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第36話 ついに気づいてしまった

 訓練場からジェイと執務室に戻ったリヴェスは、今日の仕事で見聞きしたことについて考えていた。

 建国パーティーでティハルトに頼まれていたことを早速調べ始めたわけだが、今日調べただけでもおかしな点がいくつもある。


 ヴィズィオネアの商人がハインツに何度も出入りしているのは確かで、ちゃんとした手続きを終えて入国していた。

 しかし、品物を持って来た商人は居るが、中には何も持たずで商人として入国して来る者が居る。商人はハインツの品を売り買いしに来るが、買うにしても荷車くらいは持って来るはずだ。

 何も持っていないなら、商人ではない可能性が高い。


 そう考えたリヴェスは何も持たずに入国して来た者に監視をつけ、暫く様子を窺った。

 結果わかったことは、ヴィズィオネアに来て人を探しているということ。やはり、商人ではなかったのだ。


 監視していた内の一人を捕らえ話を聞けば、ヴィズィオネアの英雄を探しに来ていると言った。

 何故わざわざハインツに人をたくさん送り込んでまで探すのかと問えば、英雄がハインツに居るかもしれないからと探すよう頼まれたそうだ。

 それを頼んだ人物は居らず、ヴィズィオネアでは英雄を見つけた者に褒美として大金が贈られるようで、金目的で探しに来ていたらしい。


 つまり、ヴィズィオネアの皇族が英雄を探しているということになる。


(何故今頃になって探し始めたんだ?)


 英雄が誕生したのは三年前の出来事だ。それなのに今になってお金を使って大勢の人に探させている。

 あまりにも見つからないからその手を今使い始めたとは思えなかった。


「ジェイはどう思う?」


 今日のことで考えたことをジェイに全て話し、意見を求める。


「そうですね…。英雄は自分が英雄だとわかっていると思うんですよ。だけどここまで探しても見つからないなら、英雄は表に出たくなくてずっと隠れていることになりますよね」

「ああ、そうだな」

「絶対喜ばれるのに何で出て来ないんですかね?僕だったらすぐ名乗り出ますが」

「余程知られたくないのだろう」


 英雄が名乗り出れば、お金でも屋敷でも何でも手に入るだろう。それらを捨ててでも名乗り出たくない理由は一体何なのだろうか。

 ルーペアトがただの人殺しだと呟いていたように、英雄も称えられるようなことではないと思っているのかもしれない。


「赤髪で水色の瞳ならすぐに見つかりそうですけどね」

「俺は髪はただ血が付いていてそう見えただけで、本当の髪色は赤ではないと思っている」

「確かに!それなら赤髪を探し続けても見つからないわけだ」


 噂で聞いたハインツも、英雄が誕生したヴィズィオネアの人間さえも、英雄は赤髪だと認識している。

 本当は違う色なら堂々と街で過ごしていても気づかれないだろう。赤髪に水色の瞳の組み合わせが珍しくても、水色の瞳だけならハインツでは珍しくないから。


「じゃあ赤髪以外で水色の瞳を持っていて、剣の腕が良い人と言えば…、あれ?」

「ジェイも気づいたか」

「え…ルーペアト様が英雄かもしれないということですか……?」

「そうだ。俺はルーと初めて街に出掛けた時から疑っていた」


 子供と話していた時の反応、英雄について知りたがっていることを踏まえると、ルーペアトが英雄である可能性はかなり高い。

 それに、ルーペアトは建国祭について知らなかった。国の端に住んでいたからだと思っていたが、それも実はヴィズィオネアの生まれだから知らなかったのではないだろうか。

 ルーペアトが英雄だと辻褄が全て合ってしまう。


「そんな前から…。もしそうなら僕達はどうするべきでしょう…?」

「ルーは知られたくないだろうから、俺達はルーが英雄だと気づかれないようにするべきだな」

「じゃあルーペアト様が街へ行く時もヴィズィオネアの者に出会わないよう、気をつけなければいけませんね」


 誰もヴィズィオネアの英雄がハインツで公爵夫人になっているとは思わないだろう。

 だから気をつけていればこの先も見つかることはないはずだ。

 隠すのに良い方法はないかと考え始める。


 リヴェスは皇族がするべき勉強をちゃんと受けていないため、他国についてあまり詳しくない。

 ティハルトが教えてくれたことや、持って来てくれた本の内容を必死に思い出す。

 そして気づいてしまった。


「ジェイ…」

「どうしたんですか?!」


 ジェイが驚いて声をあげたのは、さっきまで普通に話していたリヴェスが目を大きく見開いて固まっていたからだ。


「ヴィズィオネアで金髪は皇族の証じゃなかったか……?」


 ルーペアトが英雄ならヴィズィオネア出身、そして髪は金髪。加えてルーペアトの血が繋がった両親の行方は不明で、預けられて育った。

 本当の両親は皇族の人間で、何らかの理由があってルーペアトを隠したのかもしれない。


「…っそ、そうです。ヴィズィオネアで金髪は…皇族です…」


 ジェイもリヴェスが考えていることに気づいたようで、かなり困惑している。

 でもまだそうと決まったわけではない。ハインツで生まれてヴィズィオネアで育ち、またハインツに戻って来た可能性がないわけではないからだ。

 本当の両親がとこで生まれたのかわからない以上、決めつけるのは良くない。それでも、ルーペアトが英雄だとしか思えず、リヴェスは頭を抱えた。


「ルーペアト様は自分が皇族だと気づいてないですよね?ヴィズィオネアで育ったなら金髪の時点で気づきそうですが…」

「そこが問題だな。ルーは本当に気づいていなさそうだ」


 周りの人に言われていてもおかしくないのに、未だに知っていなさそうなのは、周りは知っているけど黙っていたのだろうか。

 もしかすると皇室の人間は、英雄が赤髪ではなくルーペアトだとわかった上で探させているのかもしれない。


 その考えに至った瞬間、嫌な予感がした。


「ルーが危ない」


 ルーペアトの存在を知られてしまってはいけないと思った。見つかったら絶対にルーペアトはヴィズィオネアに連れて行かれる。


 守るためにヴィズィオネアの皇室の家系図を調べる必要がある。そうすればルーペアトと血の繋がった皇族、つまり両親もわかるはずだ。


 皇族の身分は捨ててしまったが、ティハルトのお陰で使える権限を使うためにリヴェスは皇宮に向かった。

 一生使わないつもりでいたが、ルーペアトを守るためには使うしかない。皇宮の書庫に行けば、ルーペアトがハインツの生まれかどうかも、ヴィズィオネアの家系図も全てわかるのだから。

読んで頂きありがとうございました!


物語の1番大事な部分に突入しまして、書いていてとてもわくわくして来ました^^

これからもっと楽しくなっていきそうです♪


次回は火曜7時となります。

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