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第139話 もう逃げない

 それから一台の馬車が止まり、中からルーペアトとウィノラが出てくると、ウィノラはすぐにノーヴァの元へ駆け寄った。


「本当に良かったぁ…!!」


 ウィノラは涙を浮かべながらノーヴァを強く抱き締め、再会できたことに歓喜している。

 その様子にはルーペアト達も自然と笑みがこぼれていた。


「心配させてごめん」

「もう絶対にノーヴァから離れないからね!嫌だって言っても、とこまでも追いかけてあげるんだから!」

「わかったわかった。もう逃げたりしないよ、約束する」

「うん、約束だからね!」


 二人の間に甘い空気が漂う中、ルーペアトは邪魔にならないようにリヴェスへ声を掛ける。


「大丈夫だった?」

「ああ、何とか。ハルトとミランが来なければ、俺はノーヴァと一緒に穴へ落ちていただろう」

「ええ?!怪我とかは…ない?」

「腕が少し痛むがこのくらいなら平気だ」


 ルーペアトはティハルトに言われて、どこに向かっているのかわからないまま馬車に乗っていた。

 だからここに大きな穴があることも、この穴がどういったことに使われていたのかも、全く知らないのだ。

 二人が間に合ってくれて本当に良かったと心底安堵する。


「戻ったら医者に診てもらってね」

「そうしよう」


 話も落ち着いたところで皇宮に帰るわけだが、どう帰ろうか。

 馬二頭に馬車一台。ノーヴァはここまで歩いてきたようだ。


「馬車はウィノラとノーヴァに譲ろっか。私はリヴェスと馬に乗れば良いし」

「良いの?ありがとう」

「お義兄さんは行きと同じで良いですか?」

「そのつもりだよ」

「マジか…」


 ミランはちょっと嫌そうな顔をしていた。確かに男同士くっついて馬に乗るのは嫌かもしれないが、どうすることもできないし我慢してもらうしかない。


「逃げるなよ」

「逃げねぇし。ただこの皇帝、ずっと話し掛けてくるんだよ!」

「おい、ハルトに指をさすな」

「ははは」


 嫌な顔をしたのはそういう理由なのかと思いながら、一体ティハルトはどんな話をしていたのか気になるところだ。

 二人はほとんど関わることはなかったと思うのだが。だからこそなのだろうか。


「この国のことを色々聞きたくてね。後はちょっとした意地悪だよ」

「お義兄さんが意地悪を…」

「彼のイルゼに対しての態度を許したわけじゃないからね」

「あぁ〜…」


 ルーペアトは納得した。そういえばイルゼはミランの婚約者候補として、パートナーを務めたりしていたんだった。

 イルゼはミランに困っていたと言っていたし、それをティハルトも知っている。今はミランも少し改心したと言えど、過去の行いは許せるものではないから、ティハルトの怒りを買っても仕方ない。


「何でシュルツ家の令嬢が出てくるんだ?」

「お義兄さんの婚約者になったからだよ」

「は!?何でそうなった?確かにあの時一緒に居たが、そんな関係になってたのか…」


 ミランはかなり驚いている様子だった。自分の婚約者候補だったイルゼが、事件後他の男とすぐに婚約したのが不満なのかと思いきや、意外にもそうでもなさそうだ。


「まあお似合いなんじゃね。俺には合わなかったけど、しっかりしてる奴だし」

「そうだね」


 ティハルトの声色は優しくて顔も笑っているけど、目が笑っていない。これはもしかすると、過去のイルゼをたくさん知っているミランに嫉妬しているのだろうか。


「帰りもいっぱい話聞かせてもらおうかな」

「最悪だ…」


 そうして、それぞれ山を降りていき皇宮へと戻れば、エデルが出迎えてくれた。


「おかえり。特に国民達から何も言われていないし、大事にならずに済んで良かったよ」

「あなたにも迷惑を掛けましたね、申し訳ありませんでした」

「ちゃんと謝れたんだ」

「まあ、かなり迷惑や心配を掛けたことは自覚しているので」


 エデルはいつも通りノーヴァに毒を吐いているが、本当は心配していたことをルーペアトは知っている。

 それでもきっとしばらくの間、ノーヴァはエデルにこき使われることになるだろうけども。


 その後はそれぞれやるべきことが違うため、食事も別々にとることになった。

 ルーペアトはリヴェスと共に医者の元へ向かい、診てもらったが大事には至らず、数日患部を冷やすだけで済むようだ。


 その間、公務に支障が出るかもしれないからと、書類関係の仕事はルーペアトやエデルが負担して、リヴェスには休んでもらうことにした。

 ここ数日はかなり公務に追われていたし、皇帝になったばかりと言っても、身体を壊してはいけない。休んで怒る人間は居ないのだから、ちゃんと休んでもらわなければ。

読んで頂きありがとうございました!


次回は20日7月となります。

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