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国の元最強女剣士は、隣国の契約夫に大切にされる  作者: 希空 蒼


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第63話 誰の味方なのか

 リヴェスは険しい表情をしているが、ノーヴァは何ともない顔でリヴェスを見つめている。


 ―ルーペアトが来る数分前、リヴェスは商会へ押しかけノーヴァを問い質した。


「おい、あの記事はどういうことだ。会議に来ないだけでなく、お前は計画の邪魔までするのか」

「連絡なしに訪ねて来て第一声がそれなんですね」

「聞いているのか?俺の質問に答えろ」

「怖いですねぇ」


 睨んで圧をかけるも、ノーヴァは全く怯むことなくいつもの調子だ。

 このままではこんなことをした理由を聞き出せるのか怪しくなってくる。


「リヴェスは記事を見てすぐにここへ来たんでしょうけど、僕が記事を書いた理由は考えたんですか?」

「考えた。でも俺はノーヴァの考えを理解出来るわけじゃない。だからこうして聞いている」


 どうしてか、いつもノーヴァはリヴェスに理由を考えさせようとしている。

 まるでリヴェスに自分の考えていることに気づいてほしい、そう言っているように思えた。


「俺はノーヴァが敵ではないと思ってる。お前はリオポルダ男爵令嬢のためなら何でもするし、悲しませることはしない。だからルーを困らせることもしないはずだ、違うか?」

「そうだね。彼女に何かしたらウィノラが僕を軽蔑するでしょう」

「俺の言葉を肯定しているが、それでもお前は記事を書いた。だがその気持ちは本心なのか?」


 ノーヴァはウィノラのため。

 ウィノラはルーペアトのため。

 だからノーヴァもルーペアトに何もしない。


 この三角関係が出来上がっているのだから、招待のことを口外しないよう言われたウィノラはルーペアトのために、ノーヴァにそのことをちゃんと伝えたはずだ。

 そしてノーヴァはウィノラの言うことを聞くはずだった。

 しかし記事を書いたなら、ウィノラの望みに背いたことになる。


「ウィノラを大切に想ってるのは本心で偽りなんてないよ。でも僕は自分の計画のためなら手段は選ばないから」

「そんなことして良いと思っているのか?お前は皇帝の命令に従わなかった。これは反逆と捉えられてもおかしくないだろう!」


 そしてリヴェスがノーヴァの胸ぐらを掴んだ今に至る。


 商会は防音機能が高く、ルーペアトが部屋に入る直前まで声は聞こえず状況がよく飲み込めずにいた。

 それでもリヴェスがここまで怒っているのだから、ノーヴァが何か良くないことを言ったのはわかる。


「反逆するつもりはないよ。僕だってこの国が嫌いなわけじゃないからね」

「それなら……ーっ!まさかお前…ヴィズィオネアを潰す気か?!」


(え…それはどういう…)


 ルーペアトは更に会話の内容が理解出来なくなった。

 ノーヴァから反逆という言葉が出て来た理由はわかるが、何故そこからヴィズィオネアの話が出て来たのか。


(リヴェスの言っていることが本当なら、ノーヴァはヴィズィオネアに対してどんな恨みがあるの?)


 しかしヴィズィオネアが恨まれる理由なんて山ほどある。ウィノラを脅したのだってヴィズィオネアの人間だったわけで、ウィノラ命であるノーヴァの怒りを買うのは必然だ。


「もしそうならどうする?リヴェスは止めるの?」

「当たり前だ。ヴィズィオネアがどんな国だろうがあそこは…あそこは…」


(ルーを育てた義両親との思い出が詰まってる…。それにいずれルーの国になるだろう。だから潰されるのも、ましてや争いを起こさせるわけにはいかないんだ…)


 リヴェスはルーペアトが部屋に入っていることに気づいていた。

 自分が皇族だと知らないルーペアトに聞かせるわけにはいかず、リヴェスは言葉が出なくなってしまう。


「…さっき皇帝の命令に従わなかったって言ってたけど、彼はこうなることは多少なりともわかっていたはずだよ」

「な……」


 その発言にリヴェスは驚いて、掴んでいたノーヴァの胸ぐらから手が離れる。

 ティハルトは会議の数日前にノーヴァと会ったと言っていた。


(二人で何を話したんだ…)


 ルーペアトもリヴェスと同じ気持ちだった。口外しないように三人に言ったのに、ティハルトはノーヴァが口外する可能性を考えてたとは。


 二人が呆然と立ち尽くす中、ティハルトが部屋に入って来た。


「…これは言い争った後…かな?」

「ハルト!こうなることがわかってたって、どういうことー」

「ごめん、詳しいことは後で話すよ。二人は外に出ていてくれるかな?彼に話があるんだ」


 リヴェスはティハルトが後で話してくれるとわかっていても、大事なことを秘密にされていたことにかなりショックを受けた。

 ルーペアトは小さく頷き、リヴェスの手を取り部屋を出て行く。


(…お義兄さんもノーヴァも、一体何を隠してるの?)


 たった一人の家族に隠し事をする程のこととは何なのか。そしてそれを知っているのは仲が拗れたリヴェスの友人。

 ルーペアトはとにかくリヴェスが心配で仕方がなかった。


 部屋を出てからもリヴェスは一言も発しない。放心状態で、ただ俯いてルーペアトに誘導されるがままだ。


「リヴェス…、きっと悪い話じゃないよ。大丈夫…」


 悪い話ではないと断言は出来ないが、ティハルトのリヴェスを想う気持ちは本物だと信じている。

 だから秘密にしていたのもリヴェスのためだったはずだ。

読んで頂きありがとうございました!


次回は日曜7時となります。

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