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【新連載】エトゥールの魔導師 閑話集〜大災厄の後始末〜  作者: 阿樹弥生
報告書1 閑話:正しい猫の飼い方
9/16

正しい猫の飼い方⑨

お待たせしました。本日分の更新になります。

お楽しみください。


現在、更新時間は迷走中です。

面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 それはミオラスにとって忘れることができない友であるウールヴェの声だった。


「トゥーラ……?」


 ミオラスは恐る恐る名前を呼んだ。


――うん 僕だよ

 

 大災厄の日に悲しい別れをした白い狼のウールヴェが小さくなってそこにいた。


 小さい。狼の子供の姿だ。

 まるで生まれて1ヶ月程度しかないような大きさだった。

 ミオラスは指摘された自分のミスに泣き笑いをした。


「そうよね……犬と間違えちゃダメなのよね……」


 ウールヴェはなぜか犬扱いされることを嫌う。とても大事なことだ。


――うん、そこ大事 犬じゃない


「これは……子供の狼の姿ね?」


――うん、子供からやり直しているの


 やり直している――なにか、気になるフレーズだったが、それより重要なことがある。ミオラスはアードゥルを求めて振り返ったが、意外なことに彼は微笑みを浮かべていた。


「……あ、アードゥル様……この子はその……」

「知っている。馬鹿息子(カイル)のウールヴェだ」

「アードゥル様……あの……お願いしたいことが……」

「そのウールヴェは抱きしめていいぞ。なんだったら、愛でてもいい。好きなだけ甘やかすがいい」


 見守っていたアードゥルがあっさりと望みの許可をだして、ミオラスの方が拍子抜(ひょうしぬ)けをした。


「よろしいのですか?その……間違いなく愛でてしまいます」

「別にそれの中身はロニオスではない」


 要点はそこなのだろうか?

 ミオラスは許可と禁止の基準がわからず混乱した。


「でも……でも……他の方である時もあるのでは?」

「まあ、その可能性があるのは、この馬鹿くらいだが」


 親指でエトゥールの妹姫の伴侶である青年を指さし、再び「馬鹿」扱いすることに、内心ミオラスは冷や汗をかいた。


「中身がこの馬鹿の時に、ミオラスがこのウールヴェを胸に抱きしめたら、こいつにとって別の意味での大災厄だろうな。それはそれで面白い」

「ちょっと、なんてことを言うの?!」


 カイルの方が、アードゥルの言葉になぜか激しく動揺している。

 いつの間にか、ファーレンシアがカイルの隣にたっており、アードゥルの言葉に対して、口に手をあて上品に笑った。


「まあ、面白い。その時は、やっぱりカイル様は胸の大きな女性が好きだった、と侍女ともども私が判断するだけですわ」


 姫の目は笑ってなかった。

 姫の反応にカイルの方は、凍り付いたかのように蒼白になっている。


「…………確かに大災厄以上の大災厄だな」


 茶髪の男が、謎の言葉をつぶやいた。


 ミオラスには、一連の会話の真の意味がわからなかったが、仔狼姿のウールヴェを見つめ、もう一度アードゥルに確認した。


「本当によろしいのですか?」

「抱きしめたいのだろう?お前がずっと待っていたウールヴェだ」


 許可がでても、ミオラスはおそるおそる子狼の頭に触れることから始めた。

 あの時のように消えてしまうのではないだろうか。


「もう……消えない?」


――消えないよ


「……本当に?」


――うん、()()()()()()()会いにいけなかったんだ。カイルは人がいるところには、行けないし、歌姫がアードゥルと来るのをずっと待っていたの


「ミオラス様達の話が一段落するまで、と引き止めておくのが大変でした。今日は朝から、はしゃぎっぱなしでしたのよ」


 ファーレンシアが証言した。

 それを肯定するかのように、仔狼の尻尾は喜びで大回転している。

 

トゥーラも再会を喜んでいる――ミオラスはほっとしたように思いっきり子狼を胸に抱きしめて、その存在を実感した。

 友の帰還は、ミオラスの心を満たした。


「……お帰りなさい……お帰りなさい」


――ただいま





 歌姫とウールヴェの再会は、順調になされたが、もう一匹とカイル・リードの交流は、はるかに脱線し難航していた。


『世界の番人に同調した点は、理解した。相手の同意があれば、可能と仮定しよう。だが、()に干渉したのはどういうことだ?』

「まさか、世界をこのまま放置するつもりだったの?まあ、そんな気がしたからアードゥルに探してもらったんだけどさ。貴方が酒を堪能(たんのう)し満足する頃には、10年ぐらい経過しているような光景が浮かんだからね」

『いや、そのことではない』

「時間って、過去から現在の直線で、不可逆性(ふかぎゃくせい)のものだと思ってる?」


 カイルが言った。

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