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夏休み その4 花火大会➄ ~落ち武者と友情の援護射撃~

 大和が巴に告白している間、尊は一人場所取りで残っていた。しばらくして時刻も18時を過ぎた頃、忍から会場に着いたとの連絡を受けて、尊の心拍数は一気に上がることになった。


 連絡から数分後、三佳とすみれを連れた忍が尊の待つ場所へ到着した。


 三佳は相変わらずのパンツルックだったが、公園という事もあってこの日は七分丈のジーンズに半袖のシロ黒ボーダーのTシャツでスラッとしたスタイルの良さが際立つ服装だった。すみれは白のプリーツスカートにネイビーのニットを着て落ち着いたキレイめな着こなしだった。忍はグレーのロングタイトスカートに白のスニーカー、シンプルな黒のシャツでカッコ可愛いスタイルだった。


 三人は人混みの中でも十分に目を引く程に目立っており、周りの男達が声を掛けようとお互いに牽制をしているところで、その企みを諦めることになった。なぜなら、3人が足を止めた場所に180センチ以上のゴリラのような男が一人立ち上がり周囲ににらみをきかせたからだ。


「尊、場所取りお疲れ様。友達二人も連れてきたよ」


 男達の静かなバトルが繰り広げられる中、忍が尊を労って三佳とすみれを紹介するように手で視線を向けさせた。


「初めまして、馬場三佳です。今日は誘ってくれてありがとうね。それと場所取りもありがとう」


「こんばんわ、中田君。久しぶりだね。一年の時に同じクラスだった橋本だけど覚えている」


 すみれは一年の頃に同じクラスだった尊に自分の事を覚えているかを試すように話し掛けた。


「橋本すみれさんだよね。覚えているし忍の友達だから当然知っているから安心してくれ。それと馬場さんも超有名だから、初めましてって感じがしないよ。俺は中田尊です。忍と同じバスケ部で今は男バスの部長やっています。二人とも今日は来てくれてありがとう。忍も来てくれて良かったよ。ここのシートは俺らの場所だから自由に座ってよ」


 尊も簡単な挨拶を済ませて、女子達をシートに座るように促した。


「それじゃ、遠慮無く。そういえば大和は一緒に来てないの。二人で場所取りするって聞いていたけど」


 忍がいるはずの大和の所在を確認すると、尊が慌てて状況を説明した。


「大和も一緒に来たけど、今はちょっと用事があって離れているんだよ。すぐに戻るって言っていたから気にすることないさ」


「そうなんだ、一と二郎はまだ来てないの」


「一は生徒会の人ともう来ていて確か場所取りで、俺らの少し奥の方にいると思うぞ。少し前に会ったから間違えないはずだわ。二郎の奴は今のところ何の連絡も無いけど、そのうちひょっこりやってくるんじゃないのかな」


 忍と尊の会話を聞いていたすみれと三佳はそれぞれに心の内をつぶやいていた。


(一君、一人かな)


(二郎君まだ来てないんだ)


「どうした、二人とも?」


「いや、何でも無いよ」


「そうそう、全然気にしないで」


 忍が二人の様子を伺うも特に問題ないとの返事が返ってきてため、それ以上は追求しなかった。


 その後ちょっとした雑談をしていたところで、尊が女子3人に提案をした。


「せっかく早く来たんだし、ここに座っていないで屋台でも見てきたらいいんじゃないか。俺が場所は見とくからさ」


「でもそれじゃ、中田君がずっと留守番することになるし可哀想そうじゃない。私が留守番でもいいよ」


 すみれが尊の提案に対して自分が待つように言った。すみれとしては前回の遊園地で忍には色々気を遣わせてしまったという思いもあり、今日は忍や尊のために留守番くらいはした方が良いと思っての申し出だった。


「さすがに女子を差し置いて行くわけには行かないよ。そうだ、もしよかったら、先に行って何か飲み物とか買ってきてくれたらありがたいな」


「だったら、私とすみれで買い物に行くから忍と中田君で留守番してもらってもいいかな」


「わかった。俺はそれでいいよ。忍もそれで大丈夫か」


「了解、問題ないよ」


 三佳の提案は尊にとって渡りに船だった。なぜなら、尊にとってみれば重要な事は留守番するかしないかではなく、忍と二人になれるかどうかだったからだ。三佳がそれを言ってくれたおかげで忍も受け入れやすくなった事もあり、屋台にむかう三佳とすみれを見送りながら尊は小さくガッツポーズをしていた。


