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ベフォレガイン  作者: ユービィ
サーガラド王国編 1章 マルクール村襲撃事件
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メモリー3 成長期のせい

無事パティモースと合流したリゲロンとスミト。パティモースは約束通り仕事を案内するべく、冒険者の根城ヘッドパレスの前に来ていた。リゲロンとスミトは冒険者を目指すのだった!

《スミト視点》


「まぁ中に入れば冒険者の登録方法も教えてくれると思うから、とりあえず行こう」


ヘッドパレスの入り口へ俺達は歩いていく。そしてヘッドパレスの立派な扉の前まで来た。


(緊張するな……)


冒険者。この名前を聞いてから俺の心はずっと昂っていた。こういうのは本の中だけのものだと思っていった。だがそんなファンタジーの世界に今、俺はいる。この扉の向こうにはきっと化け物みたいな連中がいるんだろうな。そう思うと扉を開けるのに躊躇してしまう。こんな瞬間も大事な思い出だよな。


(あー手が震えるっ)


そんな感じで大事な瞬間を味わってた時だった。


「スミト?何してるの?扉開けてよ」


無情なリゲロンの横槍が刺さる。


「お前はほんと空気読めないな!」


これ以上何か言われるのも嫌なので俺は両手で勢いよく扉を開けた。


パタアア


ギロッ!


(え、怖っ!)


扉を開けた俺達に大量の視線が集まる。正直こんな人の数がいるとは思わなかったので、萎縮してしまった。よくこういうところに新人が入ると、先輩冒険者が「何だ新人か?」みたいな感じで睨んだりするけど……こんなにジロジロ見られることあるのか?


「パティモースさんじゃん!めっずらしいー」


「遠征から帰ったのに休憩もないのね、騎士さんって大変」


「あむあむ、お肉美味しいー」


よく聞けばパティモースさんを見てるだけか。俺の勘違いだったようだ。でもこういう勘違いって恥ずかしいよな……。


「パティモースさん、ここ広いねー!」


「それほど大きい組織ってことだよ、まぁ騎士団も負けず劣らずの組織力……」


パティモースさんの説明をリゲロンが断絶してこういった。


「スミトー?何緊張してるの?」


(う、緊張してるのバレた)


考え無しで行動するリゲロンだが、察しや勘は鋭い。


「緊張何かしてない、こういうとこは慣れてるし」


緊張してるのを否定したく強がってしまった。俺達がそんなやり取りをしてると、パティモースさんが悲しそうな声でこういった。


「俺の話なんてどうでもいいよね……ははっ」


リゲロンに話を切られたのが悲しかったみたいだ。というかメンタル弱いなこの人。


「謝れよリゲロン」


リゲロンに謝罪を催促した。


「え?でもスミトが……」


「…………」


俺は表情を殺して無言の圧を掛けた。


「う、うん。パティモースさんごめんなさい……」


「ははっ……」


話は戻すが、ヘッドパレスの内部はとてもしっかりしていた。清掃も行き届いているし、テンプレでよくある乱暴そうな輩もいないし、The冒険者ギルドみたいな依頼掲示板もあるし、飲食店や道具の売店もある。たくさんテーブルもあるから休憩もできるし、本当に何でもある。流石冒険者のための設備だ。


「あー、ほらあそこの受付に行けば冒険者登録できるよ」


「よし!これで僕も冒険者だ!」


ということで俺達は受付に来た。


「あぁー!お客様少しお時間を!」


受付の人は大量の何かの書類に追われているようで忙しそうだ。


「ちょっと書類を片付けています!」


そう言って受付の奥に消えてしまった。少し経つとまた帰ってきた。


「おまたせしましたー、こんにちは!こちらはヘッドパレスの受付でございます!本日はどのようなご予定で……ってパティモースさん!?パティモースさんじゃないですか!」


「気付くの遅いなー、久しぶりだねトルサちゃん。せっかくだから少しお話したいところだけど、生憎時間が押しててね」


そう言ってパティモースさんは俺とリゲロンの肩にポンと手を置いた。


「今日はこの二人に冒険者になってもらいたいんだ」


だがトルサは首を傾げる。


「二人?もう一人の方はどちらに……」


「え、ほらここにいるよ」


だがトルサはまだ不思議そうな顔をしたままだ。視線的に俺は確認できていると思うが、リゲロンが見えていない?


