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インテリマフィアのオルゾさんと無貌の天使  作者: ただのぎょー


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31/43

インテリマフィアのオルゾさん、調査をする。

「よし」


 とオルゾは立ち上がった。


「偽ラファエラを助け出す」


「ういっす」


 エキーノは頷き、オルゾは言葉を続ける。


「あれだ、あの女のためじゃねえ。こいつを放置していたらどうなる。今回きっかけを作ったナポリの財界・そして貴族社会へのコネがパアだ。そもそも向こうの立場になってみろ、偽ラファエラを連れてきたのは俺たちなんだぞ。オロトゥーリア組がヴィテッロ組と協力して暗殺しかけたようにしか考えられねえだろクソが!」


 段々と激昂してきたのか彼の言葉は段々と早くなり、言葉を言い切るのと同時に机に拳を振り下ろした。

 並べていた皿が揺れ、グラスが倒れる。


「オルゾ、家の物に当たるのはやめて」


「……おう」


 ステラマリナは言う。


「私もムカついてるけどさ」


 オルゾは深い溜息をついた。アキッレーオが茶化すような口調で言う。


「いいじゃん、嬢ちゃんは救う、ヴィテッロ組はブチ殺す。単純なことだろ」


「そうだ。実に単純なことだな。……エキーノ」


「あ、はい!」


「俺の部下を招集しろ」


 オルゾは組には連絡のみし、人員の動員は頼まないという道をとった。


「うっす!」


「組全体に声はかけなくていいの? パパに声かければ人手は集まるわよ」


 ステラマリナは問う。彼女の父リーゾはオロトゥーリア組の古参の幹部であり、部下も多い。あるいは首領に願えば組全体を動かすことも可能であろう。

 一方でオルゾの直属の部下は極めて少ない。

 それはオルゾが幹部としては異例の若さであることや、彼自身があまり大勢にかしずかれるようなことを好まず、信用できないものを身の回りに置きたがらない気質にもあった。


「兄貴の言った通りさ。単純な仕事だ。それなら自分の失態は自分で取り戻すさ」


 彼がマフィアとして直属の部下と言うのはわずか四人。漁師であり密輸屋スマグラーのトンノ、床屋であり殺し屋(キラー)のサルディーナ、酒場の店主であり高利貸し(ローンシャーク)のスクアーロ、そしてエキーノである。

 エキーノはスマートフォンを取り出した。


「ここに呼んでいいんですね?」


「おう。さっき言った通り、偽ラファエラが仕事を始めるのには時間がかかる。医者のチェック、まあ外傷はないからすぐ終わるだろうが、その後に警察からの事情聴取、両親との時間、祖父のいる城に行くとしても今日であるはずはない。俺は部屋で背後関係、ヴィテッロ組のことを調べておく」


「私も、何か手伝うわ」


「だったら本物のラファエラの人物像など、ナポリのことを調べておいてくれ」


 ステラマリナは頷いた。アキッレーオが問う。


「俺は何をすればいい?」


「そうだな、酒から手を離せ」


 アキッレーオは先ほど投げられたのを受け止めたマッカランの瓶を机の上にそっと置く。


「ちぇ、愛しのマッカラン。今日はさようならだ」 


 アキッレーオは調査などには役に立たないとオルゾも彼自身も知っている。とりあえずペリエ片手に卓上のツマミを片付けることにした。


 オルゾはノートパソコンを取りに寝室に戻る。ラファエラが運び込んだアーサーちゃん人形が舌を出した間抜け面で鎮座しており、オルゾはそれに一発拳を入れてからPCを持って自室に戻る。


「まずは、顧問に連絡か……」


 オルゾはPCを起動させつつ電話をかける。


「テオドーロ顧問」


 電話したのはラファエラと出会った時に会った老人である。


「おう、オルゾ。あの少女の件の報告か」


「まずは謝罪からになります。申し訳ありません」


「どうしたね?」


「それがですね……」


 オルゾは今わかっている顛末を説明した。


「なるほど、してやられたな」


「顧問であれば古い話もご存じなのではと思うのですが、ローマに近い縄張りを持つヴィテッロ組がロッセリーニ、ナポリの財界の顔にそこまでの怨みを持つ理由に心当たりはありますか?」


「ある」


 テオドーロは即答した。電話口の向こうから溜息をつく音が聞こえる。


「わしはな、いや、わしや首領はその怨みのせいで誘拐事件があったと思った。そしてそれが解決したのだと。そうではなく、メルクリオはパオロ・ロッセリーニを殺そうとしていたのだな」


「そのようです」


 メルクリオ、ヴィテッロ組の首領である。それがナポリの貴族とどういう関係があるというのか。オルゾはそれを尋ねた。


「メルクリオが若く、まだヴィテッロの幹部であった頃の話だ。ローマ、ナポリ間に海路でヘロインの輸送ルートを作ろうとしたのよ。ナポリのカモッラと共同でな」


「それは……」


「警察も抱き込まれていたが、それを跳ね除けたのがロッセリーニ候だ。私財を注ぎ込んで警察を寝返らせ……表返るとでも言うべきか。外部から傭兵、警備員を大量に雇って海岸を封鎖したのだよ」


 オルゾが兄を寝返らせたのと同じである。ただ規模が違う。


「この件での失態により、カモッラは大打撃を受けた。ヴィテッロ組はそうでもないが、カモッラが復讐のためにメルクリオの妻子を殺したという噂が流れた。おそらくそれは事実で、メルクリオの怨みはカモッラではなくロッセリーニ侯に向いたんじゃろうなぁ」


「ありがとうございます。情報感謝します」


「うむ、オルゾ。無理はするなよ」


「ええ、くだらぬ過去の怨念なんぞに負けやしませんよ」


 そう言って電話を切った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 『嬢ちゃんは救う』『ヴィテッロ組はブチ殺す』 「両方」やらなくっちゃあならないってのが「幹部」のつらいところだな( ˘ω˘ )
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