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ヒマワリの誓い~郵便猫ルカの配達日誌~  作者: 咲晴


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2/2

相談

 ルカは郵便局へ着くと、まずポストの中を確認しました。

 いつもなら、ルカが両手で抱えるほどの量ですが、珍しく郵便物はあまりありませんでした。

 

 郵便物の一番上に少し厚みのある封筒が目に留まりました。柔らかなヒマワリ色の封筒を、ルカはそっと手に取りました。

 

「ミミへ」

 

 と封筒に書かれた宛名を見た時、ルカは、ハッとあのウサギの青年のことを思い浮かべました。

 封筒を裏返すと「リオ」と書かれていました。

 

 ルカは、不思議とその手に取った封筒から、後悔の気持ちと、少しの希望のようなものを感じ取りました。

 郵便魔法を扱うルカは、郵便物に込められた強い思いを感じ取ることがありました。

 

 ノンノが言っていたことは当たっていたのかもしれない、とルカは思いました。

 ルカは、他の郵便物を一緒に大切に抱え、ちょっと困った顔で考え事をしながら郵便局へ入っていきました。


 ルカは、作業台の上に郵便物をそっと置きました。そして、ミミ宛の手紙をもう一度手に取り、また悩み始めました。

 

 ルカの使う郵便魔法は、送り先の家を思い浮かべて使います。どんなに遠くても、送る場所さえ分かれば届くのです。しかし、ミミのことはもちろん知っていますが、肝心の引っ越し先は分かりません。つまり、ルカには届ける術がありませんでした。

 

 時には、魔法では届けられない手紙がルカのもとへ舞い込んでくることがあります。これまでは、魔法の代わりに自分の足で解決してきました。しかし、それは町の中で解決できたからでした。

 

 今回は、どこの町かもわかりません。

 

 ルカは、試しにミミを思い浮かべて郵便魔法を使ってみましたが、手紙は動きませんでした。

 ルカは、自分の力で手紙を届けられないことをとても悔しく思いました。


 もしかしたら、ミミがひょっこり風見の町へ遊びに来るかもしれません。ルカは、それまで手紙を預かっておくことも考えました。しかし、あのウサギの青年の落胆ぶりを思い出すと、一刻も早く手紙を届けた方がよいと思うのでした。

 

 ミミの引っ越し先を知る住民はいるだろうか。自分で届けられる距離だろうか……いろいろと考えを巡らせますが、いい方法は思いつきません。


「――カ。おーい、ルカ。聞こえとるか?」


 誰かに呼ばれてルカはハッとしました。周りも気づかないほどに考え込んでいたようでした。

 顔を上げると、そこにはフクロウのクルミが立っていました。

 

「いらっしゃいませ。クルミさん。今日は切手?それともハガキ?あ、ちょうど綺麗な便せんも入荷して――」

「あぁ、今日は切手を5枚ほど頼むよ」

「切手5枚ですね。5セルクになります」

「はい、5セルクちょうど」

 

 ルカはお金を受け取りながら、ふと顔を曇らせました。

 

「それより、どうしたんだい?何か悩みごとかい?」

「実は、魔法では届けられない手紙がありまして……宛先はよく知っている方なんですよ。でも今どこにいるか分からなくて困っていたんです。ミミさん、どこへ越してしまったんだろう」

「なるほど。ミミ宛の手紙だったんだね」

「そうなんですよ。クルミさん、もしかして引っ越し先ご存じですか?」

「いや、私にも分からんな」

 

 ルカは、ガッカリしました。クルミは町で一番の物知りですから、もしかしたらと期待したのでした。

 

 クルミは、分からないと言いながらも羽で顎の下を擦りながら、なにやら考え込んでいます。

 

「引っ越し先は分からんが、あの日――夜が明ける頃だったかな、大きな荷物を持ったミミを見たんだよ」

「それ、本当ですか?」

 

 ルカは、カウンターに手をついて、少し前のめりになりました。

 

「あぁ、森の方へ向かっていったよ。こんな時間からどこに行くんだと、不思議に思ったから間違いない」

「それとな、前にミミが時計を直しに来たとき、話していたんだ。森の向こうの町には、とっても素敵な花屋があって、そこで働くのが夢だと。もしかしたら――」

「ミミさんは、森の向こうの町に引っ越した可能性が高い、ってことですね!」

 

 ルカは、目を輝かせながら、カウンターに飛び上がりそうな勢いでピョンピョンと跳ねました。

 

「あ、実はもう1つ……」

 

 ルカは少し落ち着くと、今度はクルミに手紙の差出人であろうウサギの青年と、早く届けた方が良いと感じ取ったことを話しました。

 

「ルカ、魔法から感じ取ったことは大事にした方がいい。早く届けた方が良いだろうな」

 

 クルミはまた、顎を擦りながら考え始めました。


「ルカいるかい?」

「新しい便箋があるって聞いたんだけど……」

 

 クルミの考えを待っていると、急にたくさんのお客さんが詰めかけて、郵便局はいっぱいになってしまいました。

 

「あっ、いらっしゃいませ」

「こちらになります。モミジ色やイチョウ色、ドングリ色――どれもこれからの季節にピッタリですよ」

 

 お客さんの相手をしながら、チラリとクルミを見ると、目をつぶって考え込んでいました。まるで寝ているようでした。

 

 

「ありがとうございました」

 

 何人か対応を終えたところで、クルミがルカに声をかけました。

 

「ルカ、わしはそろそろ……」

「クルミさん。ありがとうございました」

「あの手紙、昼頃までにわしのところまで届けてくれないか?」

「え?クルミさんのところへですか?」

「午後にミナのところへお茶をしに行く約束でな。相談してみようと思うんじゃ」


 ミナというのは、森の近くに住んでいるキツネです。魔法は使えませんが、風の声が聞こえる不思議な力を持っていました。

 

「何かいい方法が見つかるかもしれないってことですね。分かりました」

「それではな」

「あ、クルミさん、切手――」

 

 ルカが、カウンターに置きっぱなしの切手に気づいた時には、クルミはもう飛び立っていました。

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