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番外編 二人の甘い秘密

ティハルト視点です

 両親の影響でなかなか結婚について考えることができなかった。

 相手は皇后としての責務を果たしてくれ、共にハインツをより良い国にしていけると信頼でき、尚且つ母親とは違って人格者でなければいけない。

 けれどそんな良い相手が自分に勿体ない気持ちもあり、皇族の血を途絶えさせる手段も考えていたくらいだ。


 そんな多少の諦めを持っていたせいなのか、人生を共にできそうな令嬢が全く見つからなかった。

 皇后という身分、お金、自分の欲を満たしたい者ばかり。

 愛せる人に出会える日はもう来ないだろうと思っていた時だった。

 イルゼと出会ったのは。


 始めはシュルツ公爵の条件があったことで、イルゼに一応会ってほしいと頼まれたのと、パーティーでのパートナーが必要だったから会っただけで、リヴェスとルーペアトには申し訳ないが他の気はなかったんだ。

 でもイルゼが今までの令嬢と全く違ったのは想定外だった。


 あの初めて話した日。早く戻り過ぎると良くないと思い、シュルツ家の玄関で待たせてもらうことになった時。イルゼは僕が一人にならないよう残ってくれた。

 それは僕に気に入られたいから取った行動ではなく、ただの気遣いだと気づいた時にイルゼの心根にある優しさに胸が熱くなったのを覚えている。

 ルーと一緒に居る時とは違う楽しさがあった。


 イルゼはハインツを気に入ってくれていたし、元々ミランの婚約者候補だったこともあって皇后の素質がある。

 少しずつイルゼに惹かれている自覚があったものの、イルゼは自分のやりたいことをして生きたいと言っていた。自分はその邪魔になるのではないか、そう思って本心に気づかないふりをしようとしていたのに。


『あなたの思いやりに感謝する』

 その花言葉を意味する八本のピンクのガーベラを貰ったことで、諦めるのはまだ早いと気づかされた。


 それからパーティーを終え、翌朝に庭で二人の時間を過ごした時に自分の過去について話をした。

 自分の駄目なところや弱さを見せて失望されるかもしれないとしても、ちゃんと話さなければと挑んだ。

 返って来た言葉はとても温かいものだった。


 足りないところに気づいているならこの先成長していける。

 あなたが今まで頑張って来たから今のハインツがあると。


 絶対にイルゼを手放してはいけないと思った。この日は過去について話すだけのつもりだったのに、婚約まで申し込んでしまったわけだ。

 受け入れてくれたから結果的には良かったとはいえ、かなり急ぎすぎてしまったとは思う。



 それから婚約後、イルゼは何度かハインツに来て滞在してもらっていた。

 イルゼ専用の部屋を作り、公務も少しずつ手伝ってもらいながら日々過ごしていく毎日。


「そういえば、僕達の結婚はかなり遅くなってしまいそうなんだ」


 リヴェスやノーヴァの結婚があるから仕方ないが、残念そうに呟いた。


「私は構いませんわよ。むしろ良かったですわ。結婚するまでにハインツについてたくさん学べる時間を得られたのですから」

「そっか、ありがとう」

「こ、皇后になる身として当然ですわ」


 イルゼは仕事を覚えるのも早く、淑女としても人としても完璧だ。

 だけどちょっと素直じゃないところが愛らしい。


「…後継ぎもあなたの意向にお任せしますわ」

「良いのかい?イルゼにとっては早い方が身のためだろう?」

「何だかあなたは後継ぎについて深く考えていない気がしていたんですの。貴族に継いでもらうか、リヴェス様に皇帝の座を渡すつもりだったのではと思いまして」


 見事にその通りだ。イルゼの考えていることはお見通しだったが、イルゼも僕のことはお見通しだったみたい。


(嬉しいけど、ちょっと意地悪したくなっちゃうな)


「僕のことをそこまでわかってくれているなんて嬉しいな。僕との子供も欲しいと思ってくれていたんだね」

「あああ当たり前ですわ…!私はあなたの一番の理解者でありたいと思ってますし、愛する人との子だって…想像しますわよ……」


 イルゼが顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしながらも、嬉しいことを言ってくれるから可愛くて仕方ない。

 今の自分は間抜けな顔をしているだろう。


「一旦休憩にしようか。今はイルゼをもっと可愛がりたくて、良いかな?」

「そんなのはいとしか言えませんわ…!」


 隣に座り甘えた顔をしたものだから、刺激が強すぎたのかイルゼは悶絶していた。

 その姿も愛おしくて、イルゼに出会えて本当に良かったと思う。


「絶対に幸せにするね」

「…一緒に幸せになるんですよ」

「そうだね、ありがとう。愛してるよ」

「私も、ハルト…」


 二人しかいない部屋で秘密の甘い時間を過ごすのだった。

読んで頂きありがとうございました!


こんな会話をしていたとルーが知ったら大喜びします。でも花のことも、甘い時間を過ごしたことも、イルゼとハルトは秘密にしておきたい派。

だからルーは一人で不安になっていたという…

二人はラブラブだよ|*゜ノロ゜)ヒソヒソ…


次回は24日木曜7時となります。

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