表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新連載】エトゥールの魔導師 閑話集〜大災厄の後始末〜  作者: 阿樹弥生
報告書1 閑話:正しい猫の飼い方
4/16

正しい猫の飼い方④

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。


現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 アードゥル達は、滞在先の東国(イストレ)からエトゥールに移動しようとして、すぐに問題に気づいた。


 500年前に衛星軌道上の観測ステーションから地上探索のために設けられた研究施設は、『拠点』と呼ばれ、大陸各地に地下に密やかに設置されていた。

 ウールヴェと呼ばれる精霊獣は、なぜかこの科学地下施設に入ることが出来なかったのだ。


 アードゥル達の所持している娼館の移動装置(ポータル)は、大陸の片隅にある隠れ里ともいえる場所にあるアードゥル達の屋敷の花園に(つな)げてあった。そのあとは、その屋敷の地下『拠点』に設置された移動装置(ポータル)で繋がっている各地の座標に向かって自由自在に飛べたが、今回その移動手段が使えないことになる。



 今回は問題のウールヴェ(ロニオス)をエトゥールに送り届けることが目的なのだから、ウールヴェを置いていくことは論外だった。



 だが、大災厄によって、東国(イストレ)からエトゥールへの地上人が使う一般的な道は、巨大な衝突痕(クレーター)で断絶されていた。


東国(イストレ)にあるリル様の移動装置(ポータル)を使いますか?元はクトリ様のものだったとか、なんとか」

「ああ、物資運搬を目的とした商売用の移動装置(ポータル)があったな」


 賢者(メレ・アイフェス)の養い子で商人である少女リルが管理して使用している移動装置(ポータル)は、確かにエトゥール城の旧離宮に直接つながっていた。


「起動していればいいが……」

「私、『きどう』する権限とやらをもらっております。もちろんアードゥル様もです」

「は?」


 意外な告白にアードゥルはミオラスをまじまじと見つめた。


「いったい誰が私達にそんな権限を付与したのだ?」

「シルビア様です。私達が東国(イストレ)に滞在している場合の、お茶会のための移動手段が必要だから、と」


 大災厄後の混乱の中でも、お茶菓子付きのお茶会だけは忘れない――シルビア・ラリムの甘味に対する執着は、カイルから警告を受けたことはあったが、それは冗談ではなかったらしい。

 甘味好きのまじめそうな銀髪の医療担当者は、エトゥール王であるセオディア・メレ・エトゥールの伴侶におさまっている。


 しかし彼女と友情を築き上げているミオラスはともかく、過去に敵対していたアードゥルにまで権限を与えるとは不用心にもほどがある、とアードゥルは思った。


「お人好しにも、ほどがある。私がエトゥールを破壊するとは思わないのか。全くあの甘ちゃん共め……」


 ミオラスは、アードゥルの言葉に、なぜかぷっと笑いを吹き出した。 


「ミオラス?」

「アードゥル様、今更ですわよ。エトゥールのあれだけ広い『地下拠点』に自由に出入りが可能なアードゥル様の移動をなぜ、警戒する必要があるというのです?復活したあの拠点から、それこそいくらでも侵入が可能ではありませんか。とっくの昔に、彼等はアードゥル様を信頼しているのです」

「――」


 伴侶の方が、賢明な知恵者(メレ・アイフェス)だった。





馬鹿(ばか)息子(むすこ)はいるかっ?!」


 エトゥール城の聖堂の重いはずの扉が左右に勢いよく開く。

 聖堂の中にいた人々は、怒鳴りながら登場したアードゥルに一瞬驚いたものの、『馬鹿息子』に該当するであろう人物をいっせいに(かえり)みた。


 注目されたカイル・リードは、ディム・トゥーラとエルネストとともに、高級紙に描かれた精巧な絵の整理に追われているようだった。カイルはきょとんとしている。


 少し離れた場所には、エトゥールの姫であるファーレンシア・エル・エトゥールが床を()(まわ)っている赤子(むすめ)の子守を侍女達とともにしていた。

 ファーレンシアの方がすぐに客人の来襲に対応した。


「まあ、アードゥル様、ミオラス様、いらっしゃいませ」


 ファーレンシアは立ち上がり、二人を迎えいれた。荘厳な聖堂内部は、改装され、いまや完全に居住区と化していた。


「先触れもなしに申し訳ございません」


 ミオラスは頭を下げた。しかも、アードゥルは姫の伴侶に対して『馬鹿息子』という暴言を吐いている。内心、ミオラスは冷や汗をかいていた。


「導師であるアードゥル様に先触れは不要です。もちろん、その伴侶であるミオラス様もです」


 ファーレンシアは、にこりと微笑んだ。


「それに先ぶれは、ありましたのよ?カイル様がお二人がいらっしゃることを先見しておりまして、朝から楽しみにしていましたの」

「カイル様が先見?」


 先見と呼ばれる予知能力は、エトゥールの姫巫女と称されるファーレンシアの加護のはずだった。


「アードゥル、今日の訪問はわかっていたけど、『馬鹿息子』呼ばわりは、予知できなかったな。なぜ?まだ、大災厄の件を怒っているの?」


 カイルがアードゥルに首を(かし)げて尋ねる。


「今回、特別に『どうしようもない馬鹿野郎の血縁者である気の毒な息子』にしてやってもいい」

「それ略しすぎだし、評価が真逆のような気がする」


 カイルの突っ込みに、アードゥルは抱えてきた網籠(あみかご)を彼に向かって雑に放った。


「土産だ。()()()()()()()()()()


 カイルはなんとか網籠をキャッチすると、すぐに中身を察した。


「よく見つけ出したね?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