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第96話 これからは私も姉らしく

 朝になり窓に暖かい日差しが入ってきて、目を覚ましたルーペアトはゆっくりと身体を起こす。


「ん…もう朝…?」


 余程疲れていたのだろう、夢を見ることなくぐっすりと朝まで眠り続けていた。

 寝ぼけて思考がはっきりしていないまま洗顔や着替えを済まし、部屋を出て朝食を取りに向かう。


 移動のために歩いていれば、少しずつ頭も身体も冴えてきた。

 部屋に着き中へ入ると、席にはエデルしか居らず他の三人が見当たらない。


「あれ、皆は?」

「義兄さん達なら先に行ったよ」

「え?そうなの…」


(起こしてくれても良かったのに)


 そう思うも、ルーペアトは夢を見ない程よく眠っていたわけだし、例えリヴェスが部屋に来ていたとしても気づかない上に、起こすことも躊躇ってしまうだろう。


「じゃあノーヴァも先に行ったんだね」

「どうだろう?義兄さん達と一緒に行ってなかったから、どこに行ったのか知らないな〜」

「そうなんだ。何も起こさないと良いけど…」


 リヴェスと仲直りしたなら、ノーヴァが変な行動を起こしたりする可能性は低いと思っているが、自由人だし突拍子もない行動をするから不安だ。

 このまま放って置いて大丈夫だろうか。


「何も言ってくれないから、今夜も家に泊まるのかわからないし、本当に困る」

「後で私から強く言っておくよ」

「ありがとう、姉さん」


 ウィノラに言いつけると言えば、ノーヴァも大人しく言うことを聞いてくれるだろう。

 もしそれでも駄目ならリヴェスに言ってもらえば良いことだし。


「食べ終わったら僕と一緒に皇宮に行こう」

「うん、そうだね」


 少しでも早く向かおうと、味わいながらも急いで朝食を食べ終えた。

 そしてそのまま屋敷を出て、馬車へと乗り込んだ二人も皇宮に向かう。


「そういえば姉さん、服の大きさとか大丈夫だった?」

「服?」

「衣装室に服とかいっぱいあったでしょ?」

「あ、言われてみれば確かに…」


 朝、衣装室にあった服を適当に取って来たが、今思い返すと服がたくさん掛けてあった。

 寝起きで頭が働いていなかったから、気づくことが出来なかったのだ。


「姉さんがいつでも泊まりに来れるように、必要な物は揃えておいたんだよね」

「そこまで気を遣ってくれてたんだね、ありがとう。大きさも大丈夫だよ」

「良かった、どういたしまして」


 こんなにも気を遣ってくれて嬉しく思うし、感謝しかない。

 同時に申し訳ないとも思う。

 自分がまだエデルに何もしてあげることが出来ていないからだ。


 エデルの方が少し背が高いが、まだまだ伸びると思うし、傍から見るとルーペアトが妹に見られてしまうだろう。

 姉らしいことが出来たら良いのだが。


「エデルはどうして私にここまでしてくれるの?家族といってもお互い会ったことがなかったのに」

「う~ん、両親のことは家族だとすぐに思えないけど、姉さんはやっぱり同じ境遇だったからかな?姉さんの気持ちを理解出来ると思うし、僕のことを一番理解出来るのは姉さんだと思ってるよ」


 お互いに引き取られて幼少期を過ごし、血の繋がりがある家族がどういうものなのか、わからないまま過ごしてきた。

 ルーペアトは弟の存在を知った日と両親に会った日が同じだったが、やはりエデルが自分と同じ境遇だったことで親近感が湧いたからなのか、すぐに受け入れることが出来たし打ち解けられている。


「後は素直に嬉しかったんだ」

「私も嬉しかったよ。リヴェスが兄弟だったから、仲が良いところを見ていると、ちょっと羨ましく思ってたり…」


 一応義理の妹だった子が居るが、歳はかなり離れているし会うこともなかった。

 今も何をしているのか全く知らない。


「姉さんとは気が合って仲良くなれると思ってたんだ。その予想は当たったね」

「そうだったんだ。リヴェスとお義兄さんともすぐ打ち解けられてて凄いよ」

「仲良くなれると思った人には距離を詰めていく性分だから」


 エデルが会話しているところを見ていた感じ、ティハルトとは特に気が合うんじゃないかと思う。

 普段や気分が良い時の話し方が似ているからだ。

 後、どちらも兄弟を大切に想ってくれているところとか。


「私も姉らしくなれるように頑張るね」

「やったね〜!あ、じゃあ一個お願いがあるんだけど良い?」

「うん、何でも聞くよ」

「姉さんが皇后になったら僕を一番の側近にしてほしいんだ」

「それはむしろ私がお願いしたいくらいだけど…、今官僚なんだよね?そこは大丈夫なの?」


 この先エデルが側で一緒に仕事をしてくれるなら、ルーペアト自身は安心だしとても助かるが、エデルは元々官僚で多くの貴族はエデルを頼っていたのではないかと思う。

 特に貴族派はミランがあんなんだったから、同じく皇族の血筋であるエデルを支持していただろう。


 そんな官僚がルーペアトの側近になってしまったら、誰がその穴を埋めるかという問題が起きる。


「本当はあいつの補佐でもあったんだよね。でもあいつが仕事しないからほとんど僕がやっててさ、官僚としての仕事は誰かに任せることが多かったし、僕じゃなくても官僚の仕事が出来る人はいっぱい居るから大丈夫だよ」

「それは大変だったね…」

「まあ、おかげで情報集めがしやすくて助かったよ」


 皇族なのに皇太子になれなくて、でも皇太子の仕事は肩代わりしていたなんて、可哀想すぎるだろう。

 でもエデルが肩代わりしていなければ、ヴィズィオネアはもっと酷い有様になっていたと思うと、何とも言えない気持ちになる。


「そろそろ皇宮が見えてくるよ。ハインツには劣るだろうけど、結構大きいんだよ」

「あれが…皇宮…」


 門をくぐり抜けると、遠目でわかるほど大きな建物が見えた。

 敷地が広いわけではないのに、大きな建物がいくつも建っているから、圧も迫力もあって意外とハインツに引けをとっていない。


 ハインツだと敷地が広く、大きな建物一つが散りばめられている分、迫力をそれほど感じていなかったのだ。


「皇宮に着いたことだし、本当に後少しだね」

「うん。気を引き締めて行こう」


 着くまで姉弟で楽しく談笑していたが、気持ちを切り替えて皇宮を鋭く見据える。


(…ついにここまで来たよ。お義父さん、お義母さん。皆を苦しめた元凶の場所に)


 全て終わったら会いに行くから、どうか空から見守っていてほしい。

読んで頂きありがとうございました!


次回は日曜7時となります。

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