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第46話 皇宮での緊急会議

 まずは事の発端から聞くために、ウィノラがルーペアトとお茶会をした後に起きた出来事について話す。

 帰りの馬車で男に脅されたことを。


「それから私はノーヴァに助けを求めました。ノーヴァの商会は暗殺を依頼したりするところじゃないけれど、知らない人にはそう思わせることも出来るかなって思ったんです」


 お茶会の次の日、ウィノラはすぐにノーヴァの元へ訪れるのに、普段は質素な格好で出向くが、今回だけはローブを着て行った。


『あれ、ウィ…』


 ノーヴァがウィノラの名前を呼びそうだったところを、ウィノラは小さく首を横に振り阻止する。ローブを来てそんな行動をとったウィノラを見て、ノーヴァは何かあったのだと察した。


『…はじめましてお嬢さん、どんな依頼でしょう?』

『ロダリオ公爵夫人を指定の場所まで連れ出すのを手伝って下さい』

『なるほど、承りましょう』


 ウィノラは監視されていることに気づいていたため、ノーヴァに依頼する振りをしてルーペアトを連れて行く場所を教えた。


 ノーヴァはウィノラと何十年の絆があるため、ルーペアトを連れ出すことがウィノラの意思ではないことに気づく。ルーペアトに助けてもらってから、毎日のようにルーペアトの話をするウィノラが、裏切りも恩を仇で返す様な行為も絶対にしないと。

 だから場所を教えた理由はつまり、この日この時間にここへ行けという意味だろう。


 そして立てた計画が、ルーペアトを連れ出した後ノーヴァに助けに行ってもらい、その内にウィノラはリヴェスに伝えに行って合流する計画だった。

 そこで予想外だったのがミランの登場だ。合流が遅れたし、事が大きくなってしまった。

 しかしそのことについては言ってはならない。


「これが私とノーヴァの計画でした」

「そっか。じゃあ結果的にその計画は上手くいったんだね」

「はい」


 ウィノラは安堵した様子だったが、ノーヴァは浮かない顔をしていた。

 そのことに気づいたリヴェスはノーヴァに話を振る。


「お前がルーの元へ行った時何かあったのか?」

「いや、そういうわけじゃないさ。ただ…彼女が剣を扱えないただの令嬢、もしくは剣の腕が良くなかったなら、僕は助けることが出来ず死んでただろうなと思ってね」


 これはノーヴァとルーペアトにしかわからないことだが、ルーペアトが居た小屋に配置されていた騎士と、ミランに就いていた騎士だと、小屋に居た騎士の方が強かったのだ。人数は後者の方が多かったが、前者は少人数でも精鋭が集まっていた。


 剣よりも弓の方が得意なノーヴァにとって、人を庇いながら戦うのは無理だ。

 ノーヴァは以前ルーペアトが商会に訪れた際に剣を持っていたこと、そしてルーペアトを連れて来た傭兵が痛い目を見ると言われていたことを踏まえ、剣を扱えることに薄々気づいていた。

 そんな中、最近ヴィズィオネアの者がハインツを訪れ、英雄を探していると聞いてルーペアトの可能性はかなり高いと思っていたのだ。


「僕はヴィズィオネアの者から英雄を探すように前から依頼されてた。英雄だと確信していたわけじゃないけど、彼女が剣を扱えるのは知ってたから一人で行ったんだ。彼女が腕の良い剣士だったのは運が良かったね」


 ルーペアトが一人で騎士達をノーヴァから遠ざけることが出来たお陰で、ノーヴァは弓を撃ち続けることが出来たのだ。


「ノーヴァは私が英雄だっていつ確信したの?」

「あれほどの騎士が集まるということは、そうしないと抑えることが出来ない相手だからでしょう。それを彼らは最初からわかっていた、つまりその相手は英雄しかいませんし。普通の令嬢には数人居れば十分ですからね」


 これがウィノラとノーヴァが考えていた計画というのを皆わかったところで、次はルーペアトが話す番だ。

 とはいえ、それほど話すことはないが。


「私は小屋に閉じ込められていたんですが、中に居た男が自分達の主人に会わせるって言っていました。後、主人の顔を見たら驚くとも」

「その主人には誰も会ってないのかな?」


 ティハルトの問い掛けに対し、皆は縦に首を降る。  

 それからリヴェスはルーペアトが気づかない様に、口を開いて声に出すことなく「後で話す」とティハルトに伝えた。


「わかった。じゃあリヴェスの方はどうだった?」

「俺の方はただルー元に行けないよう足止めされてただけだ。今言えることはない」

「それなら次は今後どうするかだね」


 暫くは何もしてこないだろうとは思いつつも、気をつけなければいけないことがたくさんある。

 全員の身の安全と、ルーペアトに関する情報が漏れないようにすることだ。


「じゃあ私はこの先ルーと会うの控えた方が良いですか……?」


 ウィノラが子犬の様な目であまりにも悲しそうにしていたため、ルーペアトは即答した。


「私が守るから大丈夫」

「ウィノラには傭兵を護衛に就けるから気にしなくて良いよ」


 それに対抗するかのようにノーヴァが話に割って入って来た。


「君はウィノラが移動している時や街を歩いている時は守れないだろう?これは僕の役目なのでね」

「ならあなたが直接守ってあげたら良いのでは?」

「僕は弓専門だから」

「それじゃあ役に立たないでしょ」


 二人はウィノラをどちらが守るのか言い争いを始めてしまった。

 その様子にティハルトは笑っているし、リヴェスは何で言い争っているのか理解出来ない様子だ。

 ウィノラはというと、困った顔をしながらもルーペアトに守ると言われて嬉しそうにしている。


「ウィノラは傭兵の方が良いだろう?」

「え?そうだね、ルーに守ってもらうのは申し訳ないし…、夜会とか一緒に居る時に守って欲しい…ですかね」

「だよね」


(……負けた)


 ルーペアトは庭の手入れなど、屋敷でしなければいけないことがあるが、本気で護衛もするつもりで言ったのだが、友達という立場は幼馴染に負けてしまった。

 それは悲しいが過ごして来た時間が全然違うため仕方ない。


 それに、ノーヴァの態度でルーペアトは気づいたことがある。


(ノーヴァって…ウィノラのこと好きだよね?)


 幼馴染であるウィノラを助けてもらったからって、ルーペアトにも借りがあるとか言って助けてくれたし。そもそも助けに来たのもウィノラに頼まれたからだ。


 やけにルーペアトに意地悪なことを言って突っ掛かって来るのも、ウィノラを取られて嫉妬しているのではないだろうか。

 ウィノラは全く何気づいていなさそうだが。


「ならリオポルダ男爵令嬢のことは任せる。ルーは俺の部下を就けるが…何人が良い?」

「大人数で来られた時を考えると三人…かな」

「…そうか、わかった」


 ルーペアトが英雄だということも、本当の剣の腕もこの目で診てしまったために、今までの様に護衛を就けることを念押ししづらくなってしまった。

 リヴェスとしてはもう少し就けたいところだが、多くても返って邪魔になってしまうだろうから難しいところだ。ルーペアトは双剣だし、近くに人があまり居ない方が気にせず戦えるはず。

読んで頂きありがとうございました!


次回は金曜7時となります。

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