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第101話 これ以上ないほど愛しています

 リヴェスは裁判が終わった後、とある店を訪れてから、エデンの屋敷で待っているルーペアトを迎えに行く。

 今は昼を過ぎたばかりで、日が暮れる前には屋敷に着けるだろう。

 そこからミランに教えてもらった場所に向かえば、ちょうど良い時間に目的地へ辿り着けるはずだ。


 屋敷で待っていたルーペアトは、エデルが用意してくれていた服の中から、自分に似合う服を使用人に選んでもらい準備は万全。

 その後は窓の前に立ち、リヴェスが乗った馬車が帰って来るのを待っていた。


 暫くして、少し遠くに馬車が見え、ルーペアトは部屋を出て急ぎ足で玄関に向かう。

 扉を開け外に出ると、リヴェスの馬車も屋敷の前に止まったところだった。 


 馬車から降りたリヴェスは手を差し出し、微笑みながらルーペアトに告げる。


「約束通り迎えに来た」

「約束を守ってくれてありがとうございます」


 リヴェスが迎えに来ないかもしれないなんて微塵も思わず、心配していなかったし不安に思ってもいなかった。


「では行こう」

「はい」


 微笑み返したルーペアトは、リヴェスの手を取り馬車に乗り込んだ。


 目的地に向かっている間、二人は裁判の話や他愛のない話をしながら過ごしていたが、リヴェスは少しだけ心配なことがある。

 それは今向かっているミランが教えてくれた場所が、本当に景色が良いのかという疑問だ。


 事前に部下を行かせ、教えてもらった道は合っていて、安全性があるかなどは確認済みである。

 部下からは景色が綺麗だったと報告を受けたが、感性は人それぞれだ、ルーペアトがどう思うかはわからない。

 そんなちょっとした心配をしている間も、馬車は山道をどんどん進んで行く。


 日が完全に落ち暗くなった頃、ついに馬車が止まった。


「ここから先は馬車で行くと時間が掛かるため、徒歩で先に向かっていて下さい」

「わかった」


 馬車を降りた二人は、馬車を動かしていた部下を残し歩き出す。

 徒歩で行くとはいっても、どうやら一本道らしく迷うことはなさそうだ。


「どこに向かっているんですか?」

「ミランに教えてもらった場所だ」

「ミランが?」

「ああ。あいつに教えてもらった場所に行くのは少し癪だが、俺はこの国に詳しくない。だから今回はミランの厚意を利用させてもらった」

「そうだったんですね」


 その話を聞いたルーペアトは内心驚いていた。

 ミランが厚意で人に何かを教えるのが意外過ぎたのだ。

 どんな場所なのか全く予想が出来ない分、だんだん楽しみになってくる。


「そろそろ着くはずだ」


 リヴェスがそう言ってから数分後、道が途絶えて軽く辺りを見渡すと、ちょっとした山の山頂だった。


「リヴェス、後ろ!」


 ルーペアトが後ろを指差しながら驚いていたため、刺客でも居たのかと思って勢いよく振り向いたリヴェスは、目の前にあった景色に固まってしまう。


 ミランが言っていた通り、そこは本当に街が綺麗に見える場所だった。

 建物が同じ造りが多いことで、街明かりに規則性がある。それはハインツでは絶対に見ることが出来ない景色だ。

 ハインツでは家の造りも高さもそれぞれ違うからだ。


 勿論ハインツだって高い場所から街を見下ろせば、それはそれは綺麗な景色が見えるが、ヴィズィオネアにはヴィズィオネアなりの良いところがある。


「綺麗ですね…」

「ああ、綺麗で良かった」


 リヴェスは景色を眺めた後、ルーペアトの横顔を見つめていた。

 その視線に気がついたルーペアトはリヴェスに問い掛ける。


「どうしたんですか?」

「好きだ。どうしようもないほど好きだ。ルー見ているだけで、この気持ちが溢れてくる」

「えぇ!?い、いきなりなんですか…!」


 気持ちはお互い知っているが、突然そんな風に言われて驚いたルーペアトは、同時に恥ずかしいけど嬉しくて頬を赤らめる。

 その様子に笑みを浮かべながら、リヴェスは話を続けた。


「俺は両親を手に掛けたし、社交界でも忌み嫌われている。俺は幸せになることを許されない存在だと思っていた。だからこの先、ただずっとハルトを影で支えて国のために生きるだけだと」

「リヴェス…」


 貴族達に言われて仕方なく令嬢と婚約しても、不幸にさせてばかりで、自分は幸せにはなれないし誰かを幸せにすることも一生出来ないと思っていた。

 でもルーペアトだけは、一緒に暮らしていきたいと、今でのように皆と暮らせたら幸せだと言ってくれたのだ。


 それはリヴェスも同じだし、ルーペアトからたくさんの幸せをもらった。


「ルーが居なかったらハルトを愛称で呼ぶこともなかったし、ノーヴァとも仲直り出来ないままだっただろう。全てルーのおかけだ」

「そんな、私は何も…!」

「いや、俺はルーに救われたんだ。俺だけじゃない、ハルトもミランだってそうだろう。ルーと出会えたことが俺にとって一番の幸運だ」


 ルーペアトはこれまであったことを思い出して、涙が溢れそうだった。

 涙を堪えながら、ルーペアトも想いを伝える。


「…私もリヴェスに出会えて本当に良かったよ。リヴェスに出会えてなかったら過去に縛られたままだったし、皆と出会うこともなかった。リヴェスが居たから今の私がある…!」

「そう思ってくれてありがとう」


 リヴェスも涙を堪えているように見えた。


 ルーペアトの言葉が嬉しくて思わず抱き締めてしまいそうになる。

 しかし、一旦気持ちを落ち着かせ、会話がぎりぎり聞こえないくらいの位置に停止させるよう、伝えておいた馬車にリヴェスは向かう。


 ルーペアトが不思議そうに見つめている中、リヴェスは馬車の荷物を入れておくところからあるものを取り出す。

 そしてルーペアトの前に戻って来たリヴェスは、再び想いを口にする。


「契約結婚は終わりして、俺と本当の夫婦になろう。これからヴィズィオネアの皇帝となって生きていく道に、隣にはルーが居てほしい」


 ルーペアトはもう涙を堪えられなくなって、涙を拭いながらリヴェスの言葉に、ただひたすら首を縦に振っていた。


「数え切れないほど本当に感謝しているし、これ以上ないほどルーを愛している」


 そしてリヴェスはルーペアトの前に、百一本の薔薇の花束を差し出す。


「これからも共に、幸せに生きていこう」

「はい…!私も…リヴェスを愛してます」


 何とか声を絞り出して、リヴェスから花束を受け取った。

 嬉しさでぽろぽろと涙を流すルーペアトの姿を見て、リヴェスはルーペアトを抱き寄せる。


 暫くの間、リヴェスの肩で涙を流していたルーペアトは落ち着きを取り戻した後、顔を上げリヴェスと見つめ合った。


「愛してる」


 リヴェスはもう一度そう言って、ルーペアトと初めて口付けを交わす。

 ルーペアトも最初は驚くもそれを受け入れ、二人は想いを確かめ合った。

読んで頂きありがとうございました!


ついにこの日を迎えられて嬉しく思います!

(まるで最終話みたいな感想ですが…)

これからルーに対するリヴェスの愛情表現をたくさん書けると思うと、とても楽しみですね( ´∀`)


次回は金曜7時となります。

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