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第65話 良い案だと思ったのに

 外で待機していたルーペアトとリヴェスは、話を終えたティハルトが商会から出て来るのを静かに待っていた。


(ノーヴァは敵か味方か、どっちなのかな…)


 ノーヴァが一番味方をしているのはウィノラのはず。だからウィノラとは直接関係のない、ヴィズィオネアに対してなんだって出来るだろう。


 ルーペアトが部屋に入った時、リヴェスはノーヴァにヴィズィオネアを潰す気なのかと問うていた。

 その言葉から考えるに、ティハルトとリヴェスとは違う計画がノーヴァにはあるということだ。


 ルーペアトは別に母国に愛国心があるわけでもないし、皇族に忠誠を誓っているわけでもないため、正直どうなっても構わない。

 ただ、一緒に戦っていた兵士達や何の罪もない人達が平和に暮らせて、義両親が安らかに眠ってくれていたら良いなとは思う。

 それが守られないなら、ノーヴァと争うことも視野に入れなければならない。


 色々考えながら待つこと数十分、ようやくティハルトが出て来た。


「…どうだった」

「そうだね…とりあえず、準備もあるし皇宮に向かいながら話そうか」


 ティハルトが乗って来た馬車に、ルーペアトと一緒に来たハンナを含む四人で乗る。

 乗って来た馬も馭者に引いてもらいながら皇宮へと向かう。


「早速本題に入りたいところだけど、何から話そうかな…」

「言える範囲のことは全て言ってくれたら良い」

「それがあまり無いというか、リヴェスにしか言えないことの方が多くてね…」


 ティハルトは苦笑いを浮かべ、どう話そうか悩んでいる様子だ。

 長い時間話し合っていたがリヴェスにしか話せないこととなると、ルーペアトには関係ない話が多いということだろうか。


「あの、私降りても大丈夫ですよ。皇宮まで走れますし」

「それは絶対に駄目だ」

「そんなに遠くないとはいえ、令嬢を走らすわけにはいかないよ」

「まず淑女が走るのはよろしくありません」

「あ…えっと、ごめんなさい…」


 リヴェスがティハルトを待っていた間、本当に不安な顔をしていたから、何を話していたか知りたくて仕方がないだろうと思い、出来るだけ早く聞けるように気遣ったのだが、三人に猛反対されてしまった。


「心配するようなことはないから大丈夫だよ。彼は僕ら側の人間だから」

「そこまで言い切れるものなのか?あいつは計画のためなら手段を選ばないつもりだぞ」

「僕にとっては味方だよ。でもリヴェスにとっては違うかもしれない、ということだね」


 ティハルトの言葉にリヴェスは難しい顔をしていたが、ルーペアトは納得出来たことがある。


(だからリヴェスにしか話せないことがあるんだね)


 リヴェスはかなりノーヴァを疑っているようだが、ティハルトが味方だと言い切るならノーヴァの計画も悪いことではないだろう。

 ルーペアトが考えていたノーヴァと争う可能性というのはなくなった。とりあえず一安心だ。

 リヴェスは全く安心出来ないだろうけども。


「ちなみにノーヴァの計画通りになった場合、ヴィズィオネアはどうなるんですか?」

「今よりも良い国になるよ」

「それなら良かったです」

「……ますます理解出来ない」


 リヴェスは頭を抱え出したが、ルーペアトに出来ることは何もないため困ってしまう。

 走って行くのが駄目なら、乗って来た馬で皇宮に向かうのは良いのだと思うが、先程あんなに反対されたためさすがに提案は出来なかった。


(どうしよう…どうにか出来ないかな…)


 ティハルトが話すことを悩むなら、こちらから質問して引き出すしかないだろう。

 聞いて答えてくれそうなことは何だろうか。


「…お義兄さんとノーヴァはいつから仲が良いんですか?」

「仲が良い…のかな?ただリヴェスの話をしたりするだけなんだけどね」

「そうなんですね。何だか二人には共通点があるというか、通じ合っている気がして」

「確かにそれはあるかも。彼が何をしたいのか、言われていなくてもわかっているところもあるからね」


 ティハルトは社交性が高く人付き合いが上手いのだろうと改めて思った。

 普通は言われなければ何も伝わらないし、わかることだって出来ないのだから。


「お義兄さんは凄いですね。私は相手のことを理解出来ないことが多いので羨ましいです」

「でも隣国の令嬢とも仲良くなっていたし、昔と比べたら変わって来ているんじゃないかな」

「イルゼと仲良くなれたのはウィノラのお陰ではありますが、確かに昔に比べたら感情が豊かになったと思います」


 あれから数年の間は感情を失っていたから、今こうして色んな感情を抱けているのはハインツで優しい人達と出会えたからだ。

 初めて夜会に出た日、リヴェスに声を掛けられていなかったから、今は何をしていただろう。


(…きっと一生過去と向き合わずに生きてただろうな)


 皆のお陰でルーペアトは前を向けたから、今度はリヴェスの背中を押す番だ。

 ティハルトに託された想いもあるし、リヴェスが両親のことに区切りをつけ、ノーヴァとの仲も取り戻せるように。


「もう皇宮に着くね」


 皇宮に着くのは思っていたよりも早かった。リヴェスが幼い頃、頻繁にノーヴァに会っていたくらいだから近いのは当たり前だが、それでも早く感じる。

 時間の経過を感じさせない程話し込んでいたわけでもないのに。


(結局私とお義兄さんで世間話しただけになっちゃったな…)


 でもルーペアトが聞けない話だから仕方ない。

 皇宮にも着いたことだし、二人にはゆっくり話し合ってもらわないと。


「私のことは気にしないで、納得いくまで話して頂いて良いですからね」

「ありがとう。でも出来る限り待たせないようにするよ」

「行ってくる」


 馬車を出た後、すぐに二人は皇宮へと入って行った。


読んで頂きありがとうございました!


次回は土曜7時となります。

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