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第143話 義両親に伝えたいこと

 数日後、ルーペアトはリヴェスと共にエデルに案内されながら義両親のお墓へと向かっていた。


「屋敷の裏とはいえ、結構森の中なんだね」

「誰も見つけられないようにしたかったんだよ。僕の屋敷だって襲われる可能性があったからさ」

「そっか、そうだよね…」

「お墓があるところは手入れして広くなってるよ」


 ミランが皇后からエデルを守っていたことを知らなかったから、当時はいつ襲われてもおかしくないと思っていただろう。

 常に命の危険がある中、エデルはルーペアトのためを想って義両親の家を掃除したり、こうしてお墓も建ててくれていた。


「エデル、本当にありがとう」

「どういたしまして」


 もうエデルに何度感謝を伝えたかわからない。でもそれだけエデルにはとても感謝している。

 義両親も、ルーペアトと義両親の大切な場所も守ってくれたこと。


 色々思考を巡らせながら歩いていれば、ついにお墓が見える。

 名前が刻まれた墓石が二つ並び、その周りには花壇が置いてあり色とりどりの菊が咲いていた。この国辺りでは、お墓参りに菊を持って行くのが基本だからだろう。


「花も植えてくれたんだね」

「家に行った時、花が咲いていたから好きなのかなって思って」

「うん、義両親も喜んでると思う」


 菊の花が咲き乱れている中、ルーペアトは別の花を持っている。

 義母が好きだったブルースターだ。

 絶対に自分が育てたこの花を義両親に見せたかった。だから義両親のお墓があると知った日、リヴェスにハインツからブルースターを持って来てほしいと頼んだ。

 花が枯れぬよう、お墓参りに行く数時間前に早馬で騎士が取りに行ってくれた。


 そのブルースターを持って、ルーペアトは墓石に近づきそっと置く。

 六年経ってようやく会えることができた。


「お義母さん、お義父さん。ただいま」


 墓石だから当然、言葉は返ってこない。仕方がないけれどやっぱり寂しかった。

 生きていた時も話したいことがたくさんあったのに、何も伝えられないのが。


 でも涙は流さない。義両親が見たいのは私の泣き顔じゃなくて、笑顔だとわかっているから。


「あれから色んなことがあったよ。始めは辛くて苦しくて、この世から消えたかったけど、大切な人達と出会えて生きる理由も見つけられたんだ」


 ルーペアトは目を閉じて、これまでのことを思い出しながら墓石に語り掛ける。


「私は今、凄く幸せだよ。二人が居てくれたらもっと幸せだったけど…。お義母さん、お義父さん、これからもずっと大好きだからね」


 ルーペアトは笑顔で言葉を締める。話したいことを考えて来ていたけど、結局言葉が出てくるままに話してしまった。

 でもそれが義両親に一番伝えたいことだったのだろう。他の話はまた今度来た時に話せば良い。来年でも再来年でも、会いに来れるから。


 話が終わったことに気づき、少し離れていたリヴェスとエデルが戻って来る。


「想いは伝えられたか?」

「うん。ちょっと飛んじゃったけど」

「姉さんが嬉しそうで良かった。僕も頑張った甲斐があったよ」

「ありがとう。二人のことも紹介しないとね」


 エデルは墓石を手入れするために何度も訪れているだろうけど、自分の口からちゃんと紹介しておきたい。


「左に居るのが弟のエデルで、右に居るのが夫のリヴェスだよ。私も二人みたいに幸せな家庭を築けるように頑張るから、見守っていてね」

「必ず誰よりもこの先一生幸せにすると誓います。ルーがもう泣かなくて良いように」


 義両親に対する誓いなのに、なんだかちょっと恥ずかしくなってしまって顔が火照る。


 リヴェスは結婚前に義両親に挨拶するべきだけど、事後になってしまったことを少しだけ後悔していた。

 お互い両親のことを話したのは結婚してからだったし、事後でも報告出来ただけ良しとしよう。


「じゃあ戻りますか。今日は一段と仕事を頑張れそう」

「最近の姉さんはお墓参りのことばっか考えてたもんね」

「あはは…」


 仕事が少し手につかなくなっていたことをエデルに見抜かれていたようだ。


「無理はしないようにな」

「うん、気をつける」


 ノーヴァ達もそろそろ帰って来るだろうし、これからまた忙しくなりそうだ。

 特にリヴェスは忙しそうで、何か計画でも立てているのかもしれない。


「また来るね」


 そう言って手を振り、ルーペアトは皇宮へと戻って行った。

読んで頂きありがとうございました!


次回は9月14日、日曜7時となります。


残り2話で本編完結です!

そして次回の投稿以降は頻度を上げられそうなので、できれば9月中に本作が完結する予定になっております。

あと僅かな物語も引き続き楽しんで頂けたら幸いです(*^^*)

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