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番外編 凜と二郎の不思議な関係 出会いの中学編③ ~尊敬と憎悪~

 時間を少し遡り、最初のニュースの報道があった次の日から二郎は学校の見回りを1周から2周に増やして回ることにしていたため、いつもよりも30分ほど長く学校に残っていた。


 その結果今まで知らなかった事を知ることになった。それは凜の事だった。


 ほぼ毎日のように生徒会室へ出席する凜は大体5時過ぎまでは活動をしており、その前半は生徒会室での事務処理などをしていた。それが終わると職員室へ作成した書類の確認、掲示物の張り替えや行事などの準備をしていた。そして、何もなければ4時過ぎには解散となり、それぞれ部活に行ったり、そのまま帰宅する流れだった。

 

 その中でも凜は生徒会の活動が終わると、校内を回って各部活の様子を見に行き、部長とコミュニケーションをとったり、校内のゴミ拾いや下駄箱が散らかっていれば整理をしたり、用務員が行っている校庭の花の水やりや手入れを手伝ったり、とにかく二郎が校内を回る先には大体凜の姿を見つけ、その都度二郎は感心させられていた。なによりも驚いたことにそんな忙しなく活動する凜はとても生き生きしたようで、誰かの何かに役立てることに充実しているような様子に見えた。


 それは普段常にクールに見えた凜の新たな一面だった。二郎はほんの2週間程度の間であったが、そういった凜の姿を見て、とても好印象を抱くようになり、またこれだけ清廉潔白で綺麗な心を持つ人はそうはいないだろうと尊敬を抱くようになっていた。そして、こんな人の父親もまた不正をするような人ではないだろうと確信を持つようになっていた。


 そんな矢先に二郎は千和子と純の蛮行を発見したのであった。二郎は2周目の見回りの際に三階の3年教室フロアから人の気配を感じ、息を潜め近づくと純の姿を確認した。しばらく様子を伺っていると3年3組へ入っていき、教室内の女との会話から不穏な空気を感じ取り、見つからないように男子トイレへ身を隠して二人をやり過ごしたのだった。


 次の日、二郎によって阻まれた悪巧みの結果を知らない千和子と純は何の騒ぎもない平凡な朝の学校の様子に違和感を感じていた。


(どういうことだ。あれだけエグいことを書いてあれば、誰かしらが騒ぐだろうし、隣のウチのクラスにも何かしら反応がありそうなモノだけど)


 千和子と純はそれぞれが似たような思いを抱いていること察して、怪しまれないように昼休みに人目のつかない理科室などがある特別棟で落ち合い、状況を整理することにした。


「内藤、こりゃどういうことだよ。全然騒ぎになってないようだが」


「うるさいわね、どうせ、だれか朝早く来た生徒が黙って消したんでしょ。あいつのクラスの奴らは全員、あの女の一派だから騒ぎを起こしたくなんだわ」


「なんだよそれ、だったり初めから別の教室に書けば良かったじゃねーかよ」


「何よ、あんたも昨日は何もいわなかったじゃない。仕方ないわ。一箇所だけじゃまた消されて無かったことにされるかもしれないし、5クラス全部の教室に書いてやるわ」


「それはさすがに時間と手が足りねーよ。せめてあと一人仲間を増やそうぜ」


 純の物言いにしばらく考えた千和子は一人の女子生徒の名前を出した。


「白井なら協力してくれると思うわ。あの子いつも二階堂に生活態度とか服装のことでブツブツ言われてて、前からよく文句言ってるのを聞いたことあるから、誘えば乗ってくると思うわ」


「白井ってあの不良女のことか。正直俺もあんな女は好きじゃないけど、敵の敵は味方って事か。まぁいいや、そっちはお前に任せたわ。話がついたらまた声かけてくれや。そんじゃ」


 純は千和子と一緒にいることを見られないように、顔を伏せて教室へ先に戻っていった。


 残された千和子は廊下の窓を開けて、どんよりと曇った空を見上げて小さな声でつぶやいた。


「あのクソ女め、今度こそ目にもの見せてやるわ」


 二日後、千和子が言うとおり白井瑠美が二人の計画に参加することになった。


「ふん、あんたら不良のあたしよりよっぽど心がゆがんでるわね。でも、あの女に痛い目みさせるなんて面白いこと考えるわね。それにしても、内藤はあたしなんかと同じ側の人間って聞いても驚かないけど、小林みたいなクソつまらない真面目君がまさか参加してるなんてマジで意外だわ」


 瑠美は実際に3人が集まり、面子を見たときに感じた感想を一切のオブラートも包まずに言い放った。


「誰があんたと同じ側の人間よ。勘違いしないでよ。不良女が」


「誰がつまらないくそ真面目だ。お前みたいな不良は二階堂の次に嫌いなんだよ」


「おいおい、誘っておいてひどい言われようじゃんか。あたしは良いんだぜ、まだ何もやって無いんだから。このまま職員室に行ってあんたらがやろうとしてることをチクったってかまわないけどね」


「お前みたいな問題児が何を言っても教師達は信用しないよ。普段真面目な俺と比べたら信頼度が違うからな。でも、それもめんどくさいし、今は二階堂を潰すことだけを考えようぜ」


「クソが、これだから勉強勉強言うお前とか先公達は嫌いなんだよ。まぁいいや。それであたしは何すりゃ良いのよ」


 純との言い合いが面倒になった瑠美が千和子の方を見て内容の確認を求めた。


「小林はめんどくさいから黙ってて。白井はあたしとは別の教室の黒板にアイツの悪口を書くだけで良いわ。小林に見張りをしてもらって誰かが来たら、速攻で逃げる準備だけはしておいて。今日は5クラス全部書くから、書きたいことは腐るほどあると思うけど、ほどほどにして次の教室にいってさっさと終わらせて。私が1、2、3組、あんたが5、4、3組の順番で書いて行くわよ。最低でも10分。早けりゃ5分で終わらせたいところよ。わかった」


 千和子は純に黙っておくように睨みを聞かせて、計画を一気に瑠美に説明した。


「はいはい、とりあいず、文句を書いていけば良いんでしょ。やってやるわよ」


「後10分もすれば3年の教室フロアから人がいなくなると思うから、そしたら一気にやるわよ」


 千和子の言うとおり、10分ほど経った15時55分には3年教室のフロアから3人以外の生徒はいなくなった。宿題をしていた純は一心不乱に凜への文句を書き綴っていた千和子に声を掛け、各クラスに生徒が残っていないかを確認にし、女子トイレに隠れている瑠美を呼びに行かせた。


「それじゃ、やるぞ。俺が廊下で見張りをしてるから、もし誰かの足音が聞こえたら、「おかしいな、どこへ行ったんだろう」って独り言を言ってるフリをするから、聞こえたら書くのをやめて教室の外へ出ろ。俺が足音のする方の階段に行くから二人は俺とは反対側の階段で急いで逃げろ。何もなければそのまま急いで書いて終わったら、二人はすぐに帰れ。俺は図書室で時間潰してから帰るからよ」


 純が見張りをする中、二人は狂ったかのように黒板を汚い言葉で埋め尽くしていき、あっという間に5クラスの黒板を凜への誹謗中傷の言葉で埋め尽くした。その間にこのフロアに近づくモノは誰もおらず、難なく3人の悪巧みは成功した。


「明日こそあの女の苦虫を噛む顔が見れそうね」


 千和子の捨て台詞に純と瑠美も無言で同意して3人はその場を後にした。


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