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第76話 貴族派を味方につける

 シュルツ家に着いた三人は時間を効率的に使うため、前回同様リヴェスとティハルトはシュルツ公爵と話し、ルーペアトはイルゼと話をする。

 同時に話を聞いた方が良いのは勿論だが、ルーペアトをイルゼと話させることで、リヴェスの方がルーペアトに聞かせられない話をするためでもあった。


「じゃあまた後でね」

「はい」


 リヴェスとティハルトはシュルツ公爵の待つ客室へと向かった。

 部屋に入ると、今回はティハルトが一緒だからか、シュルツ公爵は緊張しているように見える。


「初めまして、ハインツの皇帝ティハルトです。今回は協力してくれてありがとう」

「とんでもありません。ハインツの皇帝陛下をお目にかかれて大変光栄でございます」

「早速話を始めようか」


 二人は席に着き、時間が限られているため雑談をしている場合ではない。

 パーティーでの動きに関してもだが、まずはエデルについて聞いておきたいところだ。


「僕が先日、街で聞き込みをしていた時に、エデルという子が助けてくれたんだけど、彼について知っているかな?」

「エデル様…ですか」


(…様だと?)


 リヴェスはシュルツ公爵がエデルに様を付けたことが気に掛かった。

 公爵家なのだから、様を付ける者は少ないはずだ。

 そう呼ぶということは身分が高い、例えば皇族かそれに近しい人物なのだろうか。


「エデル様は身分が高くないものの、国の官僚だからね、私よりも立場が上なのだよ」

「国の官僚なのに皇室派じゃないのか?」

「はい、エデル様は貴族派です」


 官僚ともなれば国の政治に大きく関わっているはずだ。

 ルーペアトの家を掃除し、リヴェス達を手助けきているのに、街があんな状態なのは皇室からの圧なのか、貴族派として動いていることを悟らせないためなのか、果たしてどちらだろう。


「僕が会った時はフードを被っていて顔を見ていないんだけど、見たことはあるかな?」

「それが…会ったことがないんです」

「会ったことがない?」

「はい…。限られた人しか会うことが出来ず、私達は人伝で話をしているので…」

「なるほどね…」


 徹底的に素顔を知られないように生きているというわけだ。

 エデルが大きな鍵を握っていることは間違いないのに、どうしてもエデルに辿り着けない。


「立場上、私が話せるのはこれくらいしか…、申し訳ありません」

「いや、官僚だと知れて良かったよ」

「ありがとうございます。あ…そういえば、エデル様について一つ思うことがありまして」

「それは話しても大丈夫なのかい?」

「これはあくまで私の予想なので大丈夫だと思います」


 リヴェスとティハルトは無理やり話を聞くつもりはないし、シュルツ公爵の立場が危うくなるならこれ以上話さない方が良いと思っていた。

 しかし、正直エデルについて今は何でも知りたい。

 だからこそ予想でも良いから、言っても問題ないことは言ってもらえると助かる。


「昨日お話した時、英雄が赤髪だと知られているのは皇族が正体を隠すためじゃないかとお話ししましたよね?」

「しましたね」

「本当は皇族が隠したのではなく、エデル様が英雄を守るためにそう言ったのではないかと思ったのです」

「…確かに、それもありえる話だな」


 それだとエデルがルーペアトの家を掃除しているのにも少しは納得出来る。

 ルーペアトは覚えていなくても、戦場にエデルは居て姿を見たのかもしれない。


「三年前すでに官僚の職に就いていたかどうかは話せますか?」

「ええ、エデル様はすでに官僚でした」


 ならルーペアトが英雄となった日、エデルがそこにいてもおかしくない。


 ルーペアトより若いと思われるエデルだが、三年前で官僚なら相当優秀な人間のようだ。

 幼い頃に剣術の才能を開花させたルーペアトのように。


「予想でも良い情報だった。感謝する」


 シュルツ公爵でもエデルに関してわからないことが多いなら、リヴェス達が調べても情報は出てこないだろう。

 一旦このあたりでエデルについて探るのは止め、パーティーに関して話し合っていく。


「あとは作戦を決行するパーティーまでの動きと、当日の動きの確認なのだけれど、まず決行日までにしてほしいのは他の貴族派にも僕らのことを周知してもらうことだね」

「わかりました。パーティーに出席する貴族派の者を優先して声を掛けておきます」

「そして当日は私の合図でパーティー中に皇室への不満を叫んでほしい。パーティーに貴族派が多い程いいね。今の皇室に忠誠心がある者はほとんど居ないと示せるから」


 皇室の人間に、これまでしてきたことは間違っていたと思わせなければいけない。

 ただ排除するのではなく、ちゃんと罪を認めさせ、謝って済む話ではないがしっかり国民と貴族達にも謝罪をしてもらわなければ。


「勿論、身の安全は保証するよ。そこは僕らの騎士に任せてほしい」

「とても心強いです。私も出来ることは精一杯させて頂きます」

「ありがとう。僕らもあなたの協力を得られて本当に助かってる。今回のお礼と条件の方は終わってから話をしよう」

「はい。ありがとうございます」


 これで貴族派の者を味方につけることが出来そうだ。

 準備が出来るのはあと三日。

 まだまだやるべきことは残っている。

読んで頂きありがとうございました!


次回は木曜7時となります。


ティハルトと敬語で話すリヴェスが一緒だとわかりづらいかもしれないので一応話しておくと、ティハルトは語尾が「かな?」「かい?」や「だよ」のように柔らかく問いかけています。

反してリヴェスは「か?」や「だな」のように固く言葉も短いです。

区別する際に役立てると幸いです^^

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