番外編 絶対に結婚する!
ノーヴァ視点です
ハインツにノーヴァと共に帰って来たウィノラは、その足で両親に直談判することにした。
何か考えがあるわけじゃない。
自分の両親だし、言い寄ればいけると思っている。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ!だって両思いになったんだし、私が結婚するって言ったら止めないと思う」
「うーん。結構しぶといと思うけどね」
「ええー?」
自信満々のウィノラに対して、ノーヴァは今まで断られてきた経験からか不安を募らせていた。
屋敷に着き、ちょうど両親が執務室に居るとのことで突入する。
「ただいま!」
「おかえり…って何でノーヴァ君まで家に居るんだ?!」
「まあ、話がありまして」
ウィノラを送る時は玄関までしか行かないため、父親は嫌な予感がしているような表情をしていた。
「お父さん、お母さん、私…結婚する!」
「なっ…!!」
「あらまぁ」
(…直球過ぎでしょう)
前置きも無しに告げたウィノラには、さすがにノーヴァも驚いた。
これでは両親も頭が追いつかないだろう。
「隣国からやっと帰って来たと思ったら、ウィノラまでそんなことを言うのか…」
「私は賛成よ」
「おい!」
「だって、初めてウィノラが結婚したいと言ったもの」
「ううん…」
ずっとノーヴァが一人でウィノラとの婚約を迫っていたし、ウィノラがまだ気持ちに気づいていなかったのもあり、母親はウィノラの気持ちが聞けるまでは了承しないつもりだったようだ。
しかしそんな母親とは違って、父親は不満そうにしている。
そのためノーヴァが詳しく説明を始めた。
「色々片づいたので話しますと、まず僕達は両思いになりました。僕の身分についてリヴェス達やウィノラも知っています。そして商会長から隣国の宰相を務めることになった、というところですかね」
「つ、つまり、ウィノラも隣国について行くんだな…?」
「もちろん!」
「お父さん寂しい…」
父親はよっぽど寂しいらしく、泣いているふりまでし始めてしまった。
(…過保護が異常なんですよね)
ノーヴァ少しは呆れながら父親を見つめていた。
ウィノラが危なっかしくて心配なのはわかるが、そんなに信用されていないのかと、こっちが泣きたくなるものだ。
「寂しいならお父さんも一緒に来たら良いんじゃない?」
「その手があった…!」
「それはそれで面倒ですね」
「ちょっとノーヴァ!」
「隣国に住むとしても、家は別にしますから」
そこだけは絶対に譲れない。
ずっと親の目を気にして生活するのは嫌だし、堂々とイチャイチャできないからだ。
「一緒じゃないと反対すると言ったら?」
「この後ウィノラを連れて帰って来ません」
「それが許されると思ってるのか!ウィノラは嫌だよな…?」
「え、私は別に嫌じゃないよ?駆け落ちってちょっと憧れちゃうな〜」
「そんな……」
父親は項垂れてしまった。
ここまで押せれば後もう少しで了承してもらえそうだ。
「今まで何度も言ってきましたけど、これからも一生ウィノラを守り続けるので、ウィノラもこう言ってますし、了承して頂けますか?」
「…君ほどウィノラを想ってくれる人は居ないと思ってはいる」
当たり前だ。幼少期から共に過ごしてきて、他の誰かに負けるなんてあり得ない。
「だが…。ウィノラ、言わされてるわけじゃないよな?」
「違うよ」
「脅されてるわけでもないんだよな?」
「うん。私もノーヴァの昔の話とか聞いて、幸せにしてあげたいと思ったの。それにノーヴァは私が居ないと駄目みたいだし?」
「そうだね。もうウィノラが居ないと生きていけないよ」
ウィノラの幸せにしてあげたいという気持ちはとても嬉しかった。二人きりだったら抱き締めて愛でていたところだ。
ここまで言われても悩んでいた父親だったが、母親に「意地を張っていないで了承してあげて」と諭され、ついにゆっくりと頷いた。
「…わかった。二人がそこまで言うなら認めよう」
「やったー!!」
「ただし一つ条件がある。最低でも一月に一回は帰って来てくれないか」
「それなら良いよ!ね、ノーヴァ?」
「毎月仕事をまとめて終わらせる必要がありますが、まあそれでウィノラと結婚出来るなら良いでしょう」
「じゃあ決まりだね!」
やっぱり父親はなかなか首を縦に振ってくれなかったが、ウィノラと一緒だからか了承してくれて本当に良かった。
リヴェスの結婚式が終わったらすぐに籍を入れるつもりだ。
「良かったね!」
「ウィノラのおかげだよ。これからたくさん甘やかしてあげるね」
「ええ?!」
初めて見るノーヴァの眩しい笑顔に、ウィノラはこの先とんでもない日常が待っていることを悟るのだった。
読んで頂きありがとうございました!
念願の婚約ができてノーヴァはもうニッコニコです(*^^*)
次回は28日、日曜7時となります。




