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人の噂も七十五日㉗ ~3人寄れば文殊の知恵~

 6限の英語の授業が終わり、放課後の時間がやって来た。生徒達はそれぞれのアフタースクールの時間を満喫するため一人また一人と教室を後にしていた。


 その中には生徒会へ行く一と部活に向かう忍の姿もあった。


「それじゃエリー、後はよろしくな。何か分かったらまた教えてくれ」


「それじゃ、あたしも部活行くから・・・」


 一が申し訳ないと言った表情で、忍が心ここにあらずと言った様子で教室に残るエリカ、すみれ、三佳に声を掛けて教室を出て行った。


「忍、本当に大丈夫かな。どう見ても元気無いよね。後で何か差し入れでもしに行こうか」


 三佳が忍を心配しているとエリカが何かを悟ったように言った。


「少しそっとして置いた方が良いんじゃない。きっと何かあれば話してくれると思うし、今は様子を見た方が良いと思うわよ」


「そうかな、うーん、確かにあまりずかずか行く方が返って迷惑かな」


「今日明日くらいは様子見て、それでもおかしかったら、それとなく声かけてみようよ」


 エリカと三佳の会話をすみれがまとめるように言った。


「そうだね、それよりも本題の話をしようか。すみれ、二郎君がいないけど何か用事でもあったの」


 エリカが気持ちを切り替えて噂話の真相究明のための話し合いを始めようと、あと一人の参加者である二郎の所在を確認した。


「あ!声かけるの忘れてたわ。いや、違うの。声は掛けたんだけど、二郎君の話を聞いていたら放課後に残るように言うのを忘れちゃったわ。ごめーん」


 すみれは両手を合わせて何度も頭を下げて謝った。


「でも、すみれ。エリカと一君が教室を出た後すぐに二郎君に声かけていたでしょ。そんなすぐに忘れるなんて、一体何を二郎君と話していたのよ」


「それは、えーっとたいしたことじゃないんだけど・・・」


 すみれのすっとぼけに若干苦笑いしつつエリカが話を進めるように言った。


「もう分かったわ。この話が終わった後に二郎君に私が声を掛けて見るから、とりあえずあの日の出来事を整理してみようよ」


「大丈夫だって、三人寄れば文殊の知恵って言うし、二郎君がいたら四人になっちゃうからこの三人で話した方がきっと言い答えが出るよ」


 三佳のよく分からない自信に満ちた言葉をすみれは苦笑いで返事をした。

 

「はは、ありがとう。三佳のあっけらかんとした顔を見ると何だか大丈夫な気がしてくるよ」


「まぁこの際、三佳の言うとおり前向きに考えてやってみようよ。それじゃあの日の出来事をちょっとノートに書いていこうか」


 エリカは3人で机を囲みながら、一冊のノートを取り出して、時系列とそれぞれの行動などをまとめて当日の出来事を整理することにした。


「それじゃ、まず初めは私が皆から聞いて分かっていることを書いていくから、何かあったら二人は付け加えて欲しいんだけど大丈夫」


「「了解」」


 エリカは二人に見やすいようにノートを逆向きにしながら時間の流れと出来事を書いていった。



 ※当日の動き


17:00頃 生徒会メンバー到着後、会場を散策する。 中田君、小野君会場到着後、すぐに場所取りする。


18:00 一君と宮森さんが先輩3人と別れて場所探しをする。途中で中田君と小野君に会う。その後、バスケ部メンバーと離れた位置に場所取り、それ以降一君はそこから動いていない。


