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第87話 結ばれ深まる想い

 ルーペアトは人が出て来ている方向が会場の道だと考え、とにかく廊下を急いで走る。

 人が会場の外に出ようとしているということは、会場で何かが起こったということ。

 計画通り、リヴェスが剣を抜いたのだろう。


(私も早く加勢しないと)


 でも一つだけ心配がある。

 ミランがルーペアトの大切な人をルーペアトの目の前で殺す気なら、ルーペアトは皆が居る会場に行かない方が良いのではないか、ということだ。


(より危険な目に合わせてしまったらどうしよう…)


 ミランにとって重要な目的はルーペアトと結婚すること。

 だからルーペアトが殺されることは決してない。

 その代わりに、ルーペアトの周りの人間が殺されてしまうわけだ。


(…でも、私が皇太子の望みを叶えたとしても、皆の命の保証がされるとは限らないよね)


 とうやらミランはルーペアトを相当苦しめたいようだし、ミランに従っても従わなくても結果は同じになるだろう。

 だったらやっぱり、自分が行って大切な人達を守るべきだと決意し、人混みを掻き分けていく。


 人混みを抜ければ扉が見え、会場の入口だと気づき扉を開けた。

 会場内の貴族は皆居なくなり、リヴェス達とヴィズィオネアの騎士達が剣を交えている。


「リヴェス!」

「ルーか?」


 名前を叫べばリヴェスが気づいて目が合う。

 計画は始まったばかりで安心なんてまだまだ出来ないのに、リヴェスの顔を見たら胸が温かくなって安心してしまった。


 騎士達もルーペアトに気づいたことで動きを止めるが、すぐにまたリヴェス達に剣を振り始める。

 しかしその剣がルーペアトに向けられることはなかった。


(やっぱり私を殺す気はないんだね)


 そっちはその気でも、こっちは気絶させる気満々だ。

 ルーペアトは二つの剣を抜き加勢する。


 騎士はルーペアトが剣を持っていると思っていなかったのか、驚いた表情を見せた。

 その後怯えるように身体が震え出していて、ルーペアトはその隙に次々と騎士を気絶させていく。

 二つの剣を巧みに使いこなし、本領を発揮出来るようになったルーペアトの速度は尋常じゃない。


「さすがだな。あっという間に片づいた」

「皆に何もなくて良かった」

「初めて剣を振っているところを見たけど、本当にあの英雄なのね」


 イルゼはルーペアトの剣士としての姿に感心していた。


 ルーペアトは周りを見渡してあることに気づく。

 肝心のミランが居ないのだ。


「皇太子はどこに行ったの?」

「ルーを追ってテラスから降りた」

「え?出会わなかったけど…」


 ルーペアトは建物の中を通って会場に向かっていたため、外に出て行ったミランと出会わなかったのだろう。

 まだ会場に戻って来ないということはと考えた時、ルーペアトは直感的にエデルを思い出す。


「エデルが危ない…!」

「エデルって…官僚という少年だったよね?」

「はい。実はエデルは私の弟だったんです」

「弟だと?!じゃあジェイが見た金髪の少年がそうだったのか」


 リヴェスとティハルトはエデルがルーペアトの弟だったと聞き、かなり驚いた様子を見せた。

 しかしイルゼはあまり驚いていなさそうだ。


「イルゼは知ってたの?」

「あなたの弟だとは思わなかったけど、金髪なのは知っていたわ」


 恐らく貴族派でエデルと深く関わっていた家門の人達は皆、エデルが金髪の持ち主で皇族であることを知っているのだろう。

 だからエデルが何者なのか、誰も話すことが出来なかった。


「弟君が危ないんだよな。後は話しながら向かおう」

「はい。まだ移動してなければ、私が来た道を戻れば会えるはず」


 イルゼはティハルトとリヴェスの部下達に任せ、ルーペアトとリヴェスは先にエデルの元へ向かう。

 貴族達が全員外に出終わったのか、人混みがなくなり道が開けて通りやすくなっている。

 少しは早く着けるだろう。


「実はテラスから降りた後、エデルと本当の両親に会いに行ったんです」

「建物内にいたのか」

「別の建物だけど繋がってたんです」


 恐らく両親を連れ出しやすいようにしていたのだろう。

 それに、外を歩かせたら逃げられる可能性も考えていたはず。


「…ルーの義両親について、話を聞かせていたジェイから話を聞いた。実の両親と会って大丈夫だったか?」

「少しは納得出来ました」

「そうか。…俺が義両親の立場だったら、何が何でもルーを幸せにしたいと思う。義両親もルーを育てられて幸せだっただろう。だから、これからもルーは自分の幸せのために生きてくれ」


 リヴェスの言葉を聞いて、ルーペアトは走りながら涙を流しそうになった。

 義両親からの手紙の内容を知らないのに、リヴェスは義両親の気持ちを預けた両親よりもわかってくれている。


 両親もルーペアトのことを愛しているという、義両親の言葉が嘘だとは思っていない。

 でも義両親とリヴェスが同じことを言えるのは、どちらも心からルーペアトを大切に想い、幸せを願っているからだろう。

 

「そうします。全てが終わったら義両親とリヴェスが言うように、私は幸せのために生きる。だから、これから先も私はリヴェスの隣に居たい」

「…俺はヴィズィオネアの皇帝になる。俺の隣に居て幸せになれるか?」

「リヴェスが居てくれたら、どこへ行っても幸せになれます」


 状況が状況で足を止めることも出来ないし、リヴェスはルーペアトの前を走っていて表情が窺えないが、耳が紅く染まっていることだけは確認出来た。


「…ありがとう」


 そう言ったリヴェスの声が少し震えていた。

読んで頂きありがとうございました!


次回は木曜7時となります。

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