第114話 お揃いの衣装
今回のパーティーはリヴェスが主役のため、リヴェスとルーペアトの衣装は白を基調とした明るい装いだ。
準備期間が短かったことで、建国祭時のように衣装をデザインすることが出来なかったが、衣装は最高の出来で満足している。
「こんなに明るい衣装を着るのは初めてだ…。ルーはいつもに増して綺麗で似合っているが、俺に似合っているのか不安だな」
昔からティハルトが明るい色、リヴェスが暗い色を着ることが当たり前になってしまっていた。
それにリヴェスは不吉だと忌み嫌われていたし、表に出て生きていなかったのもあり、リヴェスは自分が明るい色を着て良いのか、強い不安を抱いていたのだ。
「大丈夫、とても似合ってるし皆もそう思ってくれるよ」
「…ありがとう。それなら良かった」
パーティーは昼から開催のため、二人は朝の内に馬車で皇宮に向かった。
早めに屋敷を出たことで、会場でもある皇宮にまだ他の人達は集まっていない。
中に入るとイルゼとティハルトの姿が見えた。
「おはようございます」
「おはよう。わあ〜リヴェスが明るい色着てるの、想像以上に良いね」
「そんなに良いのか?」
「うん。だって衣装が明るい方が、リヴェスの黒髪と紅い瞳が映えるからね」
「…そうなんだな」
ルーペアトはティハルトの言葉に賛同し、何度も頷いていた。
リヴェスはそっぽを向いてしまったが耳が赤くなっている。褒められて照れてしまったのだろう。
その姿が可愛いなんて思いながら、イルゼの衣装について触れる。
「イルゼの衣装はさすがお義兄さんのセンスだね」
「ええ、素敵なドレスを贈って頂いてとても感謝しているわ」
イルゼの衣装は白色で、金色の装飾や桜の花が散りばめられているが、主役であるリヴェス達より目立たないよう、華やかではないがイルゼにとても似合っている。
「白い衣装ってことは、やっぱりイルゼがお義兄さんのパートナーだよね?」
「最初はお断りしたんですのよ。今回のように大事なパーティーで、私がパートナーを務めるわけにはいきませんと」
ヴィズィオネアでの夜会はまだしも、ハインツのパーティーで主役がハインツの皇族なのだから、イルゼがそう思うのも無理はない。
ティハルトは兄弟であることをより示すために、リヴェスと似たデザインにしてあるので白色。
つまり、四人揃って白を基調とした衣装ということだ。
「結局お義兄さんに言いくるめられたんだ」
「ええまあ…、って何にやにやしているのよ?!」
「気にしないで」
イルゼとティハルトの仲が深まっているのが嬉しくて、つい頬が緩んでしまった。
パーティーの最中は気をつけておかないと。
「ハァ…。パートナーになったのはヴィズィオネアとの友好関係を示すためよ。彼が即位しても私達ヴィズィオネアの貴族は、そのことに賛成している意を表すためにね」
「そうなんだ」
確かに元々関係が友好とは言えなかったから、リヴェスが皇帝になった後、問題ないことを示す必要があったのだろう。
それから暫くして、リヴェスが弟であることを発表する場所へ移動する。
この部屋にあるバルコニーは会場全体が見渡せる場所だ。
「まさか、私はずっと陛下の側にいるんですの…?!パートナーだからとそこまでする必要はありませんよね?」
「君をハインツの貴族しかいない会場で一人にするなんて出来ないよ」
「ウィノラが来るなら彼女と一緒にいられますでしょう?」
「彼女のパートナーは来るかどうかわからない上に、来たとしても君のことを第一に守らないからね」
「そうですけど…」
ルーペアトは二人の様子を見ていて、パートナーを務めるかどうか話した時も、今と同じように言いくるめられたのだろうと察した。
「それに、悪い虫がついたら困るからだよ」
「虫?確かに花に誘われて集まって来てしまったら、せっかくの衣装が台無しになってしまいますね」
「そう、だね」
(違う、そうじゃないよ…虫はイルゼに言い寄るだろう男達のことだよ…)
イルゼの反応にティハルトが困惑しているところ、ルーペアトは心の中でツッコミを入れていた。
これは後で教えてあげなければ。
「わかりましたわ…。ここに居るのが良いと仰るなら、その言葉を信じます」
「ありがとう。それじゃあそろそろ時間だし、始めよう」
「「はい」」
気を引き締めて、四人はバルコニーへと足を踏み出した。
読んで頂きありがとうございました!
次回は水曜7時となります。




