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第68話 変わらぬ街並み

 街を進み続け、馬車は宿の前で停まった。

 てっきり皇宮に泊まるかと思っていたのだが。しかし、宿の見た目からして綺麗なことから、貴族が泊まる宿であることに間違いではないだろう。


「ずっと移動続きだったし、今日はゆっくり休んで明日から動き出そうか」

「わかりました」

「俺は夜まで街を見て回ってくる」

「じゃあ私も行きます」


 街をもっと近くで見たかったルーペアトはリヴェスについて行くことにした。

 多分、今行っておかないと事が片付くまで見られないだろうから。


「そっか、いってらっしゃい。僕は部屋に居るよ」


 ティハルトに見送られ、二人は宿を後にした。


 街をよく見渡してみれば、やはりハインツと違う箇所がいくつも見受けられる。

 隣国が発展している国なら、良い所を吸収して自国に活かすのが策だと思うが、そんな意志は微塵も感じられない。

 イルゼは親に言われてハインツに来ていたぐらいだし、イルゼ以外の人もそうしていると思っていたが違うようだ。


「隣国なのにこんなにも違うんだな」

「そうですね。私もハインツに来た時は驚きました」

「ルーが住んでいた場所もこんな感じなのか?」

「いえ、もっと田舎です。なのでここからは遠く離れた所なんですかね」


 ヴィズィオネアの都心はハインツの田舎よりも酷い。つまり、ルーペアトが住んでいた所はかなり環境が悪かったと言える。

 近隣の人達は今、どうしているだろうか。


(皆元気かな…?)


 ルーペアトがヴィズィオネアを離れてから三年。その間、近隣の人や一緒に戦った兵士達、そして住んでいた家はどうなっているのか、やはり気になってしまう。

 住民が居なくなった家は取り壊されているか、もしくは別の誰かが住んでいるかもしれない。

 そのまま残ってくれているのが理想だ。


「やっぱり家に帰ってみたいか?」


 そんなことを考えていたことに気づいたのか、リヴェスが尋ねてきた。


「はい…気になります。でもどの辺りかわからないんです」


 ルーペアトは長らく走り続け倒れた後、デヴィン夫人により屋敷に連れて行かれた。

 そのため、屋敷の近くにある国境付近だとは思うのだが、夫人がどこでルーペアトを拾ったかによって変わってくる。


「場所か…。もしかしたらわかるかもしれない」

「え?本当ですか?」

「ああ、恐らくここからそれほど離れているわけではないだろう」


 ルーペアトの本当の両親は、何らかの理由で育ての親に預けたのだと思われる。そうなら出来るだけ遠くに行かせるだろう。

 しかしルーペアトが皇族であり、生きていることをミランが知っていたことを踏まえると、どこに住んでいたのか把握していて監視をつけていた可能性がある。

 結局ルーペアトはここから離れた場所ではなく、皇室の手が届きやすい場所に居たのではないだろうか。

 だからいつでも始末出来ると生かされていた。


 そしてルーペアトがハインツに行ってしまったため、消息がわからなくなり探し始め、連れ戻そうとしていると。


「デヴィン家の屋敷と皇宮を線で結んだとして、その真ん中辺りだと思う」

「確かに、数日歩いていたので国境から離れていると思います」

「国境を越えたのがいつかはわかるか?」

「えっと…わからないです。門も壁もあったわけじゃなくて、ただずっと森を走っていた気がします」


 ヴィズィオネアに来る時は門をくぐったが、思い出してみればルーペアトがハインツに来た時はそんなものはなかった。

 特に線が引かれていたりするわけでもなく、本当に森ばかりだったと思う。


「なら探しやすそうだな。塀があるのは都心部だけだろうし、さっきの考えで塀がない近くを探せば良い」

「なるほど…さすがですね。私は街の人に聞いて周らないとわからないだろうなと思っていたので」

「ヴィズィオネアの地図を見た時に、ルーが住んでいた可能性がある場所はある程度絞っておいたんだ」

「そうだったんですね。ありがとうございます」


 全て終わった後一人で探すつもりだったから、当たり前のようにリヴェスが探そうとしてくれていたことには驚きつつも、嬉しかった。


(リヴェスがここまでしてくれているのは、契約結婚でも一応妻だからかな…)


 もしそうだったら嫌だな、何て思ったり。


「それにしても、街の雰囲気は全く変わらないな。全部似た造りの建物しかない」

「効率を重視しているんですかね」


 造り方を一つ覚えれば良いだけだし、その分早く建てられるのだろう。

 見た目は置いておいて。


「機能性もなさそうだがな」


 ハインツの職人達が見たらかなり驚くことだろう。

 そうなることが容易く想像出来るくらいに酷い。


「街を歩いていてもあまり収穫はないな」

「ただ街の不便さがわかるだけですね」


 あまりにも景色が変わらな過ぎて、同じ道を歩き続けている気分だ。

 それに、すれ違う人の視線が気になって落ち着かない。


「かなり見られてますよね私達」

「異国の人間が珍しいんだろうな」


 本当は違う理由で見られていると思うが、ここは誤魔化しておく。


「提案なんだが、ルーが疲れていなければルーの家を探しに行かないか?」

「今からですか?」

「今からでも、夜か明日の朝でも。出来るだけ早い方が良いだろう」

「そう、ですね。私は疲れてないです。でもお義兄さんに声を掛けた方が良いでしょうし、夜…ですかね?」

「わかった。なら宿に戻ろう」


 踵を返し、二人は宿の方へと戻って行った。

 宿に着いてからすぐにティハルトに話し、出発のため準備をする。


「馬で行こうと思うが大丈夫か?」

「多分大丈夫だと思います」

「何かあったらすぐに言ってくれ」

「はい」


 馬で行った方が早く行けるため、一頭の馬に二人で跨り走り出す。

 リヴェスの予想では昼になる前に探し出せるだろうとのことだ。


 不安でもあるが、家に帰れることが嬉しくて仕方がなかった。

 あんなに過去を思い出したくなかったが、育ててくれた義両親との思い出はやっぱり大切だ。

 

読んで頂きありがとうございました!


次回は土曜7時となります。

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