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第71話 街で聞き込み調査

 翌朝、朝食を食べて準備を終えた三人は、それぞれ話を聞くために街へ行く。

 皇族に関わる話はティハルトに聞いてもらい、リヴェスとルーペアトは街の様子を見て、気になったことを聞いていく予定だ。


「よし、行こう」

「はい」


 二人は一昨日の昼間に街を歩いた場所ではない所へ向かう。

 大通りを歩くと皇室直属の騎士と出会ったりして、こちらの行動を知られてしまうかもしれないからだ。

 騎士だけでなく、貴族達とも出来る限り出会わない方が良いだろう。


「この辺りが良さそうだな」


 大通りからそれほど離れてもいないし、でも人気が少ない理想の場所があった。

 裏道ではあるため治安は多少心配ではあるが、ただの悪党くらいは二人の敵ではない。


「早速話を聞きましょう」


 ルーペアトはちょうど家から出て来た一人の女性に声を掛ける。


「すみません、話を伺っても良いで…す、か?」


 自分が話し掛けられていると気づいた女性は、まだルーペアトが話している途中なのにも関わらず、突然怯えるように震えだした。


「えと…、どうされました?」

「き、貴族様が…わ、私に何の御用が…」


 こんなにも怯えられるとは思っていなかった。

 まだヴィズィオネアに住む貴族はイルゼ以外知らないが、他の貴族は街の人に対して酷い態度をとっているのだろうか。


「私達は隣国ハインツの者です。ただこの国について聞きたいだけで害するようなことはしません、安心して下さい」

「ハインツの…」

「はい」


 ルーペアトが女性に柔らかい表情で話したことで、少し落ち着きを取り戻せたようだ。


「いくつか質問しても大丈夫ですか?無理なら断ってもらっても構いません」

「だ、大丈夫です」

「ありがとうございます」


 始めはどうなるかと思ったが話が聞けそうでひとまず安心だ。

 皆が皆、彼女のようだったらこの後話を聞くのも大変だろう。


「まず街に関して気になったのですが、見た目が同じ建物が多いですよね。お店と住宅の区別もしにくいですし、理由はわかりますか?」

「それは…」


 女性は一言発した後、目を左右に動かし周りを見出した。

 どうやら人目を気にしているようだ。


「…お金がなく、新しい建築方法を試すことも出来ず、一番安く作れる建物にするしかないのです…」

「お金がないのはヴィズィオネアの皇族が私腹を肥やしているからですか?」

「なんてことを言うのですか?!それを認めたら…私…私は…、反逆者になってしまう…」


 女性は再び震えだしてそう言い放つが、その答えだと本心はそう思っていると言っても過言ではないだろう。

 思っていても口に出さなければ反逆者だと気づかれることはない。


「失礼しました。ですが、あなたも皇室に不満がありますよね」

「……」


 女性は何も言わず下を向いた。

 否定しないということは、そういうことだ。


「私も皇室に不満があります。この国を変えるために来たんです。どうか協力して頂けませんか?」

「…隣国の貴族に何が出来ると言うのですか。私達は国を救った英雄がまた救ってくれるのを待っているのです」


 ルーペアトはそれを聞いて心臓が跳ねた。


(それは…つまり…)


 街がこんな状況になっている原因の皇族を殺してくれ、ということか。

 戦勝に導いた褒美として願いを聞いてくれる、なんて都合の良いことはしないだろうから。

 英雄でも皇族のやり方に口を出したら、それこそ反逆者扱いされそうだ。


 ルーペアトが何も言えないでいると、リヴェスが前に出て女性だけでなく、近くに居る人にも聞こえるような大きな声で話し出す。


「そうやって英雄に縋り、責任を取らせて、本人の意思と関係なくそんなことをさせるのか」

「そ、それは…」

「彼女が先程言ったように、俺達は本気でこの国を変えるためにここへ来たんだ。まだ信じられないだろうが、俺達は皇室のやり方を根本から覆す。民を傷つけたり、強要したりせず、必ず守ると誓う。だから、俺達に協力してくれ」


 言い終えたリヴェスは頭を下げた。

 続いてルーペアトも頭を下げる。

 顔を上げて見渡すと、周りには人が増えていたが、幸いにも見える範囲に騎士や貴族らしい人は見つからない。


「…信じます。お二人、ハインツを」

「俺も信じるぜ!」

「私も!英雄に頼ってばっかりじゃ駄目だよね!」


 集まっていた人達が俺も私もと、声をあげて応援してくれる。

 皆やっぱり不満だったんだなと思いながらも、応援には胸が温かくなった。


「皆さん、ありがとうございます…!」


 それから街の人達は自ら国の現状について話してくれた。

 皇室は私腹を肥やし、皇室派の貴族も国民に対して酷い扱いをしているようだ。

 貴族派の者は少ないがいるらしく、意見を出した者には処罰が下るそうだが、皇室を崩壊させるために準備をしているのだとか。


 その貴族派の筆頭がどうやらシュルツ家、つまりイルゼの家門なのだそう。

 イルゼの家門は治安判事を生業としているようだし、治安を維持する者として皇室のやり方に不満を抱くのは当然のことだ。

 ハインツにイルゼを勉強させに行ったのも、皇室より国の未来を想ってのことだったのだろう。


「それならイルゼの家に行って、協力を仰いでみませんか?」

「良い案だな、そうしよう」


 街の人にシュルツ家の場所を聞き、改めて皆にお礼を伝えた後、二人は馬車に乗ってシュルツ家へと向かった。

読んで頂きありがとうございました!


次回は日曜7時となります。

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