第131話 もう泣かない
ルーペアトはウィノラを客室まで送っていき、泣き疲れたウィノラは眠ってしまった。
それから執務室に戻り、リヴェスとこれからどうするのか話し始める。
「かなり深刻だね…」
「ああ。ノーヴァの考えていることも全然わからない。気になる点はいくつかあるんだがな」
侯爵と男爵なら、元の身分が平民であったとしてもそこまで気にする必要がないと思うのだ。
それに、ノーヴァならウィノラのために伯爵でも男爵にでもなれるだろうに。侯爵位だって買ったものなのだから。
でもそうしないということは、爵位を買えても意味がなく、根本的な問題が解決しないのだろう。
ウィノラの両親が了承しないのも関係しているような気もする。
「リヴェスはノーヴァと、私はウィノラと同じ立場だよね。今は変わっちゃったけど、私も元々平民だったわけだし、気持ちはわかるよね」
「そうだな。俺も最初はルーが悪く言われることを気にしていた。だが、ルーは心も強かったし言い負かしていたからな…。いつからか、その心配はしなくなった」
「確かに…そうだった」
前がどうあれ今は公爵夫人だからしっかりしなければという気持ちと、リヴェスに恥をかかせたり、迷惑を掛けないために堂々としていた。
ウィノラはそういう性格ではなかったが、ノーヴァへの恋心に気づいた今なら、ウィノラも悪意に立ち向かえるのではないだろうか。
虐められていたウィノラが、酷いことを言われるよりノーヴァが居なくなる方が嫌だと言っていたのだから。
「ノーヴァの本当の身分って何だろうな…」
「両親は知らなくても、似た人に会ったことはないんですか?」
「紫の髪色はたまに見かけるが、琥珀色の瞳は…会ったことないかもしれないな」
「親族を見つけるのは難しそうだね」
きっと親族は居るとは思う。名簿を破ったのが本人でないとすれば、犯人は血縁者だろうから。
それについては一度ノーヴァに確認する必要がある。
「ノーヴァがヴィズィオネア出身なんてことはないよね?」
「それはないはずだ。間違いなくハインツで生まれている。誰かに破られていて名簿には載っていないようだが」
「えぇ?!ますます怪しい…」
「ハルトが色々調べてくれているから、またそのうち連絡が来るだろう。それまでは彼女に任せてみるのも良いかもしれないな」
「うん、落ち着いたらまた話してみるよ」
リヴェスとの話を終え、客室へ様子を見に向かう。
部屋に入るとウィノラは目を覚ましていて、こちらに背を向け寝台に座り窓から遠くを眺めていた。
「ウィノラ、大丈夫…?」
「ルー…。大丈夫だよ、もう落ち着いた」
振り返ったウィノラは目元が腫れて真っ赤になっていたが、落ち着いたという言葉に嘘はなさそうだ。
「目元、冷やした方が良いよ」
「ありがとう」
ルーペアトは冷えた布を渡し、ウィノラの横に腰を下ろす。
それからウィノラが話し始めるまで、ルーペアトは静かにじっと待った。
「…私ね、もう他の子に何を言われても大丈夫なの。ルーとイルゼを見てたら、そんなこと気にしなくて良いんだって。自分に自信を持って堂々としてれば良いってわかったから」
「うん」
「私は強くなったの。そのことにノーヴァは気づいてると思う。でも、それでもノーヴァは私が悪く言われることを気にしてるってことは、それだけの事情がノーヴァにあるってことだよね」
「そうだね」
ウィノラの話にルーペアトは耳を傾け相槌を打つ。ウィノラが話しやすいように淡々と。
「だったら、私はやっぱりノーヴァの不安を取り除きたい。あんなに辛そうなノーヴァ、初めて見たもん。あんな顔はもう二度と見たくない、笑っていてほしい。だから私も泣かない!次泣く時は嬉し涙って決めたの」
「うん。一緒に解決しよう。二人の絆は簡単に消えるものじゃない。ウィノラなら大丈夫!」
「よし!頑張るぞー!!」
元気が出たみたいでルーペアトは安心した。
一時は不安で仕方なかったけど、今はウィノラのおかげでやる気が満ちてくる。
ルーペアトだってノーヴァには幸せでいてほしい。
性格は合わないけど、一応友人ではあるから。
読んで頂きありがとうございました!
次回は4月6日、日曜7時となります。
ウィノラ復活(๑•̀ㅂ•́)و




