表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/149

第125話 公務から準備まで大忙し

 皇宮へ到着したその日はゆっくりと過ごして身体を休め、次の日から本格的に準備や仕事が始まった。

 まだ即位していないが、公務はリヴェスとルーペアトが先導していかなければならない。


「なるべく早く即位式を開かなければ、次の皇帝と皇后が決まっていても、今の状況は国民も不安だろう。だが、環境や街を整備することをできるだけ優先したい」

「リヴェス義兄さんの意見には賛成だよ。でも皆今まで同じ造りの家ばかり作ってきているから、腕は良くても今より頑丈でしっかりした家を作るのは難しいね。職人達に教えるところから始めないといけない」

「そうか…悩ましいな」


 ハインツから職人を連れてきて指導させることは可能だが、ハインツのやり方でヴィズィオネア染めたくはなくて、ヴィズィオネアらしさを残したい。

 多く居る職人に建設方法を教えるのも、数々の家を修復するのも、資材を集めるにもかなり時間を有する。一ヶ月は掛かってしまうだろうか。


「先に即位式を済ませた方が良いな。同時進行で準備を進めていれば、即位式の準備が先に終わるだろう」

「その方針に決定だね。じゃあ僕は貴族達にこのことを伝えてくるよ」

「ああ、気をつけて」

「いってらしゃい」


 本当にエデルは頼りになる。誰かさんは皇宮にも来ないし、連絡すらない。どこで何をしているのやら。


 それぞれ役割を決めて準備を進めるが、ルーペアトには早々問題が起きた。


「即位式で着る衣装を作りましょう」


 そうハンナに告げられルーペアトは動きが停止する。


(また衣装…)


 ついこの間作ってもらったばかりなのに、また作らなければならないのかと。

 服なんて数着あれば一年を過ごせるのに、イベント毎に衣装を新調するなんて勿体ないと感じてしまう。


「今回は皇后としての威厳を示すため、これまで以上に派手でなければなりません」

「えと…つまり、宝石もいっぱい付けて布もたくさん使うってこと…?」

「勿論です」


 ルーペアトは意気消沈して肩を落とす。

 貯金があるとはいえ、そのお金は国を良くするために使いたいのに、衣装にお金をかけなければいけないとは不本意だ。

 仕方のないことのだが、やるせない。


「街でお金を使えば、それだけ国民が豊かになります。貴族がお金を使って経済を回していかなければならないのです」

「そっか…そうだね。商品が売れてお店が儲けていないと、お店を閉めないといけなくなって仕事も失っちゃうもんね」

「はい。ですから街でたくさんお金を使いましょう」


 貴族、皇族として、有り余ってしまっているお金は気兼ねなく使っていこう。

 自分のためではなく、国のために。


 そう思うと俄然やる気が出てきて、衣装を考えるのが捗っていく。ハンナと一緒に考えれば、良いものが出来ること間違いなしだ。


 数時間経っていることに気がつかないほど没頭して製作に励み、いつの間にか夕食の時間になっていた。


「もうこんな時間?!食堂に行かないと、二人共待ってるかも…!」

「いってらしゃいませ」


 ルーペアトは急いで食堂に向かっていた途中で、リヴェスと出会う。


「もしかして呼びに来た…?」

「ああ。だが全然待っていないからそう急がなくても大丈夫」


 リヴェスはルーペアトが待たせてしまったのではないかと、心配していた気持ちを察してフォローしてくれた。

 それに、エデルも気を遣ってリヴェスに呼びに行くよう言ったのだろう。


「ありがとう。衣装に夢中になっちゃって」

「それは良いことだな。どんな衣装にする予定なんだ?」

「やっぱりヴィズィオネアは金色が皇族の証みたいだし、衣装や装飾品も金をたくさん使おうって話になったの。使い過ぎると派手だし眩しいから、調整が難しいところだけど頑張るよ」

「調子が良さそうで何よりだ。完成楽しみにしてる」


 食堂に着くとやっぱりエデルは座って待っていた。


「待たせてごめんね」

「気にしないで!姉さんを待つのは好きだから」

「そう?ありがとう」


 エデルは今までルーペアトに会えなかった分、待っていれば必ず来るという確信がある今は、その待っている時間も好きらしい。


 二人も席に座り食事が始まったところで、リヴェスが話を切り出した。


「ノーヴァが二日後に皇宮へ来ると連絡があった」

「あの人やっと来るんだ」

「もっと早く連絡してくると思ってた。リヴェスの宰相になりたいとか言ってたのに」

「商会の後継者を探すのに手間取っていたのかもしれないな」


 ハインツでは大きな商会だし、新聞も発行しているから、そんなすぐに辞めることが出来ないのだろう。

 とにかく落ち着いたのならよかった。


「私の方も連絡は来てないし、ウィノラは一緒に来ないのかな…。ノーヴァが忙しかったなら、ウィノラとの関係も進展してなさそうだし」

「今回はノーヴァ一人だろうな。婚約や、彼女がこちらに来ることに関しては、恐らく両親の許可が出ないのだろう」

「そういえばウィノラの両親は過保護だって言ってたな」


 早くウィノラに告白すれば良いのにと思っていたが、そういう事情があったのかと少し申し訳なく思う。

 まあ、両親に許可されないノーヴァに問題がある可能性もあるが。


「あの人も大変なんだねー。僕は結婚なんてしないけど」

「しないの?」

「だって今こうして暮らすことが僕の幸せだし、姉さん達の子と継承権争いはしたくないでしょ?」

「う〜ん…、私はいつでもエデルの意思を尊重するよ。例え結婚して子供が生まれてもね」


 どちらにも子供が生まれたら、貴族達がどちらかにつくことになって派閥争いが起こるけれど、そうなった時はどうにかすれば良い。

 自分の子供が皇帝になりたくないと言うかもしれないし。平和に楽しく暮らせるのが一番だ。

読んで頂きありがとうございました!


次回は16日、日曜7時となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