第135話 居なくなりたいの真意
リヴェスは徹夜であれこれノーヴァを探し出す方法を模索し続け―
日が昇り、街の様子を見るためという体で騎士を派遣し、ノーヴァの捜索が始まった。
即位を終えたことで公務が増え、リヴェスは皇宮から動けずにいる。帰ってきた騎士から良い返事も聞けず、時間だけが過ぎていく。
このままでは国を出てしまうかもしれない。その前に何とか見つけ出さなければ。
(どこに行ったんだ…。ハインツに戻るつもりなのか?)
しかし、ノーヴァはもう商会をすでに離れた身だ。商会を起ち上げたのはノーヴァだから、再び商会に戻ることは可能だと思うが、すぐに居場所がわかってしまうところには行かないだろう。
ノーヴァは他国について詳しい。だからどこへ向かいそうなのか検討がつかなくて困る。
ウィノラなら何かわかるだろうか。
昼前になり、リヴェスはルーペアト、ウィノラ、そしてエデルと共に話し合う時間を作った。
「リオポルダ男爵令嬢はノーヴァが行きそうな場所は思いつくか?」
「う~ん…そうですね…」
「街は探しても見つからなかったんだよね…。隠れて過ごすことも慣れてそう。そういう仕事してたんだし」
自分で情報を集めたり、ミランと会ったりしていたのだから、身を隠すことは得意だろう。
「…街に居ないなら、ノーヴァは森とかに居るかもしれません!ノーヴァは狩りが上手だから、街で食料を調達しなくても自給自足が出来るはずなんです!」
「確かにそうだな。森の方は国境付近しか捜索させていないから手薄だ」
「後は…崖もあり得るのかな、なんて……」
ウィノラが小さく呟いた瞬間、皆の背筋が凍りついた。
ノーヴァが死を選ぶ可能性があってもおかしくない。だってノーヴァは、ウィノラが傷つくくらいなら居なくなりたいと言っていたのだ。
その居なくなるというのが"死"を意味しているのかもしれない。
「早く見つけないとまずいな」
「即位後で忙しいのに、何でこんな時に居なくなるかなぁ」
エデルはノーヴァに対して不満を募らせていたが、捜索にはとても協力してくれている。
リヴェスの大事な友人だからだろうか。
「恐らく俺を皇帝にする目的が果たされたし、俺達の負担は大きくなるがノーヴァが居なくても政治はできる」
そう、ノーヴァ一人が居なくなったくらいで、仕事が出来なくなるわけじゃない。リヴェスの部下もエデル達も優秀だし、ルーペアトも居る。
大変なだけで困りはしないはずだ。
でもノーヴァは幼い頃から共に生きてきた友人であり家族だから。居ない未来なんて考えられない。
「俺はお前を諦めないからな…!」
午後からはリヴェス達も外に出て捜索をすることにした。勿論、視察という体で。
その前にリヴェスは一人で牢へと向かった。この地について聞くなら彼に聞いた方が早い。
「今度はお前が来るのか」
「元気そうだな」
「そりゃ罪人にしては良い生活してるだろうよ」
「もっと罪人らしい方が良かったか?」
「……それは俺が決めることじゃねぇし」
どこか不貞腐れている様なミランは溜息をつきながらも、リヴェスに言葉を返す。
「で?今度は何を聞きたいんだよ。まさか、またあいつのこととか言わないよな?」
「まあ、ノーヴァに関することだが少し違う。俺はヴィズィオネアで暮らしやすい森や、静かに身を投げられる崖がないか聞きに来た」
ミランは以前、景色が良い場所を教えてくれたから、逆にそういった場所にも詳しいのではないかとリヴェスは考えた。
「あー、何となく察したわ」
今どんな状況になっているか理解したミランは考え始める。
その姿を見ていたリヴェスは少しミランを見直していた。始めはあんなに敵意を剥き出していたのに、今はこうして協力してくれている。
文句も全然言ってこないし、思っていたより早くミランが改心し始めていて驚いた。
何がミランをそうさせているのかわからないが、あの判決を下したことに後悔することはなさそうだ。
「南の方は治安も悪いし森も危ない。標高も低いから南は探さなくていい。東西は国境で壁があったり街があるからな、居る可能性は低いだろ。俺的には標高が高くて割と安全な北に居ると思う」
「北か…」
「皇宮は国の北よりだからな、北の方の森は整備してあるんだよ。後は人を隠れて殺すのに最適な場所がな」
まるでそれは今まで皇族がそこで人を殺めてきたかのような言い方だ。
とはいえミランが何人も手に掛けたのは知っているから今更驚いたりはしない。
「わかった。情報提供、感謝する」
「…早く見つかると良いな」
「ああ」
こうして人員を北に固め、皇宮の後ろを中心に捜索を開始した。
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次回は25日7時となります。




