第140話 向き合うということ
翌日になり、執務室で兄弟三人集まって今後の予定について話す。
「僕はシュルツ家へ挨拶に行かないとだから、その後にまたここを発つよ」
「公務が忙しいのか?」
「そうじゃないんだ。公務をほとんど片づけて来たけど、結婚の関連でやることがあるからね」
「ああ…そうか」
ティハルトが結婚するのはまだ先だが、皇帝の結婚準備は時間が掛かるため、数ヶ月以上前から準備を進めなければならない。
それに、リヴェスやノーヴァがヴィズィオネアに住まうことで、ティハルトは新たに部下や補佐を見つけなければいけなかった。
「人手に困った時、言ってもらえれば紹介しますよ。今商会をまとめている人も優秀ですから、彼に頼るのも良いですし」
「ありがとう。何かあった時はそうさせてもらうよ」
「ところで、あなたに一つお願いがあるんですけど」
「ん?お願い?」
「僕が身分を偽っていたことを不問にして頂きたいんですよ」
ノーヴァも一応皇族とはいえ、長年皇帝を欺いてたことに変わりはない。ハインツの法では罰則があるため、まだ籍がハインツにあるノーヴァは該当してしまう。
「構わないよ。でも君がこの先身分を明かすつもりがないのなら、リオポルダ男爵には誓約書を書いてもらってね」
「あぁ~そうですね、書いてもらいましょうか」
リオポルダ男爵家がノーヴァの身分を明かさないための誓約書だ。
ウィノラと結婚するために必要なこと。
「手続きが大変そうだな。ノーヴァ達はハルトと一緒にハインツに戻ったらどうだ?」
「そうしましょうかね」
「じゃあ僕はシュルツ家に行って、また皇宮に戻って来るよ」
「わかった」
先にティハルトは自分が来た目的のために執務室を出て行った。
残ったノーヴァにリヴェスは真剣な表情で一言告げる。
「ノーヴァ、結婚はいつする予定でいるんだ?」
「許可が出たらすぐにするつもりだよ」
「来年にしろ」
「え、嫌ですけど」
「どう考えても兄弟で時期が被りすぎだ。このままだと今年中、毎日公務と結婚の準備を並行して行うことになるぞ」
まだまだ国の環境が整ってないというのに。結婚関連の仕事が多くなり、国のことに手が回らないなんてあってはならない。
半年以上は絶対に待ってほしいところだが、ティハルトの結婚式もあるとなればやはり、来年が理想である。
「国内と国外で一回ずつなら大丈夫でしょう?」
「いや、俺とルーがまだ式を挙げてないだろ」
「…………確かに」
結婚当初は契約だったことから式を挙げなかったがもう契約ない。
それにリヴェスはルーペアトと、ルーペアトの両親、義両親のために式を挙げたかったのだ。
「……わかりましたよ。つまり、街の整備が終わったらリヴェスが式を挙げる。その数ヶ月後に向こうの式。来年が僕らの式、って順番ですよね?」
「そうだ」
「仕方ないですね、迷惑掛けた分我慢するとしますよ」
「悪いな」
別に結婚自体をするなと言っているわけではない。
籍は入れてもらって構わないのだが、そこはノーヴァに任せるとしよう。
「まあ、ウィノラなら友達より先に式を挙げるなんて、と言いそうですしね」
「それはそうだな」
結ばれた順番的にも二人は最後だったし、ウィノラは最後が良いと言うだろう。
「僕もウィノラを呼んで戻る準備をしないとですね」
「俺は基本、執務室に居る。ハルトが帰って来たら呼んでくれ」
ノーヴァも執務室を出て行き、リヴェスは一人窓に目を向ける。
その方向にはエデルの屋敷があり、更にその奥に。
「…いつ挨拶するべきか」
式の前と後、どちらが良いかはルーペアトに決めてもらった方が良いかもしれない。
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次回は8月3日7時となります。




