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第64話 ノーヴァの計画

 ルーペアトとリヴェスが部屋を出て行って、部屋には静けさが残った。


「二人きりになったことだし、話し合おうか」

「あなたは僕の計画に気づいているでしょうに…、話し合う必要はありますかね?」

「一応聞いておくべきだと思ってね。こうなった以上、リヴェスに全く話さないわけにはいかないから」


 ティハルトはこの事態を予測していたとはいえ、ノーヴァにティハルトもわかっていたなんて言われてしまえばリヴェスに説明しなければならない。

 これからも兄弟仲良くしていきたいし、ノーヴァとの関係も今以上に悪くなってほしくもないから。


 ノーヴァは溜息をついたあと仕方ないですねと小さく呟き、物憂げに話し始める。


「リヴェスをヴィズィオネアの皇帝にし僕は宰相になる、これが僕の目的です」

「そうだとは思っていたけど、リヴェスは望んでいないんじゃないかな。リヴェスにもそのことを話してあげるべきだよ」

「断られるに決まっているでしょう」


 ティハルトが諭すもノーヴァはすぐに拒んだ。

 皇族ではなくなることを自ら望んだリヴェスを皇帝にさせることはかなり困難だろう。

 しかし、ルーペアトと結婚したリヴェスは皇帝になる資格がある。


「とは言っても、断られたとしてもリヴェスは皇帝になるしかありませんけどね。ヴィズィオネアの皇族から彼女を守れるのはリヴェスだけですから」


 ルーペアトがヴィズィオネアの皇族である以上、ティハルトが堂々とルーペアトを匿うことは難しい。下手したら国同士が争う火種になりかねない。


 ミランとルーペアト、どちらも皇族の直系血族だが人々の上に立ち国を治めるのは男のため、ミランの方が偉くなってしまう。

 そのため、皇族に加え英雄であったとしてもルーペアト一人だけではどうすることも出来ない。


 しかし結婚したリヴェスなら夫として妻を守ることが出来るし、ヴィズィオネアの皇族に仲間入りしたと言っても過言ではないのだ。


「二人は契約結婚だしいつか離婚するつもりだろうけど、僕はそのいつかは来ないと思ってるよ」

「確かに二人はお互いを大切に想ってはいるね。それが愛どうかはわからないけど」

「リヴェスが皇族になるのを拒めば彼女とは離婚して、彼女に別の男が婿入りしないといけないですよね?でもリヴェスは彼女が他の男の嫁になるのは気に食わないかと思いましてね」

 

 そもそもリヴェス以外に誰がヴィズィオネアの皇帝になるんだ、というところもある。

 今は公爵でも昔は皇族だったリヴェスの他に、皇族に婿入りする良い貴族の男が果たして居るだろうか。


 結婚したいと申し出る人は数多く居たとしてもリヴェスの身分には敵わないと思われる。

 それにルーペアトが一度離婚してしまったら、契約結婚とはいえ世間体が良くない。


「だから僕の計画通りに進めるのが一番良い方法だと思うのですが。招待のことも広めておいた方が何かあった時、ヴィズィオネアはハインツ全国民を敵に回すことになりますからね」

「それはそうだね。でもそれをリヴェスにどう伝えようか?」

「僕からは何も話すつもりはないので、あなたから上手く言っておいて下さい」

「僕から話すのは良いけど、二人共せめて一度は本音で話し合った方が良いと思うんだけどね」


 ノーヴァのリヴェスとは頑なに話さんとする姿勢には苦笑いを浮かべるしかなかった。


(上手く言うのも難しいところなんだけどね…)


 リヴェスはノーヴァとちゃんと話し合いたいと思っている分、ノーヴァから何も説明されないのは不満だと思う。


「じゃあお望み通り上手く言っておくから、代わりに僕を廃位させるようなことはしないと約束してくれるかな?この国を守ることが僕の償いだからね」

「僕はあなたを廃位させるつもりはありませんが…、約束はしますよ」

「なら良かった。実はリヴェスの身分を公爵に変更してないんだよね」

「はい?それは…むしろ良いことでは?」

「どうかな?」


 そう言い残し、ティハルトも部屋を出て行った。

 取り残されたノーヴァは暫く考えた後、ティハルトの約束の意味を理解する。


「そういうことですか…」


 いずれリヴェスをヴィズィオネアの皇帝にするなら、リヴェスの身分を変えていないことが明らかにされるだろう。

 それでリヴェスがまだ皇族の身分だと知った時、ノーヴァはティハルトを排除するだけでリヴェスを皇帝にすることが出来てしまう。


 それを防ぐためにティハルトはあんな約束をしてきたのだ。


「本当にあなたって人は…」


 そんな悪い事をする人間に見られているのかと、ほんの少し悲しいような気がした。


 別に後々知ることになってもティハルトを排除するつもりは全くないというのに。

 そんなことをしたらリヴェスの家族が居なくなってしまうし、完全に嫌われるだろう。


 ノーヴァはただこの国とリヴェスを想って動いているだけだ。


(…ウィノラに会いに行くかな)


 ノーヴァは出て行った三人に会わぬよう、裏口から街へと出てリオポルダ男爵家へと向かって行った。

読んで頂きありがとうございました!


次回は土曜7時となります。

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