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国の元最強女剣士は、隣国の契約夫に大切にされる  作者: 希空 蒼


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第127話 もっと複雑な事情

 ノーヴァと共に執務室で公務をしていたリヴェスは、朝のことを気にしつつもやるべきことに集中する。

 ヴィズィオネアの職人に皇宮へ集まってもらい、ノーヴァに連れて来てもらった職人と一緒に、約一週間ほど講習を受けてもらうことに。

 この動きに職人達は困惑していたが、国のために行っていることだと理解してくれ、意欲的に取り組み始めてくれた。


 おかげで暫くは即位式の準備に専念することができる。

 少し時間が空いたため、リヴェスはノーヴァに話を聞いてみることにした。


「ノーヴァ、リオポルダ男爵令嬢についてだが、婚約の許しが出ないのか?」

「ええ、そうですよ。僕もウィノラと同じく爵位を買ったのはご存知でしょう」

「そうだな。でも今は侯爵位だろ、身分を考えれば申し分ないと思うが」

「両親は爵位を買った者同士が婚約して、ウィノラが今よりもっと批判されるのが嫌なんですよ」


 例えウィノラがどんな相手と結婚しようと、元々平民だから何かを言われることは変わらないのに。

 両親はそこばかり気にしているという。


 ウィノラもルーペアトと出会ってから変わって、いじめられることもなくなったし、はっきり言い返せるようにもなった。

 何も心配することはないだろうに、このままだとウィノラは結婚適齢期を過ぎてしまう。


「俺やルーペアトが男爵家に出向いて許可を取るわけにいかないしな。そもそもお前は彼女に想いを伝えていないんだろう?」

「ええ。…僕は悩んでいるんですよ」

「何にだ?」

「以前、僕にとって一番大切なのはリヴェスだと言いましたね。そして僕は宰相になると」

「ああ」


 それは事件があった帰りに馬車で話したことだ。

 仲直りした日の会話だからよく覚えている。


「その僕の計画にウィノラを巻き込んで良いのか、ですよ。ウィノラの両親はまだ僕が宰相になることを知りません。伝えたとして、僕を婚約相手として認めてくれるかもしれないし、ウィノラを連れて行くことを許さないかもしれない」


 ノーヴァの言う通り、両親がウィノラをヴィズィオネアに行かせることを許可するとは思えない。

 ウィノラ自身はルーペアトが居ることで、こちらに行きたがっていると思うが。


「一つ気になったんだが、そもそもなぜ俺をそこまで大切に思うんだ?俺もお前のことは大切な友人だと思っているが、一番大切なのはルーだ。愛する人が一番じゃないのか?」

「……僕の悩みはウィノラの両親だけじゃない。もっと複雑なんですよ」

「俺に教えられないくらい…か」

「リヴェスだからこそです」


(俺が関係しているのか?)


 自分のせいでノーヴァをこんなにも悩ませ、二人が婚約出来ずにいるのかという、そんな不安が脳裏を過る。

 しかしそんな不安はいらないとでも言うように、ノーヴァは強く否定した。


「リヴェスが直接関係しているわけではないので安心して下さい。勿論あなたの兄も」


 けれども謎が生まれるばかりで、ノーヴァの考えていることが全くもってわからない。

 一つ確かなのは、まだノーヴァが悩みを打ち明けられる心情ではないということ。


 大きな悩みを抱えていて、自分の中で決心がつくか、または解決するまで話してはくれないだろう。


「…わかった。お前が話して良いと思えるまで待つことにする。そうルーにも伝えておく」

「頼みましたよ。…リヴェスが居てくれて良かったです。では自分の仕事に戻りますね」

「ああ」


 ノーヴァは少し暗い表情で執務室を出て行った。


(あいつやっぱり元気ないだろ…)


 十年以上も関係をもっていて、あんなノーヴァの姿を見たことは一度もない。

 本当にどんな悩みなんだか。



 仕事を終えたリヴェスは朝行っていた通り、ルーペアトの部屋へ向かった。


「入るぞ。軽食も一緒に持って来た」

「ありがとう」


 ルーペアトは机に散らかっていた書類を片づけ、リヴェスから軽食を受け取った。

 ちょうど小腹が空いていたからとても助かる。


 リヴェスはルーペアトの隣に腰を下ろし、紅茶を一口飲んでから話を始めた。


「準備は順調に進んでいそうだな」

「うん。使う生地も決まったし、良い感じだよ」

「そうか」


 即位式の話も大事だが、ルーペアトはノーヴァのことが気になって仕方ないはずだ。

 勿体ぶらずにノーヴァと話したことを告げる。


「ノーヴァについてだが、俺達が思っている以上に複雑のようだ。だからノーヴァが話せる時まで待とうと思う」

「そうなんですか…。でもそれじゃあウィノラは…?」

「ノーヴァが現状何も出来ないなら、俺達が励ますしかないな」


(そんな…)


 励ましてあげることしか出来ない自分の無力さに悔しさが込み上げてくる。

 でも複雑な事情があるなら、ノーヴァのことをほとんど知らないルーペアトが力になるなんて到底無理だ。自分には無関係の話なのだろう。


「ウィノラの両親から許可が取れないだけじゃない、ってことだよね…」

「ああ。ノーヴァが話すのを躊躇うくらいの事情みたいだからな」

「ノーヴァの両親とか?」

「両親……」


(俺はノーヴァの両親について聞いたこと…)


 その時リヴェスは何かに気づき、思わず椅子から立ち上がった。

 ルーペアトに顔を向け、今リヴェスが気づいたことについて話し始める。


「ない…!俺はノーヴァの両親について聞いたことがない。俺が自分の両親を手に掛けたことを昔から知っていたから、ずっと両親の話を口にしてこなかったんだ。だからあいつは俺だからこそ言えないと言ったんだ」

「そうなの?!じゃあノーヴァの出生が関係してるのかな…」


 ノーヴァは爵位を買っている。すなわち、元々貴族ではなかったのかもしれない。

 リヴェスがノーヴァと出会った時は既に爵位を持っていた。当時、侯爵位ではなかったが。


「あいつに聞きたいところだが、恐らくそれがまだ話せないことなんだろう…」

「そっか…。ならノーヴァの不安を取り除いてあげないといけないね」


 ルーペアトの前向きな提案に、リヴェスの真剣な表情が柔らかくなった。


「そうだな。俺に任せてくれ。ノーヴァが俺を皇帝にするために頑張ってくれた分、俺も返さないとだからな」

「私もウィノラからもっと詳しく聞いてみるよ」


 ルーペアトとリヴェスは二人の関係が良い方向へ進んでいくことを願って、力を合わせて解決へと導くことに決めた。

 二人が自分達を応援してくれたから。何より、大切な友人だから。

読んで頂きありがとうございました!


次回は23日、日曜7時となります。


次話はノーヴァ視点のお話です(っ˘ ꒳˘c)

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