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23.出会い編16

 結果から言おう。

 イグナート様の解毒は、私が色々頑張ってなんとかなった。うん、本当に色々頑張ったと思う。


 あのとんでもなくマズイ薬を飲んで、イグナート様の解毒のため、ひよこの姿のまま念じたり、踊ったり、呪文を唱えたり、勢いで色々したので結局それが効いたのか分からないまま、イグナート様の解毒は終わっていたとか。

 端から見たら「ピィピィ!!」と言っているだけだし……。絵面はきっとカオスだったわね。きっと笑ってはいけない空気なのに、笑いがこみ上げてくる的な。


 それにしても、と思う。こう魔法的な治療だから個人的には、もっとこうキラキラ、ぱぁああーって演出を期待していたのに。黒紫色の毒も必死に踊ったり、舞っていたので、気づいたら消えていたし……。

 色々あったけれどイグナート様が無事ならオールオッケー。問題なし。そう思うことにした。私の姿も一晩起きたら元に戻っていたし。そう元の姿に戻ったことは喜ばしい。


 ただ今もイグナート様はまだ眠ったままで、私は姿こそ戻ったけれど、言葉が「ピィ」のまま。できることは増えたけれど、これまた解毒の時に無茶をしたらしくて、言葉が戻るのに暫くかかるらしい。


「ピ(イグナート様)」


 瞼を閉じたままのイグナート様は、ちょっと幼い。早く目を覚まして、金色の瞳に映りたい。また抱きしめてほしいし、傍に居てほしい。


「んんっ」

「ピ!(イグナート様!)」

「……ナタリア?」

「ピ! ピピィピ(イグナート様よかったぁああ、目が覚めたんですねぇ)」

「ああ……」


 少し掠れた声にドキリとする。寝起きのイグナート様は気怠そうだけれど、顔色も良い。すぐさま目を覚ましたと屋敷の人に伝えようと、部屋を出ようとした。

 瞬間、イグナート様の後ろから抱きつかれ、そのままベッドの中に。


「ぴいいい!??(イグナート様!??)」

「ナタリア……無事だな」

「ピピ……ピィ(イグナート様……無事ですよ)」

「ナタリア」


 私抱きしめるイグナート様の声があまりにもか細く聞こえたので、「声が『ピ』しか言えないので、無事とは言い難いです」とスパッと言い返すことができなかった。

 いやこの人なら「かわいい」とかで済ませそうな気がする。


(……でもイグナート様が無事で本当の良かった)


 そう気を抜いた途端、イグナート様の温もりに気づけば爆睡してしまった。

 目が覚めたら、イグナート様がすごく嬉しそうに羽根を広げて私を閉じ込めていた。ちょっと恥ずかしい反面、本気で監禁とかしないよね? と少しだけ不安になったのだった。




 ***




「毒は抜けてきていますが、しばらくは安静にしてください。それとツガイ療法についてですが──」

「ピ?(ツガイ療法なにそれ?)」


 コテン、と小首を傾げて見た。喋っても「ピ」としかならないので、できるだけジェスチャーで伝わるようにしている。


「ナタリアが可愛い」

(イグナート様、ちょと黙っていてほしい)

「ゴホン。……ツガイ療法とは、完治するまではできる限り傍にいること、スキンシップをなるべく多く取ることで、自然治癒力が増幅して早期回復を促します」

「ピピ?(それは医師としての見解ですよね?? イグナート様から圧力をかけてとかじゃ?)」

「そんな訳ないだろう。確かにナタリアが常に傍にいてほしいと思っているが、切望しているが!」

(切望していたのですね……)

「今回ばかりは医師の言う通り、体内の毒素は薄れたが免疫力が低いままだ」

「そうです! こう言う時にツガイが傍にいることでツガイを守るという本能が強まり、免疫力や耐性を向上させるのです!!」


 力説すればするほど怪しく思うのは、なんだろう。


「──ので、ナタリアからたくさん触れて、抱きしめることや、キスもほしい」


 超笑顔で言い切るので、余計に胡散臭い。そして羽をばざばさ揺れすぎです。どれだけスキンシップしたいのですか。


(でもイグナート様は私を助けるために、頑張ってくださったのだから私もそれに応えよう)


 恥ずかしいけれど、婚約者だし緊急事態でもあるので、覚悟を決める。


「ピピピ!(イグナート様が回復すためにも、ハグとキスをしますね!)」

「ああ。献身的なナタリアも可愛い」


 早速、頬と唇に軽く触れる程度のキスをする。やっぱりちょっと恥ずかしい。でもイグナート様の瞳がキラキラ輝いているのを見ると、嬉しくなる。

 羽根もバサバサと動いて本当に分かりやすい。


 そんなこんなで、またまたイグナート様のお屋敷で、一緒に過ごすことが決定。期末テスト期間中はなんとか受けることだけは、許可してもらえたけど少し心配だ。本当に受けられるよね??



***



「今回は特別な事情があるということで、講師二名と保険医、婚約者の副団長の立会の元、試験を開始します」


 杞憂でした!

 保健室でイグナート様に注視されつつ、私は個人テストを受ける。

 これは私が「ピ」しか話せないので、イグナート様が付き添うことになったからと、ツガイ療法の一環で傍を離れると、体調を崩すという診断書があったからだ。


 不正などのこと考えて講師が二人付くのはありがたい。イグナート様の婚約者という特権を利用する形になってしまったが、それでも全力でテストに臨める場所を用意してくれた。

 それが本当に嬉しくて、俄然やる気が出る。こうして無事に、期末テストを乗り越えられた。リリアナ様との勝負もあるのだ。負けるわけにはいかない。


 イグナート様は「ナタリアが可愛い」を終始呟いていたらしいが、私の耳には全く聴こえていなかった。気にしたら負け、集中を切らしたらダメだと自分に言い聞かせる。


「ピーーーーーーーー!!(終わったーーーーー!!)」


 テストが終わった後、講師の方々に「そういえばカフェテリアで季節限定スイーツフェアがあるので、婚約者と一緒に行って見てはどうだ?」と勧められた。

 婚約者との時間を大事にするのも大事だぞ、とアドバイスを貰ったので、早速試してみようと思いつつ、一緒に馬車へと向かう。


(馬車に乗り前に御者の人に行き先を言えばいいのかな。ああ、でもその前にイグナート様に寄り道許可を──)

「ナタリア」

「ピ?」


 イグナート様は、どこか難しい顔をしている。瞳は焦燥、不安という感じで大きく揺らいでいた。


「ピ?(イグナート様?)」

「……ナタリアは、先ほどの講師と親しいようだが……もしかして」

「ピピイ(いえ、全く違いますよ)」

楽しんでいただけたのなら幸いです。

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