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ベフォレガイン  作者: ユービィ
サーガラド王国編 1章 マルクール村襲撃事件
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メモリー5 ステーキと名乗れる許容範囲

冒険者試験の手続きが終わるまで暇を潰すためにリゲロン、スミトはアイテムショップに来ていた。武器を探していた二人のもとに謎の中年男性が近寄る。どうやら武器に詳しいらしく二人は武器を教わることに。しかし思わないところでハプニングが起こった。スミトが剣の鞘を抜いた時、悲鳴が聞こえる。

鞘を抜き始めたと思った瞬間、スミトの悲鳴と刃が剥き出しになった剣が落下した。これには武器を観察していたおじさんも驚いた顔をして振り返っている。


「眼鏡の兄ちゃん大丈夫か!?」


おじさんがスミトの近くに駆け寄る。スミトは何を見たのか、何を感じたのか、何を思い出したのか……僕もスミトの過去に何があったのかは知らない。ただ、こんなに震えているスミトを僕は初めて見た。


「……す、すみません、急に叫んじゃって……俺、気分が優れないので少し休んできます……」


その声は今にも消えそうな弱った声だった。スミトは元いたテーブルの方へ戻っていく。よろよろと今にも倒れそうな歩き方をして。


「す、すまん。武器の質を観察してたばかりに……」


おじさんは頭を下げてくれた。でもこれはおじさんのせいなんかじゃない。


「大丈夫、多分僕がまた変なことをしただけだと思うよ」


スミトを怒らせるのはいつも僕だ、今回もきっとそう。だからおじさんが気負うことじゃない。


「でもあの叫び声は本物だったろ?」


明らかに芝居だとかふざけてだとかそういうものじゃない、スミトは苦しそうな顔をしてた。


「とりあえずこれもってあの兄ちゃんのところに行ってやってくれ」


僕に渡されたのは先程の剣と盾、それと薄っすらと光る宝石が埋め込まれた杖。


「魔力量も性格的も眼鏡の兄ちゃんは魔術師が向いている、だからこれを渡してやってくれ。使い方は……まぁ杖を持って攻撃魔術を撃つって念じれば多分できるようになる」

「多分って……」

「この杖は元々水属性の魔術式が組み込まれている、値段は中々だが魔術式を脳内構築できない奴でも魔力を込めるだけで水魔術がバンバン撃てる優れものだから安心しろ!」


何か難しい単語だらけでよくわからなかったけど、安心しろという言葉を今は信じるしかない。とりあえず購入しよう。



「2銀貨と6銀貨のお返しでーす」

「んー」

「兄ちゃんお会計も初めてかい?」


支払いというものは中々に難しい、何で金貨1枚で銀貨10枚になるの?金貨にお金を増やす力があるってこと?いや金貨1枚と銀貨10枚は同じ価値になる?うーん、こういう時スミトがいたらなぁ。



