インテリマフィアのオルゾさん、奥さんに少女を任せる3
ξ˚⊿˚)ξ昨日は更新忘れてすいません。
全ては健康のためにピクミンを始めて歩いていたせいです。
ステラマリナが洋服を手に歓声を上げる。
「これ可愛くない!?」
「可愛い!」
「…………」
ステラマリナが別の店で洋服を手に歓声を上げる。
「あ、これもラファエラに似合いそう!」
「そ、そう?」
「…………」
ステラマリナがさらに別の店で洋服を手に歓声を上げる。
「あー、これいいわねー、最高!」
「…………」
「…………」
返事が返ってこなくなったのに気付き、若者向けの服を抱えた彼女が振り返る。
「あら、二人ともどうしたの?」
そこにいたのは困惑した表情の少女と足の生えた荷物の塊だった。
つまり山ほどの荷物を抱えたエキーノである。「とりあえずウチに泊まるなら準備しないとね!」ということでカップや歯ブラシ、寝巻きなどからまずは購入したのはエキーノにも理解できる。「今日から使うんだし配送じゃなくて持って帰るわ」と言われたのも、それを男手であるエキーノが持つのも仕方ないことだ。
だが、ここには靴が三足に鞄と財布もあるのだが、これは今持って帰る必要があったのだろうか?
思うことはあれど、エキーノは女性の買い物に意見するような愚を犯さなかった。一方のラファエラはおずおずと尋ねる。
「こ、こんなに買うの……?」
「あら、あなたはそんなに買い物ってしないタイプ?」
「え、えっ」
ラファエラが困惑しているので、黙っているつもりだったエキーノが口を挟む。
「ステラマリナさん、いくらお金持ちのお嬢様だろうと、普通は学生がこんなに一度にたくさんの買い物はしないんじゃないですかね」
「そうだったかしら?」
ステラマリナは首を傾げる。
「ああ、それともお貴族様ともなると、家に御用聞きを呼ぶのかしら?」
「……ああ、いつの間にかクローゼットに服が増えてるわよね」
「なるほどねー。買い物楽しくない?」
ステラマリナの問い掛けにラファエラは首を横に振る。
「楽しいわ! でもこれって、オルゾのお金でしょう?」
申し訳なさそうにそう言うが、ステラマリナはけらけらと笑った。
「そんなの気にするようなことじゃないわよ。オルゾはきっとあなたのパパにそれ以上を請求するし、こんなとこじゃどれだけ買ってもたいした値段にならないじゃない」
田舎の駅前のショッピングモール程度ではたいしたものは手に入らないといってしまえばそれまでではある。
確かにエキーノが抱えている荷物の山の金額を全て合わせても、今ステラマリナの手にある彼女のお気に入りのシャネルの小さなスパンコールハンドバッグ、黒にピンクのトンボの意匠の入ったそれ一つの値段の半分にも及ばないのだ。
「うーん……」
そう聞いても遠慮なのかラファエラの表情はどこか浮かない。
ステラマリナもどこかズレているところがあるとエキーノは思う。浮世離れしているとでも言おうか。
彼女の実家は貴族でこそないが、この地域の地主の家系であり、金に困ったことなどないのだ。
貴族の家系であり、父がナポリの経済界の顔でもあるラファエラはそういう面でステラマリナと合うかと思われた
が、性格的なものかあまり散財を好まないように見えた。
「あのですね、宜しいでしょうか。ステラマリナさん」
「何かしら?」
エキーノは助け舟を出すことにする。
抱えた荷物を持ち上げながら言った。
「荷物持ちが嫌とは言いませんが、俺一応貴方たちの護衛なんで、あまり荷物を積み上げられると護衛に支障が」
「あら」
「一度車に持って行っていいっすか? ラファエラさんも少しお疲れの様子ですし」
「そうね。まだ時計とかはコーディネイトしてないんだけどそれ以外は一通り買ったし、荷物置いたら食事にしましょうか」
ラファエラはほっと安堵したような表情を浮かべて頷いた。
「うん!」
という話になり、ステラマリナたちは一度駐車場に向かった。
表へと出れば夕方から夜へと差し掛かる、黄昏の橙と紫の空。真横から当たる陽射しに三人は目を細めた。
どこか物悲しく、どこか神秘的で、そして禍々しかった。
油断していたわけではない。それが証拠にエキーノは反応してみせた。
「––––っ!?」
ステラマリナの目には、まるでだるま落としかのように、空中に靴や鞄の入った箱が浮き、エキーノが一瞬で消えたかのように見えた。
その速度を以てしても襲撃者の攻撃を躱しきるきることができなかったのは襲撃者の腕前もあろうし、エキーノが自らの安全ではなくステラマリナとラファエラの身を守ることを優先させたからでもある。
「下がって!」
そう叫びながらステラマリナとラファエラに覆い被さるように抱きついて後退させる。
ステラマリナが襲撃を受けているのだと思い至る前に、自分を抱える高級既製服のジャケットの袖がぱっくりと切れて、そこから赤いものが流れていることに気づいて思考が止まった。
遅れて、どさりと箱がアスファルトの上に落ちた音がする。
エキーノがステラマリナたちに背を向けた。彼はジャケットを脱ぐ。シャツの上からでも分かる厚い背筋は、まるで壁のように彼女たちの前に立ち塞がった。
「……へえ、一撃を避けられたのは久しぶりだ」
低く、だが軽薄そうな男の声がする。
エキーノの舌打ちが響いた。
「避けきれはしませんでしたけどね。……アキッレーオさん」




