙はぴゅうと空高く飛んで行きました。


 ミミは、しばらく手紙が飛んで行った方を眺めていました。


 涼しい風と共に、虫の声が聞こえてきました。

 

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