銃撃戦のあのゲームの話3
『武器は?』
「M4持ってます」
『得意武器……ある?』
「得意……とかはないんですけど、狙撃系は好きですね」
『いっしょ』
「ほんとですか!」
上手い人と好きな武器が一緒なのは、なんか嬉しくなるな。
狙撃族とか言われてる人の神プレイをTikTokやYouTubeのショート動画で見るのが好きだから、それもあるのかもしれない。
ただ、エイム(銃で敵を正確に狙うこと)は苦手だけど。
ヘッドショット決める人がおかしいんだよ。
あいつら人間じゃねえ!(某アニメキャラ風)
なんて考えてると、足音や複数の銃撃音が聞こえてきた。
『物資探してて』
「了解です」
ここはLさんを信じて、俺は武器を探す。
出来れば狙撃武器が良いんだけど、包帯とかドリンクとか、スコープとか回復アイテムしか拾えない。
お、SVD。
スコープあるし、俺でも扱いやすいからこれだな。
『1人落とした』
「本当ですか!ナイスです!」
左にLさんが倒したことが分かるアナウンスがあった。
マジすげぇ。
「自分も狙撃武器ゲットしたので、参加します」
『ん』
そんなん言ってる間に、恐らく倒した相手の相方を倒していた。
化け物すぎる……。
『北のほう』
Lさんの言った通りに、逃げようとする敵が2人見えた。
「自分左行きます」
『ん』
俺は4発、Lさんはヘッドショット1発でそれぞれ倒した。
Lさんやべぇ。
銃撃音も足音も聞こえなくなったため、一息つくことが出来た。
「いやぁ、それにしても流石ですね……ほぼヘッドショット決めてません?」
『経験』
「すごいなぁ」
『何歳?』
直球すぎんか??
「えっと、俺は25です」
『そう』
……いや、俺だけかい!!
普通自分より年上とか年下とか言わないのか??
あ、女性に年齢の話はNGだ。
『敬語……いらない』
そう言ってもらえるのは有難い。
「じゃあお言葉に甘えて。Lさんはどんくらいの頻度でこのゲームしてます?」
『………仕事の息抜きで』
「めっちゃ間が空いてるっすね。仕事はどんなのしてるか聞いても?」
『配信者』
「マジすか???」
え、この人配信者なの???
めっちゃ喋らないのに???
失礼だが、配信向いてないんじゃ……。
『配信頻度……少ない』
「あ、なるほどっすね」
『……向いてないって……思った?』
「んな事ないですよ」
危ねぇ………勘が良すぎだろ。
平常心を保て……平常心を。
『今配信中』
「もっと早く言ってぇ!?!?」
『あなたの声も入ってる』
「最初に聞くよね!!!???」
『てへ』
「感情が入ってない(泣)」
『アーカイブ……消すから』
「別に声入って良いし、アーカイブとかも残してて良いよ」
『ほんと?』
「うん。俺は配信好きだからさ。俺のせいで動画が残らないとか嫌だから。配信は始まったばかり?」
『うん。1人目、声出して配信は……初めて』
「そっか!それは良かった。次からは先に聞いてからが良いかも」
『……ありがと』
ε-(´∀`;)ホッ
1人目で良かったわ。
絶対神プレイだし、初の声出しなら残さなダメだ。
「配信者って、YouTuberすか?」
『……ん』
「へぇぇ、ゲーム配信がメイン?」
『そう。頻度少なめ』
「チャンネル登録したいのでアカウント名聞いても良い?」
『黒井りさ』
「は?」
『黒井りさ』
「はあああああああああああああ!!!????」
俺が驚くのも無理はない。
そして俺はようやくこの声の主について思い出した。
黒井りさはVTuberである。
普段はイラストレーターだが、個人チャンネルでVTuberとしても活動している。
そして、宵月メイのイラストを描いた本人でもある。
ただ、
『VTuberなのに声を出さない』
という肩書きが有名で、メイちゃんが逆凸で電話した時に初めて声が聞けたのだ。
ただ2.3回やり取りして通話は切れたから、俺も思い出すのに時間がかかっていた。
嘘でしょ、メイちゃんのママじゃん……。
チャンネル登録はしてたけど、流石に配信は喋らないから全然気づかんかった。
ま、まあ嘘ってこともある……よな。
パソコンでチャンネル登録欄を見てみる。
黒井りさは……生・放・送・中!!
しかも初の声出し配信ってこともあり、視聴者は3万人を超えているし、メイちゃんのコメントも見える。
『ってことよろしく』
「まじかああああ」