18:10 忍、三佳、すみれが会場に到着。その時バスケ部シートには中田君のみがいた。


18:20 三佳、すみれが屋台に買い出し行き、忍と中田君が残る。


18:30 小野君が戻ってきて、忍と中田君が二人で場所を離れる。


18:40 三佳が飲み物を持って戻ってくる。小野君一人がいる。


18:45 二郎と剛が会場に来る。


18:50 剛と三佳が二人で場所を離れる。


19:00 忍が中田君に告白を受ける。


19:20 忍が二階堂先輩と二郎君を目撃。その後謎のおじさんと二階堂先輩がいなくなり、二郎君は一人で屋台を回る。


19:30 忍が二郎に声を掛ける。その後すぐに結城さんが現れる。この時間の前後に一君が女の子とひと悶着を起こして騒ぎになる。


19:40 二郎と結城さんは二人で消えて、忍と三佳が会った後に、二階堂先輩が現れる。


19:45 バスケ部シートにて中田君、小野君、宮森さんがいて、三佳、しのぶ、二階堂先輩の6人で花火を見る。 



「私が分かるのはこんな感じかな。時間は5分刻みで大まかに書いてみたけどどうかな」


 エリカの書いた時系列をじっくりと見る二人はしばらく考えた後で、すみれがノートに指さしながら言った。


「ここらへんは私が分かるから書き足してみてくれない」


 そういったのはすみれが焼きそばを買って戻ってきた後の時間の事だった。


18:50 すみれが焼きそばを買って戻ってくる。小野君と二郎君がいる。


19:00 二階堂先輩が現れて二郎君を連行。すみれと小野君が残る。


19:10 すみれが残ったやきそばを一君に届ける。バスケ部シートには小野君一人が残る。


「私が分かるのはこんな感じかな」


 すみれは記憶を辿りながら、三つの出来事について書き足した。


「多分、私も剛君に告白を受けたのはこのくらいの時間だったと思うな」


19:00 三佳が剛に告白を受ける。


 その後で三佳も一部書き足すと、思い出したようにすみれに問いかけた。


「そう言えばあの日バタバタしていて気付かなかったけど、すみれは一君に焼きそばを届けた後は何をしていたの。花火が始まったときから終わるまで一度も私らの場所に戻ってこなかったけど何かあったの」


 三佳の何気ない問いかけにすみれはドキッとしながら一と付き合い始めたことを話すかどうかを決めかねていたが、昼休みに一がエリカに何も話さなかった事を思い出し、自分もここではその事実を隠しつつも嘘はつかないように言葉を濁した。


「実は・・・気になる人と会って、一緒にいたのよ・・・」


 そのすみれの言葉に二人はピンときて、それ以上は追求出来なかった。


(もしかして剛か、三佳に振られた後に偶然会場で会ったのか。本当に剛も間が悪い男だわね)


(まさか、つよぽんかな。私と別れた後にすみれと会ったんだ、きっと。色々噂とかで忘れていたけど、すみれになんて言ったら良いのよ、私は)


 エリカが無言でいると、恐る恐る三佳がすみれに話し掛けた。


「あのすみれ、私、ごめんね。そのすみれが剛君の事を好きな事を知っていたのに、こんな事になって。本当にごめん」


 三佳はやりきれない表情でひたすらすみれに謝罪を繰り返した。


「三佳が謝ることじゃないよ。むしろ私の方こそごめんなさい。皆に色々気を遣わせて、初めから私が剛君とどうこうなるなんて無理な話だったし、剛君が三佳を好きな事なんて見てれば分かったことなのに、私がわがままを通したせいで三佳には嫌な思いをさせてしまって本当にごめんなさい」


「すみれ、本当に大丈夫なの。私すみれを傷つけてしまうと思ってなかなか言えなくて・・・」


「私はもう大丈夫だから、三佳ももう気にしないで良いからね。エリカも色々と動いてくれてありがとう。今はまだ話す勇気がなくて言えないけど、二人に聞いて欲しい大事な話があるから今度時間をもらってもいい」


 すみれは自分を心配し気遣ってくれたエリカと三佳に素直に謝り、友情の証として後日別件での個人的な話がしたいと伝えた。


「そっか、それなら良かったよ。うん、何か話したいことがあるなら何でも聞くよ。私達マブだがらね!」


「すみれが意外と元気そうでよかったわ。正直どうなることやらと心配していたから、これで一安心だわ」


 三佳がグッドサインをして、明るい表情で返事をする一方で、エリカが一安心といった表情を見せて答えた。


「うん、ありがとうね。・・・ごめん、話が脱線しちゃったね。それでこの時系列を見て何かわかった、エリカ」


 すみれはつくづく良い友達を持てことにしみじみと感謝を述べて、その友人達を傷つけようとした悪意ある噂を流した犯人を必ず見つけ出そうと話を戻してエリカに問いかけるのであった。

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