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第70話 フードを被った男

 帰って来た頃にはすっかり夜になり、宿に着いてからティハルトに挨拶をして、ルーペアトは色々済ませた後、疲れですぐ眠りについた。


 その間、リヴェスはルーペアトの故郷であった事をティハルトに報告する。


「故郷の状態はどうだった?」

「人はもう目の悪い男一人しか居らず、他の者は別の街に行ってしまったそうだ」

「そっか…、じゃあ街はもうほぼ何もない状態だったんだね」

「だが、ルーの家は当時のまま残っていて手入れがされていたんだ。男に聞けば、フードを被った若い男が掃除をしに来ていると言っていた」

「若い男か…」


 若い男となればルーペアトと同い年か年下だと思われる。

 ルーペアトは同世代の子に比べて剣士になるのが早かったため、知り合いの男は居ない。

 英雄に憧れたからだとしても、わざわざ来て掃除までするのかという疑問が残る。手紙をルーペアトが気づける位置に置いていたのもそうだ。


「掃除をしに来ているならミランではなさそうだね」

「そうだな。とはいえ誰なのか全く見当がつかない…」


 フードを被っていることから、正体を隠さなければいけない人物だということはわかる。

 街に居る唯一の男にでさえ顔を見せないとなれば、余程顔を見られたくないのだろう。


「ミランが人を向かわせ掃除をさせるにしろ、花を育てて手紙を破棄しないのはおかしいしな…」

「彼女に対して、又は一家に対してかなり強い想いがあるみたいだね」

「もしかしたら貴族の人間かもしれないな。ルーが王族なのに気づいていて、ミランを廃位させるためにルーが帰って来るのを待っているとか」

「確かに、それはありえるね」


 男の目が良かったなら、身なりの良し悪しで貴族だという確信を持てるのだが仕方ない。


 少なくともミランとその両親の政治のやり方に不満を抱き、反逆を考えている貴族は居るだろう。

 街の人がルーペアトを見ても、誰も王族かどうかを聞いたりしていなさそうなことから、街の人もいつかのことを考えあえて聞かないようにしていた可能性がある。


 目の悪い男だって、ルーペアトを金髪だから覚えていたと言っていた。

 それは他の人達が皆暗い髪色に対して、金髪が目立つし判断しやすいというのはあるだろう。

 しかし、それだけではないはずだ。他にも理由は必ずある。


「場所はわかったしもう一度話を聞くために人を送るべきか?ルーが居たから王族に関する話は聞けなかったしな」

「一日で行ける場所みたいだし、その方が良いかもね。まだパーティーまでは時間もある、今の内に出来ることはやっておかないと」

「わかった。部下を向かわせる」


 これで明日の夜には情報が増え、良い手掛かりが見つかるはずだ。


「今日はこれくらいにしておこうか。さすがにリヴェスも疲れてるでしょ」

「そうだな、明日に備えて先に休むことにする」

「うん、おやすみ」


 ティハルトとの話し合いを終えて、リヴェスも部屋へと戻る。

 寝台で横になり腕を額に乗せたリヴェスは、天井を見つめながら考えごとを始めた。


「明日は街で情報収集か…」


 正直に言うと不安で仕方がない。

 何故なら、ルーペアトが何を言われるかわからないからだ。

 今日は街の人達がリヴェスを初めて見たため、隣に金髪の令嬢が居ても自ら話しに来たりしない。


 けれども、こちらから話し掛けに行くとなれば、逆に質問されてしまう可能性が高いのだ。

 王族に関する話はティハルトが聞いてくれるが、それでもルーペアトがそれらを耳にしてしまってもおかしくない。


 リヴェスはルーペアトと一緒に行動して、出来る限りその話題は避け、もし話されそうものなら全力で阻止するつもりだ。


「上手く行くことを願うしかないな…」


 そうしてリヴェスも眠りについた。



 ルーペアトとリヴェスが故郷に居た日の夜、フードを被った男はルーペアトの家を訪れた。


「っ!手紙が無くなってる…!」


 男は机に置いておいたはずの手紙が無くなっていることに気づき、かなり動揺した。


「ヴィズィオネアに帰って来てからすぐにここに来るとは思わなかった。一足遅かったな…」


 それから男はいつも通り掃除をした後、目の悪い男の元へ向かった。


「元気?」

「あぁ、しぶとく生きてるさ。それより、今日来てたぞ」

「知ってる。で、僕のこと話した?」

「少しだけな」

「おい」

「そんな怒るなって、誰とまでは言ってねぇよ」

「はぁ…まあいいや、そのうち会うし。それと、暫く忙しくなって来れないからこれ渡しとく」


 そう言って食料の入った籠を男に手渡した。


「生意気なガキのくせに、何だかんだ面倒見良いよな」

「一言余計、要らないならあげない」

「悪い悪い、ありがたく貰うって『エデル』」

「じゃあ、次は何聞かれても喋んなよ」

「わかってるよ。…やっぱ生意気だな」

「何か言った?」

「何も言ってねぇから、じゃあな」


 エデルは男に別れを告げ、街を出て行った。


 雲で隠れていた月が顔を出し、エデルの瞳を照らす。

 その色はアクアマリンの様な綺麗な水色だった。


読んで頂きありがとうございました!


新しい人物の名が出ました^^

彼は一体何者なのか…!


次回は木曜7時となります。

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