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第84話 血の繋がった姉弟

「あね…うえ?」


 確かに容姿は一緒だと思った。

 ルーペアトの髪が短った兵士頃にそっくりだったから。


「うん。急にこんなこと言われても困るだろうけど、本当の話だよ」

「そっ…か…。疑ってるわけではないよ、似てるなって思うし…」


 ミランに聞かされた衝撃の事実から、弟の登場まで加わって、ルーペアトは頭を悩ませた。

 一気に情報が増えたし、作戦のことも考えなければならないのに脳の処理が追いつかない。


「…でも納得した。だから私の家を掃除してくれてたんだね、ありがとう」

「まあ、僕はずっと姉上が帰って来るのを待ってたから」

「そうだったんだ。私は弟が居るなんて知らなかったのに…」


 探してくれていたにも関わらず、ルーペアトはハインツに行ってしまった。

 きっと探すのに苦労したのだろう。

 だからいつかは家に帰って来ると信じて掃除をしてくれていた。


「姉上は気にしなくて良いよ。僕は官僚だったから知ってるだけだし」


 ルーペアトに対してミランがあんな感じなのだから、エデルに対しても酷い態度を取っていたに違いない。

 官僚になるまでどれほど辛いことがあったのか、想像するのですら憚られる。

 幼い頃から兵士として戦っていたルーペアトのように、エデルも本当に大変だっただろう。


「計画を始めなきゃだけど、その前に。姉上って呼ばれるのは慣れないかも…。それにこれから私はなんて呼べば良いかな?」

「じゃあ僕は姉さんって呼ぶよ。僕のことはエデルで良いから」

「わかった。じゃあこれからよろしくね、エデル」


 今はエデルが居てくれているおかげで、余計なことを考えずに済んでいる。

 一人になった途端、両親のことを考えてしまいそうだから。


「計画については僕も知ってるし、姉さんが育ての両親の話を聞いて…困惑してるのもわかってる。でも、僕は先に僕達の両親に会いに行くべきだと思うんだ」

「…どうして?」

「その方が少しは気が楽になるかと思って。後はあいつが両親に手を出す前に、話をするべきだから」


 ルーペアトにとって愛情を注いで育ててくれた義両親は、本当に大切な人で大好きだった。

 だから本当の両親に会えなくても良いとさえ思っていたのに。


 でもヴィズィオネア来て義両親の手紙を読んだ時、ルーペアトに困難が待ち受けているけど大丈夫だと信じている、そして両親は私のことを愛していると書いてあった。

 それはルーペアトが皇族だと知ってようやく本当の意味を理解出来るものだ。


 ヴィズィオネアを良い国にするために、今の皇室を変えようとしているのが困難。

 そして両親はミランや現両陛下によって、ルーペアトとエデルを育てられなかったのだと。


「両親は過去のこともそうだけど、あいつが何をしようとしているのかも聞けるかもしれない」

「この近くに居るの?」

「居るよ。だってあいつは僕達の両親でさえも、姉さんの目の前で殺すつもりだったんだから」


 ルーペアトはそれを聞いて背筋が凍った。


(どうしてそこまで悪事を働けるの…!?)


 義両親と両親をルーペアトの目の前で殺すなんて、どれだけ自分を苦しめるつもりなのか。

 一体なぜ、それほどまでミランに恨まれているのかもわからない。


「そろそろ会場が騒がしくなる頃かな。騒ぎに紛れて両親の元に行くよ。続きは向かいながら話そう」

「わかった」


 建物の中に入った後、外から人が逃げ出すような声が聞こえてくる。

 計画通りに進んでいるのであれば、貴族達を外に避難させているはずだ。


「…あいつは本当にどうしようもないというか、あいつの両親もだけど、何で国をめちゃくちゃにして姉さんを苦しめようとしてるのか、僕にも理由はわからないんだよね」

「何か理由はあるはずだよね?」

「あると思う。探るために官僚になったんだけど、そもそも僕が養子になったのは貴族の家でさ、国にとって大事な家系だったんだ。だからあいつも手出し出来ず生かせられてるんだと思ってた。けど、僕も姉さんの前で殺すつもりだったのかな」

「その可能性はありそうだね…」


 リヴェスと離婚させるための脅しだとしても、義両親を殺したのがリヴェスと出会う前の出来事であることから、別の理由があることが窺える。


 国民を苦しませているのも皇室だし、ルーペアト達を苦しませたのも皇室。

 彼らは人を苦しませることが娯楽とでも思っているのだろうか。


(本当に許せない…)


 ルーペアトに今までにない程の怒りが込み上げていた。

 皆のため、そして自分のために、作戦を成功させなければ。


 しばらく廊下を走ったり階段を登ったりしたところで、エデルが立ち止まり後ろにいたルーペアトの方に振り向く。


「この角を曲がった先なんだけど、見張りがいるから気絶させてくれる?生憎、僕は剣術に優れてなくて」

「わかった。…なんかごめんね」


 父親がどうか知らないが、剣の才能はルーペアトが持っていってしまったようだ。

 申し訳ないと思いつつも、言われた通り見張りを気絶させに行く。


「誰だ!その見た目、あなたは―…うっ!」

「ぐはっ!」


 見張りの二人を剣の鞘でみぞおちを殴って気絶させた。


「これでしばらくは起きないはず」

「さすが姉さん」

「このくらいならエデルでも出来るんじゃ…?」

「まあまあ、行くよ」


(はぐらかされた…)


 テラスから落ちて来たルーペアトを受け止められる程の筋力があるのなら、剣でなくとも拳や頭を使って気絶させられたのではと、ルーペアトは疑問に思う。

 気絶させた反応は見るからに、ルーペアトの動きをを見られて嬉しいといった表情だった。


「扉を開けたら中にいるはずだよ」

「この中に…」


 ルーペアトは思わず緊張で身体に力が入る。

 どんな顔をして会えば良いだろうか。


「大丈夫、僕だって会うのは初めてだから不安だよ」

「そうだよね、エデルも不安だよね。…同時に扉開けようか。それなら扉を開ける不安は半分に出来るでしょ」

「良い考えだね、そうしよう」


 扉の取っ手を一つずつ握り、同時にゆっくりと扉を開けた。

読んで頂きありがとうございました!


次回は日曜7時となります。

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