第118話 傷を癒せるのは貴方だけ
パーティーは大成功に終わり、リヴェスが敬遠されることもなくなって、両国がより良い国になっていくことだろう。
そしてルーペアトとリヴェスは屋敷へ帰る準備をしていた。
「泊まっていっても良かったのに」
「俺達が泊まれば皇宮の使用人がより大変になるだろ」
パーティーの片付けを今も使用人がしてくれている。そこにリヴェスとルーペアトの給仕や、部屋の準備という仕事まで増えてしまっては、使用人達の睡眠時間が少なくなってしまう。
せっかくおめでたい日なのに仕事とはいえ、使用人だけ大変な思いをさせるわけにはいかない。
それだけでなく、別の理由もある。
今夜、イルゼは皇宮に泊まっていくのだ。始めはイルゼも断っていたものの、ティハルトが外も暗いし皇宮が一番安全だからと念を押し、いつも通りイルゼが折れた。
これは二人きりにさせる絶好の機会であり、ルーペアトはその理由も相まって屋敷に帰ることにしたわけだ。
(次会う時に色々聞き出さないとね)
ルーペアトは今、生きてきた中で一番悪い顔をしているかもしれない。
「二人らしいね。じゃあ、また」
「ああ」
「お義兄さん、イルゼ、今日はありがとう。またたくさん話しましょう」
「そうですわね」
馬車に乗り込んだルーペアトは二人に見送られながら皇宮を後にした。
姿が見えなくなったところで、正面に座っているリヴェスに視線を移し口を開く。
「今日は凄く緊張したけど無事終わったし、楽しかったですね」
「そうだな。皆のおかげだ、感謝してもしきれない。俺がハルトの弟だと公表することは一生できないと思っていたのに…」
ここ数カ月前までは想像すらできなかった未来。表で生きることは叶わない、許されないと思ってたリヴェスにやってきた奇跡。
てもそれはこれまでリヴェスがどんなに辛いことがあっても、努力して国のために動いてきたからこそ起きたこと。
「皆の力でもあるけれど、一番はリヴェスが頑張ったからですよ。もっと自分を褒めてあげて」
「自分を褒める、か…」
今までのように生きることが当たり前で、それが自分のやるべきことだからと、自分を褒めたことなんて一度もなかった。
そもそも褒められるようなことをしたとも思っていない。
ずっと自分を卑下してきたリヴェスにとって、自分を褒めるという肯定をいきなりするのは憚られる。
「リヴェスが自分を褒められないなら、私が褒めます。リヴェスが当たり前のことだと言って、成し遂げてきたことは凄いことです。出会った時から私はずっと助けられきたし、リヴェスが居てくれて良かったと思いました。私が思うくらいですから、屋敷の人達も騎士の人達も、皆同じことを思ってますよ」
両親を手に掛けて、皇族の身分を捨てようとも、国のために生きるという皇族としての務めをリヴェスは果たした。
ルーペアトは戦勝に導いたものの、その後兵士の役目を放棄し、ハインツまで来てしまったのに。
リヴェスとルーペアトは似ているようで正反対なのかもしれない。
だからこそお互いに尊敬して、惹かれ合ったのだろうか。
「リヴェスは偉いです、よく頑張りました。でもこれからは一緒に頑張りましょう。これまでリヴェスが背負ってきたものを、私にも背負わせて下さい」
話している中で今までのことを思い返していたからか、途中で涙を流しそうだった。
必死に堪えて何とか最後まで言葉を紡ぐことができたが、リヴェスが綺麗な涙を流していてルーペアトも堪えられなくなる。
リヴェスが涙を流す姿は初めて見た。
それたけ自分に厳しく生きていたからだろうか。ルーペアトは酷く胸が苦しくなり、リヴェスを抱き締める。
「…ありがとう。ルーに出会えて本当に良かった。俺と共に生きることを選んでくれて、俺のことを想ってくれて、本当に…ありがとう…」
「それは私も同じこと思ってますよ。助けてくれたあの日から、ずっと大切にしてくれてありがとう」
お互い抱き締める腕に力が入る。
体温で温まり身体を少し離した二人は見つめ合い、熱い口付けを交わす。
それぞれ別の場所で全く違う生き方をしていた二人。でも相手を知れば知るほど共通点があった。
両親を失っていること、国のために戦っていたこと、皇族であること、大きな心の傷を負っていること。
そんな二人を救ったのは、目の前にいる愛しい人。
もし、ほんの少しでも違う道を選んでいたら、出会うことはなかった。
もう離れられるはずがない。人生において、なくてはならない存在だから。
〜生きていてくれてありがとう 愛してる〜
読んで頂きありがとうございました!
最終回みたいてすがまだ続きますからね*^^*
最近はイルゼとの会話が多く、ルーとリヴェスが長く会話しているところがありませんでしたね。
次話がイルゼの話になるので、今話でイチャイチャしてもらいました(っ˘ ꒳˘c)
次回は20日木曜7時となります。




