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18.出会い編11


 即答するも、イグナート様はぎゅうぎゅうに抱きしめたままだ。顔を見たくて動こうとするものの、がっちり抑え込まれていて動けない。

 声、震えていたわ。それにすごく怖がっている。どうして?


「イグナート様、顔を見てお話がしたいです」

「……っ」

「……イグナート様が大好きで、キスをたくさんしたいので、顔を見せて、仮面をとってもいいですか?」


 このワードはイグナート様に心を動かしたらしく、抱きしめていた腕の力が緩やかになった。仮面をしてみるイグナート様は、なんというか、雄々しくてかっこいいわ。ああ、でも金属の瞳が揺らいで、不安いっぱいなのが伝わってくる。


「ナタリア……」


 そっと仮面を外して、素顔のイグナート様を見つめる。見つめ合うと少しだけ安心したようで、目を細めた。

 なにがそんなに怖いのですか?

 色んなものをたくさん持っている貴方様は、とても偉くて、強いのに、もじもじしつつ「キスは?」と目で訴えるイグナート様が、私にはやっぱり可愛く見ええてしまう。


 目元に一つ、頬に一つ。唇にも一つキスをする。イグナート様は面白いくらい固まっていたので、ちょん、とまた唇に触れる。


「私の婚約者はイグナート様ですよ」

「ああ」

「私は人族です」

「うん」

「だから亜人族の方々の習慣や【運命のツガイ】のことなど、まだよく分かってません。今勉強中です。……でも、こんなにイグナート様が怖がっているのは、私が何かヘマをしてしまったのですか? それとも婚約だけではなくて、番紋がないと不安ですか?」


 私の言葉にイグナート様はあるワードを聞いて、目を大きくして反応を見せてた。それでなんとなく当たりを付ける。

 やっぱりガルシア様の言ったように番紋がないと、亜人族の人たちは不安になるってことよね? いずれ結婚して番紋を施すのなら、今でも後でもそこは私的にはこだわりはないけれど、一番の問題は期末テストに響く可能性があるかどうか。

 儀式やら儀礼って、時間が掛かるって聞くもの。さすがに何日も拘束されるのとか、時間を取られて勉強ができないのはすごく困るわ。

 番紋について、もっと早い段階で調べておけばよかった……。私の馬鹿。


「ナタリアは今日、誰かと会っていたのかい?」

「へ? いえ。誰かと会う約束はしてません」

「そうか」


 会う約束はしていないが、出会ったあるいは鉢合わせした人物入る。


「でも、廊下でリリアナ様に会いましたわ。それと図書室でガルシア王太子殿下に助けてもらったのです」

「……王太子」


 いつになく低い声。これはガルシア様とお会いしたときに、私が何かやらかした感じ?

 そんな不敬なことは──。


『うん。怖いことを言ってごめんね。少しでもこの情報が役に立ったのなら、僕と友人に』

『それは謹んで辞退します』


 うん、言ったわ。


「ナタリアは王太子が気にいったのかい?」

「いえ、まったく。友人になりたいというので、辞退しましたわ」

「え?」

「親切に私には隙があるから気をつけるようにと、助言はいただきましたけど?」


 イグナート様は眉間にしわを寄せて、何やら思い悩んでいる様子。


「……王太子と接触は? ……その抱きしめられた……なんてことは? 君はそれを受け」

「あ! 私が梯子を登っていた時に、踏み台が折れまして落下したのをガルシア様が抱き留めていただいて、そこから話す流れになったのです」

「え? は?」

「踏み台は切り込みがあったので、おそらく誰かが小細工をしたのかと。私か王太子殿下を狙ったのかは不明らしいですが」

「ナタリア、怪我は!?」


 バッと私から離れて、イグナート様は私に怪我ないか爪先から頭のてっぺんまで睨み、痛みを隠していないか体に触れる。

 急に騎士様モードになって確認するので、キビキビした感じも素敵だわ。私が無傷だと確認が済んだのか、ヘナヘナと抱き寄せた。

 翼も私を包み隠すようにしてくる。


「……怪我はなかったけれど、ではその時に仮番紋を施されたのか」

「カリツガイモン……え? なんでしょうそれ?」

「好いている相手にマーキングする印のことだ。他の雄への牽制にもなる」

「そうなのですね。……ん?」


 呑気に「仮番紋」について聞いていたが、「施されたのか」という言葉がを思い出す。これをイグナート様が言うということは、ご自身では施したという意味ではなく?


「ええっとイグナート様は私に仮番紋を施して」

「ない」

「!?」

「……友人から、なのだろう。であれば、仮番紋を施すのは、反則だ」


 ひゅっ、と変な声が出た。いやなんといい紳士ぶりなのだろう。真面目。そんなところもいい。でも今回は、私の知識不足の失態だわ。

 というか話の流れからいって、ガルシア様が仮番紋付けたってことよね!? 何してくれているの、あの人!

 やっぱり友人にならなくて良かったわ。もしかして友人になるのを断られた嫌がらせ?


「イグナート様。大鷲族だけではなく、番紋がないと、亜人族的にはツガイ認定されないのですか?」

「そう考える者もいるかも知れない」

「じゃあ、イグナート様に仮番紋を施してもらったら、この状況は変わりますか?」


 相殺的な意味で提案してみたのだけれど、イグナート様の表情は険しい。


「残念だが王族の仮番紋は特殊で、他の仮番紋では負けてしまう」

「な」


 なああああああああ!!

 あの王太子殿下、何してくれたの!?

 頭を抱える私にイグナート様は、何か言い淀んでいたが、意を決して口を開いた。


「他の仮番紋を消すには、番紋を施すしかない」

「なるほど」


 まあそう都合よくいかないだろうとは思っていたけれど、本当にあの王太子殿下は!


「私は……王太子に、君を取られたくない」

「そもそも王太子殿下を選びませんよ」


 正直に答えたけれど、今のイグナート様を納得させるには足りないらしい。

 私を見つめる目は、獲物を狙う猛禽類のそれだ。熱を孕んだ眼差しにドギマギしてしまう。

 でも待ってほしい。番紋を施すってどうするのかとか知らないのだけれど!

 でも今目を逸らしたら、イグナート様はたぶん、絶対、100パーセントの確率で傷つくわ。

 こうなったら覚悟を決めるしかない。


「イグナート様、番紋を結びましょう」

「……!」

「でも施すにあたっての事前説明と、方法なども説明を──っ、んん」


 イグナート様の唐突なキスに、言葉を遮られてしまう。もしかしなくとも、ここで番紋を施している感じ!?

 せめて説明を求めようとしたが、キスの雨は止まず、いつも以上に熱烈的すぎる。


「万象の森。流転の星々……」


 詩のような詠唱が始まった!?

 待って待って待って! あ、でもこの雰囲気、これもう中断できない──感じっぽい。それぐらい猶予がないってこと!?


「あまねく星々の導きに従い縁を結び、紡ぐ番らに白銀の太陽、漆黒の月、万華鏡の星々に証を求める()に加護と祝福を──」


 鐘の音が頭の中で、ぐわんぐわんする!?

 視界も馬車の天井が見えて、ボフンという爆発音と共に意識が遠のいた。


「ナタリア!? ああ、ふわふわで、なんて愛くるしい姿に!」


 ふわふわ?

 意識が遠のく中、イグナート様の焦った声だけが耳に残った。

 

楽しんでいただけたのなら幸いです。

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