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 5.


 パーティー当日。

 私は白を基調としたドレスで、レースの端の部分だけ黒と金の刺繍をふんだんに使った、とってもお洒落かつお金がかかっているのが分かる出来映えだった。お腹の赤ちゃんのことも考えてコルセットではないけれど、腰のラインがよく見える形のデザインにして貰えてよかったわ。

 首元には光沢のある黒の宝石に、耳飾りは金と黒とシンプルな飾り付け。髪は編み込みでまとめてもらって、ダリアの生花を使った魔法の花で微かに発光して、敵意があると防護壁が展開する即席魔導具でもある。


「ああ、ナタリア。なんて美しいのだろう。妖精か、いや天使。女神にだって負けない」

「だ、旦那様だって、正装がかっこよすぎですわ。思わず惚れ直してしまいました」

「それは光栄だな」


 グレーの貴族服に身を包み、コートの襟にはダリア形をしたラペルピンを付けている。ダリアの色は琥珀色で、私の瞳の色だ。夫婦揃ってお互いに自分の髪や瞳の色を付けているのは夫婦円満の証でもある。特に亜人族にとっては心から愛していないと、身につける物にも抵抗するらしい。

 だからこそ周囲に見せつけるには、うってつけらしい。


「わあ」


 心躍るオーケストラの演奏に、煌びやかなパーティー会場。輝くシャンデリアの下で、カラフルなドレスが目に入る。社交界は久しぶりだけれど、旦那様と肩にちょこんと乗っている小鳥さんがいれば心強いわ。


 周囲の視線を受けつつ、私と旦那様はダンスホールに向かった。ダンスは得意ではないのだけれど、旦那様がリードしてくれるので、ちょっぴり緊張するがわくわくのほうが大きい。

 今のところ注目を浴びてはいるだけで、特に変わったことも無かった。私は旦那様の金色の瞳を見つめる。射貫くような鋭い眼光だけれど、怖くはない。むしろ「大丈夫か」と心配してくれる。とても優しくて、ちょっと過保護な旦那様だ。しっかりとリードしてもらい、気づけば周囲なんて気にならないほど旦那様に夢中になる。

 くるりとターンをする時だって旦那様に身を任せれば、私が完璧に踊っているように見えているだろう。旦那様はいつだって私に魔法をかけてくださるわ。


「ナタリア、綺麗だ」

「旦那様も素敵ですわ」


 小声で囁く旦那様に言い返す。少し照れて頬を赤くする旦那様が愛おしくて、ステップを踏みながら隙を見て頬にキスをする。ビックリしたのか目を丸くする旦那様も大好きだ。

 でもちょっと調子に乗ってしまったせいで、その後ダンスを続けて二曲も踊ることになるとは思わなかった。



 ***



「ふあぁ」


 旦那様が用意してくださった控え室に着くなり、間抜けな声が出てしまった。淑女としてはしたないのだけれど、今日ばかりは許してほしい。旦那様はソファに私を座らせてくださって、飲み物や軽食を取ってくると部屋を出て行ってしまった。

 か、過保護さが増したような?

 一人の体じゃないって、妊娠に気づいている? バタバタしていたのと、ちょうど主治医が留守で診てもらうタイミングがなかったのよね。


 それにしても、ダンスが終わったら人に囲まれて、ダンスよりも挨拶やダンスの申し込み、お茶会のお誘いを断るのに体力を消費したと思う。思えばお茶会を開いても少人数かつ、学院時代からの顔見知りのみだったのよね。それがいつの間にか紹介制だと思われたのか、幻の花茶会に参加したいとか……。幻の花茶会ってなにかしら?

 私はあまり人前に出ず、でも編み物や刺繍、小物のデザインは好きだから実家の商会経由で仕事を手伝ったりするのだけれど、それが巷で人気とか聞いてないわ。お父様もお母様も今度会った時に聞いておかなくては……。今日確か来ているはず。


 そう思っていた矢先、控室に国王陛下と第三王子ブルーノ王子、近衛騎士たちも押しかけるようにやって来たので、何事かと固まってしまう。


「こ、国王陛下。本日は──」

「ああ、今は時間が惜しいから、挨拶は不要だ。さて、ブルーノ」

「はい。ちちうえ」


 国王陛下は抱っこしていたブルーノ王子をそっと下ろした。まだ四歳になったばかりなのに、凜としていてきっと将来は素敵な殿方になるだろう。正装もしっかり着こなしていて、ただ気になったのは両手に抱える灰褐色の毛玉だ。なんというか王子とは不釣り合いなものに見える。


「おはつにおめにかかります。ぶるーの・おるぶらいと・えいでんです」

「ブルーノ殿下、ご挨拶いただき光栄でございます。イグナート公爵の妻、ナタリアと申します」


 挨拶もしっかりとできている王子に感動しつつ私も挨拶を返したのだが、王子はどこかそわそわしている。王子と同じくらいの目線に合わせて屈んでいるのだけれど、何か言いたいことでもあるのかしら?


「ブルーノ殿下、私に何か話したいことでも?」

「はい……ほんじつは、ふじんに、かれをみてほしくて……」


 そう言って両手を私に差し出した。そこには毛玉ではなく震えてうずくまる小さな雀がいた。ボロボロでとても弱っている。私の肩に居る小鳥は何も反応しないので悪いものではないだろう。


 そっと羽根を撫でると、今まで震えていた灰褐色の雀がビクリと大きく動いた。顔をあげて眼光の鋭い瞳が私を射貫く。それは金色の瞳で見たことがある。


「イグナート旦那様?」

「──っ、ちゅんんん!」

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