 二人になった尊と忍は気心知れた仲ともあって比較的リラックスしたムードで世間話をしていた。


「それにしても、橋本さんも馬場さんも良い子だな。気は使えるし、性格も良さそうじゃないか」


「うん、二人ともクラスじゃ圧倒的な存在感でもっと威張っても良いくらいなのに、全然傲慢じゃないから付き合っていても嫌な思いしなくてありがたいよ。女子なんてマウントの取り合いでうんざりすることの方が多いから、その点今のクラスの友達は付き合いやすくて助かっているわ」


「そっか、良かったな。良い友達が出来てさ。一年の頃は部活の友達ばかりでクラスの連中とはあまりつるんでなかったよな。それを思うと今日みたいに忍がクラスの友達を誘って休みに集まるなんて本当に珍しいもんな」


「確かにそう言われてみればそうね。この前も初めて三佳やすみれ達とペンギンランド行って結構楽しかったし、今年はクラスに恵まれているかもね」


 忍は尊との会話の中で改めて今の自分の置かれている環境は悪くないと感じた。


「でも、あたしはやっぱりバスケ部が一番居心地良いよ。先輩達も優しいし、同期の皆も真剣に部活に取り組んでくれるし、男子達も二郎みたいにめんどうくさいバカもいるけど、尊みたいに一生懸命バスケに取り組んで、部長としても頑張っている人もいるし、この学校に来て良かったって思っているわ」


「おぉ、そうか。そうならそれが一番だな。俺も忍と同じ部活で毎日楽しいぞ」


「なにそれ、本当に尊はバスケバカだね。でも、それが尊の良いところかな。三佳やすみれを良い子だって言うけれど、尊だって負けずに良い奴だと思うよ。二郎の奴に尊の爪の垢でも飲ませたら、もうちょっとは真面目にシャキッとするんじゃないかな」


 忍は冗談交じりにも尊への信頼と尊敬を示した。


 二人が良い雰囲気でいるところに、一人の落ち武者のような顔をした男が姿を現した。


「尊、すまねぇな。留守番してもらってよ。忍も来たんだな」


 大和の表情と声色からおおよその状況を理解した尊は余計なことは言わず戦いに挑んだ男を迎え入れた。


「お疲れさん。もう大丈夫なのか」


「あぁ、ありがとう、尊。やれることはやったよ。だからもう大丈夫だ」


「そうか、グッジョブ、大和」


 尊と大和が言葉少なげにも熱く見つめ合いがらお互いの意志を理解したそんなやり取りをする横で、忍が不思議そうに二人に声を掛けた。


「あんた達、何を言っているのさ。なんかよく分からないけど、端から見ているとちょっとキモいよ」


「忍、今だけは何も言わないでくれ。男同士の約束があるんだ」


 尊が大和を守るように忍を制して頭を下げた。


「あーそーですか。まぁどうでも良いけどね」


 先程までの良い雰囲気もやはり尊も含めて男子はバカだなと考えを改める忍だった。


 大和が落ち着きを取り戻したところで、いよいよ本題を切り出した。


「尊、ここは俺が見とくから忍と二人で回って来いよ。今度はお前の番だ」


「わかっている。今度は俺が男を見せる番だぜ。・・・忍、大和もこう言っているし、俺らも少し屋台を回ってこないか」


「でも、三佳もすみれもあたし達の飲み物とかを買ってきてくれるなら、待っていた方が良いんじゃないの」


「そうかもしれないけど、向こうで会うかもしれないし、もしすれ違っても俺とか二郎がその分をいただくから無駄にはならないし大丈夫だよ。それよりもせっかく来たんだから、会場の雰囲気を味わってきな」


 忍の当然の懸念を大和が説き伏せて二人の手を引き強引に立たせて送り出した。忍はどこか違和感を覚えつつも長時間場所取りをしてくれた尊に免じて誘いに乗ることにした。


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