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第82話 同じ髪色をした男

 会場に入ってから視線を集める四人。

 注目されている理由はそれぞれ違うだろうが、それでも皆釘付けだ。


 ルーペアトも会場内をよく観察したり、貴族の表情を伺っていた。

 内装も豪華で造りが良い。優秀な建築家がいるのだろう。

 それなのに街が同じ建物しかないのが勿体ない。


「ヴィズィオネアにも、こんなに貴族がいたんですね」

「そう見えるかもしれないけれど、これでもハインツの半分ですわよ」

「そうなんだ。それってやっぱり…」

「ええ、没落する家門が多いからよ。残ったのは上級貴族と裕福な下級貴族だけね」


 こんな調子じゃヴィズィオネアがいつ、取り返しがつかなくなってもおかしくない。

 もうかなりまずいことになっているが。


 それから、会ったことがない貴族派の者をイルゼが紹介してくれた。

 名前は事前に知っているが、お互いに顔も覚えていた方が良いだろう。


「…官僚の彼はまだ来ていなさそうだね」

「ああ。それらしい人物はいないな」


 見た目がわからない分、とりあえずルーペアトより若い男を探して見ていたが、そもそも若い男があまりいなかった。

 まだ来ていないのか、別の場所で待機しているのか、どちらにせよ一度は姿を見せて欲しいものだ。


 話をしていれば、突然会場が騒がしくなった。

 ルーペアトも貴族達が見ている方向に目を向ければ、ルーペアトと同じ金髪の男が目に入る。


(あの人がもしかして皇太子?)


 ふと考えていれば男と目が合った。

 その瞬間、男は口角を上げて笑い、こちらに真っ直ぐ近づいて来る。

 四人の前に止まる直前、リヴェスは庇うようにルーペアトの前に立った。

 が、他の人に目を向けることなくルーペアトに話し掛けて来たのだ。


「やっと会えたな。ルーペアト」

「…っ?!」


(やっと、って…どういうこと?)


 名前を知られているのはわかるが、ティハルトとリヴェスを差し置いて話し掛けて来た意味がわからない。


「あの日以来ですね。ミラン皇太子殿下」

「ふん。お前に用はない、そこをどけ」


(ミラン…?全然聞いたことない)


 それに、いくら皇太子だからって傲慢過ぎないかと思い、ルーペアトはミランを睨む。


「初めましてミラン皇太子。あなたは想像通りの人ですね」

「ちっ…初めましてティハルト皇帝陛下。このロダリオの男をどけてもらえますか?」


 さすがに皇帝であるティハルトを無視するのは厳しかったようで、舌を鳴らしたものの多少口調を改めて口を開いていた。


「どうしてかな?」

「…彼女と二人で話したいことがあるんだ」

「へぇ…僕を差し置いて彼女に。それから、彼女は既婚者だからリヴェス以外の男と二人きりは良くないね」

「婚約者候補である私にも声を掛けないほど、彼女と話がしたいなんて家を敵に回すおつもりで?」


 ティハルトもイルゼもルーペアトを庇ってくれた。

 しかし、当のルーペアトはどうして庇われているのかわからずにいる。

 話したいのは英雄だからだと考えているが、果たして本当にそんな理由なのだろうか。


「大事にされたくなければ大人しく彼女を渡した方が良いと思わないか?なあ、ロダリオ」


 ミランはルーペアトを渡さなければ、この場で秘密を暴露してやると脅しているのと同じだ。

 だが、ミランがそう言ってくるのは予想していた。

 リヴェスは顔色一つ変えず、冷静に言い放つ。


「妻と話す最低条件は俺の見える位置で話すことだ。ここにはテラスがあるだろう。勿論、俺は話の内容は聞かない」

「仕方ない、それぐらいは聞いてやるよ」


(えっ!彼と話すの?)


 ルーペアトはリヴェスが許可したことに驚いた。

 こうなることをルーペアトは事前に何も聞いていないのだが。


「これ以上話を聞きたくないと思ったら逃げろ。何をしてでも絶対に」

「わ、わかりました」


 リヴェスが真剣な表情でそう言ったから、何かミランから聞かなければいけない話があるのだとルーペアトは悟った。

 それと同時にリヴェスは、ルーペアトが自分の本当の身分を知ってしまうことを覚悟する。


「おい行くぞ、ついて来い」


 ルーペアトは黙ったまま、少し離れてミランの後ろを歩いて行った。


(イルゼが彼を嫌うのは当然だね。私も嫌いだわ…)


 ミランの背中をルーペアトは鋭く睨みつける。


 そしてミランが背を向けた隙に、リヴェスは離れた所で待機していたジェイを呼ぶ。


「二人の話を聞いておいてくれ」

「はい。…先にルーペアト様に身分のこと、話さなかったんですね」

「ああ…」

「…では、役目を果たしに行きます」

「頼んだ」


 ジェイはリヴェスの元を離れ、こっそりテラスに近づいた。

 リヴェスはミランに『俺は』話の内容を聞かないとは言ったが、誰にも聞かせないとは言ってない。

 すぐに話しに割って入れる準備は出来ている。

読んで頂きありがとうございました!


次回は火曜7時となります。


本当はミランと話し終わるまで82話に入れるはずでしたが、サイトが重く文字を上手く打てないため、話を分けて次話を早く投稿する対応をさせて頂きます。

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