第102話 最高な日を締めくくる
想いを伝え合った二人は、幸せな気持ちでエデルの屋敷へと向かって行った。
馬車の中でも楽しく過ごしていたが、まだ今夜の楽しみは終わらない。
屋敷に着くと皆が出迎えてくれて、祝福までしてくれた。
「おかえり!姉さんとリヴェス義兄さん、おめでとう!」
「ありがとう」
「今日もご馳走を用意してあるからね」
「それは楽しみだね」
エデルはリヴェスとティハルトを慕っている様子だったし、契約ではなく本当の夫婦になってくれたことが嬉しいようだ。
「リヴェスとルーペアトの気持ちが通じ合う日をどれだけ待っていたことか…、おめでとう」
「本当にそうです。リヴェス様から契約結婚をすると聞いた時は驚きましたが、ルーペアト様にお会いしてから、契約ではない夫婦になってくれたらと思っていました」
ティハルトの言葉に、ジェイが涙を浮かべながら首を激しく縦に振って賛同していた。
「色々心配かけて悪かった」
そんなジェイをリヴェスがなだめていれば、ハンナがルーペアトの元に来て手を握る。
「この時を私達は待ち望んでおりました。これからもルーペアト様の侍女として、精一杯仕えて参ります」
「ありがとうハンナ。これからもよろしくね」
ハンナは元々、侍女の仕事をしていたわけではないのに、これからも仕えてくれることが嬉しかった。
身の回りのお世話や街に行く時なども一緒で、リヴェスと結婚してから過ごした時間が一番長いのはハンナだ。
ハンナは鋭いし賢いから、きっとルーペアトの心情の変化にも気づいていたはず。
そんなハンナからの言葉だからこそ、ルーペアトも瞳が潤んできてしまう。
祝福を受け良い雰囲気の中、一人だけ落ち着いた様子で口を開いた。
「まあ、僕はこうなると思ってましたけど」
「自分がまだウィノラと結ばれてないから嫉妬してるの?」
「してませんよ?僕だって次ウィノラと会う時に気持ちを伝えると決めてますし」
「ウィノラはノーヴァの気持ちに全く気づいてないみたいだけど?ウィノラは今ハインツで一人だし、運命的な出会い果たしてるかもね」
「あり得ませんね。ウィノラに男が近づいて来ないよう、常に見張らせてますから」
(いや、それは怖い…)
ノーヴァのウィノラに対する独占欲が強すぎるあまり、ルーペアトは少し引いた。
その独占欲が愛されていると感じるから嬉しいという人もいるだろうが、ルーペアトは理解できないようだ。
ルーペアトとノーヴァの話を聞いていたリヴェスは、そういえばと思い出したようにノーヴァに話し掛ける。
「リオポルダ男爵令嬢を一人にして良かったのか?政治について学んだとはいえ、一人では不安だろう」
「別にウィノラがそこまでしなくても問題ないですよ。リヴェスもそう思うでしょう。それに、ね?」
ノーヴァの視線に気づいたティハルトが、三人の元に来て会話に混ざる。
「そうだね。皇宮には優秀な者達がいるから大丈夫だよ」
「まあ…確かにそうだが…」
「え、じゃあ何のためにウィノラは屋敷で勉強してたの?」
話を聞いていてルーペアトはそのことが引っ掛かった。
ウィノラと商会に任せなくても良かったなら、何故ウィノラを屋敷に呼んでまで勉強していたのか。
「え?だって僕はリヴェスの宰相になりますし、ウィノラもヴィズィオネアに来ることになるでしょう。そうしたら、ハインツで得た知識はヴィズィオネアでも役に経つじゃないですか」
「そうだけど…」
「ハルト、俺もそれは聞いてないぞ」
「うん、僕も今初めて知ったね」
「「え」」
てっきりティハルトとノーヴァの裏計画だと思っていたのに、初めて知ったという言葉を聞いてルーペアトとリヴェスは同時に固まった。
「僕が不在の間、国は商会に任せてほしいと言ってきたのも彼だよ。リヴェスの宰相になりたいのは知ってたから、そのために自分の力量を試したいのかなって思ってね。あと、リヴェスとルーペアトに政治を学んでもらうことは決めてたし、そこに一人増えても変わらないから承諾したんだけど、彼がそこまで考えてたのには気づかなかったよ」
まさかティハルトが気づかないほどの計画を、ノーヴァが立てていたなんて。
ウィノラがヴィズィオネアに来る前提で計画しているのが気になるが、今回はノーヴァが一つ上手だったようだ。
「力量を試す必要ないですよ。僕は宰相に向いている自覚ありますからね」
かなり腹が立つ言い方だが、事実ではあるから何も言い返せない。
だがしかし、唯一言い返せる人物がここにはいた。
「いや、僕の方が向いてるから。姉さんもリヴェス義兄さんの補佐も僕がするし」
「僕はあなたよりも長く生きてますから、知識も豊富ですよ?」
「幼い頃からこの仕事してるし、皇太子の仕事までしてたけど?それに僕は仲を拗らせないし、人脈も人望もあるから」
「幼い頃ってまだ子供じゃないですか」
「子供扱いするな!」
「まあまあ、気持ちはわかるけどエデルも落ち着いて」
二人が激しい言い争いになってきたため、ルーペアトは止めに入った。
ルーペアトもノーヴァに補佐されるのは少し嫌だし、ノーヴァも嫌だろう。
だから基本的にエデルを頼ろうと思っているが、リヴェスは二人の板挟みになるだろうから大変だ。
その時は助けてあげないと。
「姉さん、こんな奴放っておいて食事にしよう」
「うん、そうだね」
「え?ちょっ…」
ノーヴァを置いて皆で食堂へと向かって行く。
歩きながら振り返ると、皆の後を追おうとしていたところ、リヴェスに止められているのが見えた。
「お前は頭を冷やし反省してから来い。これは未来の上司としての命令だ、いいな?」
「…わかりましたよ」
ノーヴァはリヴェスが未来の上司と言ってくれたことが嬉しく、顔が緩んでしまいそうなのを必死に抑え、庭の方へ歩いて行く。
そんな心情を知らないリヴェスは溜息を吐いて、これで反省してくれることを祈りながら、リヴェスも食堂へ向かう。
その後、さっきあったことはすっかり忘れ、楽しく賑やかに食事をして過ごし、最高な一日を締めくくった。
読んで頂きありがとうございました!
投稿予約日を間違えておりました、大変申し訳ございません!
加えて気づくのが遅くなり、金曜日から日曜日になってしまい、待って頂いていた方に申し訳ない気持ちでいっぱいです(T T)
投稿されていなかったことを夜中に気づいたため、すぐに投稿するのではなく、いつも通り7時に投稿致しました。
今後、同じことを起こさないように気を引き締めて参りますので、これからもよろしくお願い致します。
次回は水曜7時に投稿します。




