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第81話 華やかな場の裏で渦巻く闇

 パーティーまでの三日間は更に忙しい日々を送っていた。

 シュルツ家だけでなく、他の貴族派とも対談したり、パーティーのため衣装合わせがあったからだ。

 ルーペアトとリヴェスはあの日以降、ゆっくり話す時間が取れずにいる。

 全て終わってからじゃないともう話せない。


 そして、結局エデルという男の正体が官僚であること以外知れず、再び会うことも出来ないままだ。

 シュルツ公爵によるとパーティーには出席するそうだが、フードを被っていなければ誰がエデルかなんてわからない。

 エデルから話し掛けてくれることを祈るしかないだろう。


 準備を終え、ついにパーティーであり作戦を決行する日がやってきた。

 馬車に乗って会場に向かっている三人は、華やかな衣装を身に纏っているが、実は動き易くもある格好だ。

 それに、確認はされないと思うが念の為、気づかれない位置に剣を隠しておいた。

 これでいつ襲われても問題なく対処出来るだろう。


「いよいよですね…」

「僕達なら大丈夫だよ。ここまであんなに準備してきたんだから。落ち着いて作戦通りに動こう」

「はい、そうですね」


 ここまで緻密に時間を掛けて計画を練ってきたのだ。

 後ろ向きな気持ちになってはいけない。必ず成功すると、強い意思を持たなければ。


「…ルー、前にハルトが言っていたことを覚えているか?負い目を感じないでほしいと話したこと」

「覚えてます」


『この先君の身にたくさんのことが降り掛かって来て、そこにどんな秘密が隠されていようと、僕とリヴェスは君を守るために君を想って行動する。そうするのは君が僕達にとって大切な人で、そうしたいと強く思っているからだよ。だから僕達がしたことに負い目を感じる必要はないと、肝に銘じていてほしいんだ』


 それはルーペアトが囚われた翌日の朝、一緒に朝食を取っている時に話したことだ。

 とても嬉しかった言葉だから、一言一句覚えている。


「俺達にとって本当にルーは大切な存在だから、何があってもまずは自分の命を優先してくれ」

「でもそれじゃあ…」

「わかってる。俺達は死なないと約束するから」


 ルーペアトはリヴェスとティハルトが両親の二の舞いになることを恐れていた。

 だから二人のことは今度こそ守り切ると心に決めていたのだが。

 約束してくれるなら、それを信じたい。


「わかりました。本当に、絶対死なないで下さいね」

「ああ、約束する」

「もちろん。二度と悲しい思いはさせないよ」

「ありがとうございます」


 リヴェスの剣術は共闘したからわかっているし、騎士と手合わせしたり助言もしたりしていたから、二人はこの約束を守ってくれると信じている。

 だからルーペアトも自分に集中して作戦を遂行しようと決めた。


 会場に着くまでの間も抜かりなく作戦の話し合いを続け、ついに会場へと辿り着く。

 ヴィズィオネアの皇宮を見たことはないが、この会場もかなり豪華な建物だった。

 間違いなく皇室が主催した時に使う会場なのだろう。


「…本当に皇室の者は自分達のことしか考えていないんだな」

「これでよく国が成り立っているよね」


 リヴェスとティハルトも呆れてしまっていた。

 三年前の戦争でヴィズィオネアが降伏していたら、逆に良くなっていたんじゃないかとまで思ってしまう。


 馬車から降りれば、入口でイルゼが待っていた。


「ごきげんよう。今日は色んな意味でお願いしますわ」

「よろしくね」


 本当は一緒に会場へ向かうべきなのだが、パーティーの前からパートナーを務めることを決めていた事実を隠すために待ち合わせにしている。

 リヴェスとルーペアトは夫婦であり、ティハルトは独り身で相手が居ないと知ったイルゼが、入口でパートナーを志望したという設定だ。


 ルーペアトがイルゼと仲良くなっていたから、リヴェスもティハルトもイルゼを信じて、パートナーに選んでくれたことをルーペアトは嬉しく思う。

 それに、着飾っている二人が並んでいるとより一層お似合いに見える。


「じゃあ行こうか」

「ええ」


 ティハルトは腕を差し出し、イルゼと腕を組んだ。

 イルゼは受け入れるも顔が赤くなっている。

 それもそうだろう。イルゼはミランの婚約者最有力候補でミランとパートナーを組むことが多かったから。

 イルゼはミランを毛嫌いしているし、腕を組んでも無感情どころか嫌悪していたはずだ。

 異性として意識している人と腕を組むのに緊張するのは当たり前だろう。


「俺達も行こう」

「はい」


 ルーペアトもリヴェスと腕を組み、ティハルトと達の後ろを歩いて行く。


 いよいよ始まると思えば、ルーペアトの鼓動が強く波打ち始め、無意識にリヴェスの腕を強く握った。


「大丈夫だ、俺も皆もいる。そして自分に自信を持て」

「…はい。頑張ります」

「ああ。一緒に頑張ろう」


 そして会場へ足を踏み入れた。



 会場からすぐ近くの建物から、四人の姿を窓から眺めるミランは微笑んだ。


「やっと姿を見れたな…ルーペアト。今日はお前の大切なもの、全部奪ってやるよ」


 ミランは窓から離れ、会場の方へと足を進めた。

 不敵な笑みを浮かべながら―


 

読んで頂きありがとうございました!


ついにパーティーの日がやってきましたよ!

この作品において一番重要な部分、慎重に大事に書いていきますので、お楽しみ下さい^^


次回は日曜7時となります。

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