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第67話 準備は整った

 翌日からヴィズィオネアへ行くための準備が始まった。

 ノーヴァが招待されたことについて公表したのはもう良いものの、毎日皇宮に訪れていては他の貴族に勝手な憶測をされる可能性があるため、準備はロダリオ家で行う。


 会議に来なかったノーヴァは準備には姿を現し、先日のことがあったためリヴェスとの関係が心配だったが、公私を分けているのかそれは杞憂で何事もなかったかのよう会話をしている。


(…本当に謎だ)


 そんな風に接せれるのに何であんなに仲が拗れたのか不思議で仕方ないが、ヴィズィオネアとの問題が片付く頃には二人の関係も良くなっているだろうと思い、ルーペアトは再び準備に没頭した。


 準備でルーペアトがすることは二つ。

 一つはウィノラと一緒に政治の仕方を学ぶことだ。どうして自分も学ぶように促されたのかわからないが、学んで損はないと考え熱心にティハルトの話を聞いた。


 二つ目は一緒にヴィズィオネアへ向かう騎士達に剣の指導をすることだ。

 リヴェスにこんなことを頼むのは申し訳ないと言われたが、ルーペアトも備えとして感覚を取り戻しておきたかったため、快く了承した。



「今日も疲れた…」

「お疲れ様」


 準備を始めて数日後、かなり詰まった厳しい日程にウィノラは弱音を吐露していた。


「国のために頑張るけど、毎日大変だよぉ…」

「ウィノラは本当に頑張ってるよ。覚えるのも早いでしょ」


 リオポルダ家が平民から成り上がった貴族なだけあって、ウィノラも金銭関係にも詳しく理解して覚えるのが早かった。


 苦労したのはむしろルーペアトの方だ。

 自分一人でまともに買い物をしたこともなければ、ヴィズィオネアの腐った政治ではない、ちゃんとした政治を学んだことのないルーペアトにとって、ハインツの国政を学ぶのはかなり難しい。


「ルーはもっと大変だもんね。私は政治だけだけど、ルーは剣の指導もしてるんでしょ?凄いね、私も弱音ばっかり言ってられないなぁ」

「でも皆優秀だから教えることも少ないけどね」


 リヴェスの部下に比べ、皇室に属する騎士達は実力主義だからか、英雄と聞いて尊敬の眼差しを向ける人もいれば、冷たい目で見られることもあった。

 英雄とはいっても女性だからと軽く見ていたのだろう。


 リヴェスの部下は皆ルーペアトを慕ってくれたが、それは珍しい方で普通はこういった反応をされることをルーペアトはわかっていた。

 自分が指導するのは烏滸がましい気持ちはありつつも、やるべきことを全うするため、余計なことは考えず指導を始め、ルーペアトが剣を振った時、彼らの態度は一変したのだ。

 ルーペアトの腕前を目前にしてわからされたらしい。


「剣の指導は順調だし、良い状態で出発の日を迎えられそうだね」

「もうすぐルーと暫く会えなくなっちゃうね…」

「全部終わらせて帰って来るよ」


 後数日で準備を終わらせて国を発つ。

 ハインツには数週間帰ることが出来ないだろう。


「寂しいけど、ハインツでずっと無事を願って待ってるから!」

「うん、よろしくね」


 休憩は終わり、それぞれやるべきことを再開する。


 ヴィズィオネアへ行くその日まで刻一刻と過ぎていき、残りの数日もあっという間に終わってしまい、ついに当日の朝だ。


「二人共、準備は大丈夫だね?」

「ああ、やるべきことはやった」

「準備も覚悟も出来てます」

「じゃあ行こうか」


 出発する日を知られないように、密かにハインツを発った。

 かなり早い時間のため空は薄暗く、他の者達はまだ眠っている頃だろう。


 馬車に乗り込み動き出すと、ルーペアトの鼓動が速くなった。

 覚悟はしていても、やはり緊張してしまう。


(大丈夫…大丈夫…)


 ルーペアトは静かに深呼吸をして落ち着かせようとしていたが、リヴェスはそれに気づいたのかルーペアトの手を取り口を開く。


「何があっても必ず守る。いくら不安になっても良い、だが俺もハルトも皆も居る、一人じゃないということだけは覚えていてくれ」

「…そうですね…ありがとう」


 リヴェスの言葉にルーペアトも落ち着きを取り戻す。

 着くまでの間も何度も入念に打ち合わせをし、準備は万全だ。


 そして三年ぶりのヴィズィオネアが見えてくる。

 ルーペアトが十五年間で見たことのないものがあるが、それはルーペアトが住んでいた辺りじゃないからなのか、それとも戦勝後に変わったのだろうか。

 どちらにしろ、遠くからでもハインツと全く違うのはわかる。


 門の前に着き、ティハルトが招待状を見せると門は開かれた。


(いよいよだ…)


 国内に入り街の全貌が見えた時、ルーペアトは強い衝撃を受けた。


「何で…こんなに…」


 街の状態は酷いものだった。道は整備されておらず、馬車の速度を落として走らなければ危険だ。

 壊れかけている家が何軒もあり、街の人達はハインツに住んでいる人より痩せて見える。

 とても戦勝した国とは思えない。


「これは酷いね…。まさかここまでとは思っていなかったよ」

「ここはまだ国境に近いからな。その代わり皇宮付近はかなり整備されてそうだ」

「民を大事せず皇室のことだけを考えるなんて、皇帝失格だね」

「本当に今皇宮に居る奴らは心底腐っている」


 ヴィズィオネアの惨状にハインツの皇族である二人は呆れて、怒りを露わにしていた。

 それはルーペアトも同じだ。

 国と仲間のために戦っていたのに、それが全て皇室だけの手柄にされているだなんて。


(…絶対に許さない)

読んで頂きありがとうございました!


次回は土曜7時となります。


いよいよヴィズィオネアへ入国しました!

物語の一番大事な部分に差し掛かったわけですが、それなのに週1投稿で申し訳ないです(_ _;)

けれども、8月から仕事が落ち着きますので、中盤くらいから投稿頻度が上がるかと思います!

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