(あ……)


俺は衝撃的な事に気付いてしまった。おそらく指摘したらリゲロンは怒るだろう。でも指摘しなくてはトルサに気付いてもらえない。


「リゲロン、ジャンプしてみろ」


「え、何で?」


「いいから」


ぴょんっ


リゲロンは指示通り飛び跳ねた。するとトルサの反応が変わる。


「あー!そんなところにおられたのですね!」


トルサはリゲロンを発見できたようだ。


「ねぇ、何でジャンプしたら気付けてもらえたの?」


リゲロンはどストレートに俺へ質問をしてきた。あまり答えたくはないが、隠すのも面倒だ。


「お前の背が低くて受付の人から見えてなかったんだよ」


受付の設計的にトルサからリゲロンが見えなかったのだ。俺の回答によってリゲロンがムスッとした。


「あー!また低いって言った!僕は低いわけじゃない、成長期が僕を忘れてるだけなんだよ!」


「あー、はいはい」


こうなる未来は見えていた。俺は適当に返事をする。


「えーと、今から冒険者登録について話させてもらってもよろしいですか?」


俺とリゲロンが口を揃えてこう返事した。


「「お願い!(します)」」


そこから冒険者登録についての説明が始まった。


「冒険者になるためには冒険者試験を受けていただく必要があります」


「冒険者試験?それって筆記か何かですか?」


試験からテストを連想させてしまった俺は思わず聞き返してしまった。


「あ、いえ試験自体は非常に簡単ですよ。13歳の子供でもできるような難易度の討伐と採取ですから」


(13歳でもできるのか)


思わず俺は驚いてしまった。トルサは絵の描かれた二枚の紙を俺達に見せた。一枚は紫色の綺麗な花で、もう一枚は豚に似た生物のものだった。


「こちらの植物を採取するのと、この魔物を討伐する……それだけで冒険者になれます」


(思ったよりあっさりしてるな……)


どんな試練でもどんとこいと意気込んでいたのに、少し損をした気分だ。


「それとC級冒険者を同行させますので、緊急事態でも安全です」


この試験を作った人は素晴らしい。なんて手厚い歓迎なのだろうか。でもC級冒険者とはどのぐらいに位置する冒険者なのか、気になる俺は質問することにした。


「冒険者のランク?って何段階あるんですか?」


「A,B、C、D、Eの5段階で分かれています。冒険者試験に合格したら皆さんはEからのスタートとなります。今回同行していただくC級冒険者の方もお強いので安心してくださいね」


なるほど、大体理解出来た。そんなふうに説明を聞いていた時だった。


プシュ〜。


熱々に熱したやかんのような音が横から聞こえてきた。横に目をやるとリゲロンが頭から煙を出していた。


(頭から煙って本当に出るんだな)


「あぁもしかして理解できませんでしたか?ならもう一度説明を……」


「あ、いえ俺が説明しておきます」


何故この馬鹿はあんな簡単な説明もわからないのだろうか、甚だ疑問である。


「トルサちゃん、今回この子達に同行する冒険者は誰なんだい?」


パティモースさんがそう聞いた。


「そうですねー、試験場所のラカの森方向の依頼を受注している方がいたと思うので、その方にお願いしてみます。私は手続きをして来ますので、1時間程お待ちしていただいてもよろしいですかね?」


それを聞いたパティモースさんの顔が曇る。


「中々時間かかるね……1時を超えないと良いな……」


パティモースさんがボソッとした独り言が聞こえた。


「ではまた後ほどいらしてください」


トルサがまた受付の奥へ消えた。


「まぁ、1時間ここで立ってるのも何だしとりあえず空いてるテーブルにでも座ろうか」


「お腹空いた!パティモースさん何か買ってほしいな」


「お前はさっき食べたばっかだろ……」


「あんだけじゃ僕のお腹は膨らまないね!」


「わかった、買ってあげるよ」


パティモースさんに案内されるまま、俺達はテーブルに座った。

2024年12/26に話を改造しました。

長文を回避するため、会話形式で冒険者試験の説明をさせましたが、少しわかりにくくなってしまったかもしれません。あとより日常っぽくリゲロンとスミトの喧嘩パートも飾り付けしました。でも会話ばかりで地の文が少し疎かになった気がきます。

次はメモリー4を改造しますが、それより先に2章の新しいエピソードを投稿する予定です。良かったらそちらもお願いしますね〜。

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