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最終話 いつまでもあなたと幸せでいたい

 結婚式は皇宮内ある大広間で行われる。そこが一番ひっそりと式が出来る場所だったから。

 大広間というだけあって国内にある教会よりも広く、本来は夜会を行う場所だが結婚式を行うのにも向いているだろう。


 純白の衣装を身に纏ったルーペアトは別室で待機していた。今まで何度もリヴェスのパートナーなとして夜会に出席して、華やかな衣装を着てきたが今日が一番緊張している。


(皆似合ってると言ってくれたけど大丈夫かな…)


 今回の衣装はハインツで行ったパーティーで着た時よりも真っ白な衣装だった。白を基調として他の色も少し混じっていた服と違い、どこから見ても白色しかない。

 自分がこの穢れなき色を身に纏って良いのか不安だった。これまで兵士として手を汚して来た身だというのに。

 それはきっとリヴェスも同じ思いなわけで。この気持ちを吐露していいのか、ルーペアトは心の中で葛藤していた。


 鏡を見ながら溜息をつけば、リヴェスが部屋へと入って来る。


「暗い顔をしてどうした。何かあったのか?」

「うん…ちょっとね。ハインツのパーティーでリヴェスも言ってたでしょ?こんなに明るい服を着ても良いのかって」

「そうだな」

「私もこれまでのこと思い出してたら、こんなに真っ白で綺麗な衣装着て良いのかなって不安で。私は純真無垢じゃないから」


 リヴェスの顔を見たらこの気持ちを言葉にしてしまいたくなった。話しても困らせるだけだとわかっていても。


 だけど、リヴェスから返って来た言葉は意外なものだった。


「…俺もそう思っていたが、一つ思いついたことがある。白は何色にも染まっていなくて汚れのない色だが、染まっていないからこそ、これから俺達の色に染めていけば良いと。過去を白紙に戻すというわけじゃなく、ここが新しい始まりだと思うんだ」

「素敵な考えだね」


 その言葉でルーペアトの不安は一気に打ち消された。リヴェスが前向きになっているのだから、自分も過去のことばかり引きずってばかりいられないなと、気を引き締める。


「それに白は真実や平和の象徴でもある。俺達は過去のことを国民に伝えているし、この国を平和にしていくとも誓った。それだけで白色を纏って良い理由になると思わないか?」

「そうだね。ありがとう、励ましてくれて」

「ルーに笑顔が戻って良かった。皆の元へ行こう」

「うん」


 ルーペアトはリヴェスの手を取り、大広間へと向かう。

 大広間にはティハルト、イルゼ。それからノーヴァとウィノラ。そして家族であるエデルと両親が待っていた。


 皆が笑顔で迎え入れてくれ、ルーペアトも笑顔を返しながらも色々な気持ちが込み上げて泣きそうになる。


(今まで本当に色んなことがあったなぁ…)


 リヴェスと出会い契約結婚をして、ティハルトやノーヴァと出会い。大切な友人もできて、血の繋がった家族とも出会うことができた。

 あの日、契約結婚をすることにした自分を褒めたいくらいだ。


「二人共、凄く似合っているよ。契約じゃなくて本当の夫婦になったら式がしたいって、リヴェスは言ってたよね。本当に良かった、おめでとう」


 ずっと弟が幸せになることを祈っていたティハルトは、リヴェスが曇りなき笑顔でルーペアトと共に歩む姿に心から安堵していた。


「今まで気苦労を掛けて悪かった。もうハルトには自分の幸せを大事にしてほしい」

「そうさせてもらうよ。これからも二人の幸せは祈っているけれど、ルーが居るから大丈夫だね」

「はい。幸せになるので、イルゼのことよろしくお願いします」


 ティハルトには本当にお世話になった。契約結婚だったにも関わらず、家族の一人として温かく迎え入れ接してくれたこと、凄く嬉しかった。



「昔の関係に戻れて良かったです。僕の願いが叶いましたね」

「お前とは本当に色々あったな。だが昔も今も俺のことを想ってくれてありがとな」

「…友人として当たり前ですよ」


 ここ最近で一番変わったといえば、リヴェスとノーヴァよ関係だろう。あの一件からノーヴァはちゃんと本心をリヴェスに言うようになった。

 隠れてあれこれするのではなく、堂々と行動を起こすようになって、別の意味で困っている。

 二人が昔の様に楽しく過ごせているのなら良い。



 ルーペアトはリヴェスの元を離れ、ウィノラとイルゼの近くへ行く。


「ルーすっごくかわいい!おめでとう!」

「おめでとう、良かったわね」

「ありがとう。二人の結婚式も楽しみにしてるね」

「うん。私の方はノーヴァが浮かれ過ぎてるけど…」

「愛されている証拠でしょう」


 相当長い間片思いしていたわけだし、浮かれる気持ちはわかる。もう少し自重してほしいところだけど。


 最後にルーペアトはエデル達の元へ向かった。両親とは一緒に仕事をすることが増え、少しずつだが関係が築けてきている。


「エデル、準備してくれてありがとう。お母さん、お父さんも」

「姉さんのためならお安い御用だよ」

「本当に大変な思いをさせてしまってごめんね。誰よりも幸せを願っているから」

「お幸せにな」

「ありがとう」


 義両親と接していた時と同じように、いつか素を曝け出せるようになれたら良いなと思う。

 それが義両親の願いでもあるし、ルーペアト自身もそうしたいと思えたから。



 式を終え、ルーペアトは衣装のまま窓から国を一望していたところ、リヴェスに声を掛けられる。


「ここに居たんだな」

「うん。これからもっと頑張っていこうって、気合いを入れてたの」

「そうか」


 そうリヴェスが答えてから間が空いた後、何やらポケットから小さな箱を取り出し、ルーペアトに体を向ける。


「ルーと出会って愛を知ってから、俺はずっと幸せだ。だからルーもこの先幸せでいられるように頑張るし、死んでも愛し続けることを誓う。これからも側にいてほしい」


 結婚の誓いをしなかった分、ここでリヴェスは想いを伝えてくれた。

 箱にはお揃いの指輪が入っており、ルーペアトは嬉しさと驚きで口を覆う。


「…凄く嬉しい。私もリヴェスが大好き、愛してる。一緒に幸せになろうね」

「ああ」


 指輪をはめ抱擁をしながら、二人は熱い口づけを何度も交わす。

 朝まで愛を確かめ合い、身も心も結ばれたのであった。

読んで頂きありがとうございました!


本編完結です!

更新ができなかったり、頻度が落ちた中、ここまで読んで下さり本当にありがとうございます((* ´ ` )(* . .))”ペコリ


予告していた通り次回からは番外編が始まるので、そちらも楽しみにしていただけたらと思います。


次回は21日、日曜7時となります。

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