「ありがとうおじさーん」

「おう!兄ちゃんらの無事を祈ってるぜぇー!」


おじさんに感謝を伝えて僕は元のテーブルに戻ることにした。もうパティモースさんは頼めたかな、スミトは……機嫌を取り戻したかな。




さっきはあの二人に酷いことをしてしまったな、結局あの男の人の名前を教えてもらってないし、俺の武器がどうなったかもわからない。


「あ、スミト!」

「リゲロン……」


リゲロンが手を振ってこっちに走ってきている。ただあんなことをしたあとだ、気まずいな。


「はいスミトの杖だよ、水が撃てるようになるっておじさんが言ってたよ」


それは先程の失態への追及ではなくただの伝言だった。リゲロンは気にしてない?いや謝らなければ俺の気が済まない。


「さっきは悪かった、急に叫んだりして」

「いいよ全然、ほら杖をゲットしたんだよ?なら喜ばなきゃ。それにしてもいいなぁ魔術が使えるようになるなんて……かっこいいなぁ」


気遣ってくれているのか……俺の元気を取り戻そうとポジティブな言葉をリゲロンは掛けてくれる。いつも変なことをする奴だけど、根っ子は超の付く善人なんだこいつは。


「……ありがとう」


リゲロンの優しさは俺の心を安定させてくれた。


「おーい二人共!」


パティモースさんが両手に皿を持ってこっちに歩いてくる。


「あぁご飯だぁ!」


リゲロンも飯が来たことではしゃぎまくっている。


「いやぁ俺のオススメを食べてもらいたくてな〜このメニューは俺の大好物なんだよ」


パティモースさんがテーブルにメニューを乗せた。


「あぁ待ち切れな………………いよー……」


俺は我が目を疑った、そのメニューとは分厚いサイコロステーキだった……青色のな。流石のリゲロンも想像してたものと違ったのか言葉にデクレシェンドが掛かっている。青色のステーキなんて聞いたことがない、というか本当にステーキなのかも怪しい。ステーキって名乗れる許容範囲はとうに超えているだろ。もしかしてこの世界じゃ普通なのか?


「パティモースさん……これは何ですか?」


一応だ、一応聞いてみる。


「ん?サイコロステーキだよ」


そこは否定してほしかったよ。青色……あ、多分ブルーベリーとかそういう青い食材を塗りたくってるんだ、そうに違いないそれ以外は絶対に信じない。


「このサイコロステーキ何で青いの?」


ナイス質問だリゲロン!


「元の肉が青色だからだよ」

「な、なるほどね〜」


おい引き下がるな!もっと質問してくれよ。あー青い肉ってなんだよ、その肉腐ってんだろ。


「二人共食べないのか?まぁ確かに分厚いからどうやって食べたら正解なのか分かんなくなるよね」


分厚いだけで俺たちのフォークが止まっているとパティモースさんは思ってるのか?というか何でこの人こんなニコニコなんだよ、狂気すら感じるわ。


「何事もまずは行動……いただきます」


おいもう覚悟を決めたのかリゲロン!?流石に早すぎるだろ、これじゃ俺もいただきますを言う流れになっちまったじゃねぇかよ!…………しょうがない、腹をくくるか。


「……………いただきます」


もしかしたら本当は美味しいのかもしれない、だってパティモースさんがオススメしてくるようなものだろ?なら美味しいに決まってる……はずだよな。青は食欲が失せるとか言うけど、この状況ほどそれの実例に相応しい実例はないだろと確信できる。とりあえず匂いでも嗅ぐか。


「酸っぱい……?」


なになに酸っぱい臭いのステーキって、やっぱり腐りかけなのか!?もういいこれ以上食レポしてたら恐怖が増すだけだ、スミト……お前も男なら食べろ!


「うぉぉぉぉ!」

「なんで雄叫び?」


いただきます!!俺はサイコロステーキを一切れ口に放り込んだ。その刹那、俺は食べたことを後悔する。このサイコロステーキの味を言葉で表すとしたら……溢れるくらいの生ゴミがたっぷり入った三角コーナーを1年間放置して圧縮したかと思うぐらい不味い。まず何で冷たいんだよ、ステーキは普通出来立てなら熱いだろ。それに臭いもおかしい、腐卵臭に獣臭って鼻まで殺す気満々かよ、酸っぱい臭いだけで許してくれ。あとタイヤみたいに噛み切れないのに、噛めば噛むほどエグみが口内に広がる。もうダメだ俺の体がこいつの存在を拒絶している。これ以上は不味い、俺はトイレに駆け込んだ。

スミトの過去は後ほど、それより今回の話はサイコロステーキでしたね。何故パティモースがこんなステーキを食わせたか……疑問ですよね。しかし特別な理由はありません、ただパティモースがバカ舌なだけです。本当に美味しいと思ったので勧めたらしいです。最初はステーキでしたがスミトは刃物がトラウマでカットできないのでサイコロステーキにしました。細かい描写って考えるの楽しいですね〜。次回こそはCランク冒険者出しますごめんなさい。

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