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夏休み その1 ペンギンランド② ~スタートダッシュと入場券~

「わーい、着いた、着いた!俺が一番乗りだぜ!」


「待ってよ、僕も行くよ」


 乗客の中の子供達が到着と同時に席を立ち、こぞってバスを降りて行列となるチケット売り場へ走り出していた。ある程度、他の乗客が降りる流れが切れたところで8人はバスを降りて入場門の前に集まった。この時すでにチケット売り場では行列ができており、100人以上が並んでいた。


「さすがに夏休みだな。人が多いわ」


「どうしようかみんなで並ぶか、それとも代表の誰かが並ぶか」


 二郎と一がそんな話をしていたところで剛が皆の方を向いて何かを見せた。


「チケットなら大丈夫だよ。もう人数分買ってあるから。ほらこれ」


「え、本当に。だって販売は確か8時半からで開門が9時からだよな。予約だって一昨日来る人数が決まったわけだし、よく手に入ったね」


 一が驚いたように剛に驚きと賞賛を向けた。


「あ、もしかして、工藤君とか服部君が早く来たのはこのためだったの」


 三佳は剛、拓実、エリカの3人が駅に早く着いていた理由を推理して確かめるように聞いた。


「いや、今日早く来たのは普通に遅刻しないように来ただけだよ。もしそうならわざわざ駅前集合じゃなくて、ここで集合にした方が楽でしょ、わざわざ駅に戻らなくて良いわけだしね」


 剛は三佳の言葉を苦笑いしながら返事した。


「それじゃあ、どうして」


「こいつ昨日ここに来て、今日の分の前売り券を買ってくれたんだよ」


 三佳がどうしても事の真相を知りたそうに聞くと拓実が代わりに種明かしをした。


「そうだったんだ。わざわざありがとうね、工藤君。お金いくらだった。忘れないうちに払っておこうよ」


 三佳は剛と拓実の説明を聞き、感謝を伝えて先に集金しようと皆に声を掛けた。


「そうだな、いくらだったんだ」


 二郎が三佳の提案に頷き財布を手に取って尋ねた。


「えっと、入場料とアトラクション乗り放題で四千二百円だね」


「Ok。ありがとうな、工藤」


「はいこれ工藤君、わざわざありがとうね、本当に」


 剛に対して皆が感心したように声を掛けてチケット代を手渡した。


「俺が今回の言い出しっぺだし、これくらいは気にしないでよ。それにせっかく来たのに長くここで並ぶのもヤダったからさ。それじゃ、これ渡すから無くさないように気をつけて」


 剛は三佳の前でうまくアピールできたと満足しながらチケットを配布していった。


 チケットを手にした8人は長蛇の列を横目に悠々と入場門をくぐった。


「おぉ、いいね。テンション上がるな!」


「私スゴイ久しぶりだな、小学生の時以来だわ」


「私はここ来るの初めてだわ」


「なんか友達とこうやって出かけるのが、久しぶりだからワクワクするな」


 それぞれが思いのまま話していると拓実が皆に声をかける。


「せっかくこんな機会だし、改めて自己紹介しないか。最初のアトラクションがある広場のところまでは少し歩くし、せっかくだからどうかな」


 今現在のグループの位置関係は前の列に剛、拓実、エリカの順に並び、その後ろに三佳、すみれ、さらに後ろに忍、二郎、一の形だ。一番前の真ん中の拓実が皆の方に振り返って自己紹介を始めた。


「俺は服部拓実、2年1組でサッカー部。剛とはクラスも部活も同じの親友だ。実はエリカとは小学生の頃から知り合いで、剛と三人、家も近くて幼馴染みなんだよ。一ノ瀬は1年の時から何度か話したことがあるよな。馬場さんはたまに部活の時に顔合わせるよね。残りの橋本さんに成田さん、あと山田だっけ?3人とは、本当に初めてだよな。今日はよろしくです。はい、次、任せた」


 拓実はお手本のような大人数向けの完璧な自己紹介を行い、流れる様に両手を使い次の剛を指名した。


「OK、それじゃ、次は俺だ。改めて工藤剛です。拓実が言ったとおり2年1組でサッカー部。エリカとは小学生のときからの付き合いで幼馴染みです。あと馬場さんとは部活の時に、顔をあわせるようになって最近はよく話すようになったつもりです。橋本さんは1年の時に同じクラスだったよね、覚えてる俺のこと。あと一ノ瀬、山田、成田さんは初めましてだね。よろしくです。それじゃ、次はエリカよろしく」


 拓実と剛は打ち合わせていたかのように、スムーズに自己紹介を行い、そのバトンをエリカに渡した。


「了解、私は唯一全員と繋がりがあるかな。飯田エリカ、2年5組の美術部です。二人が言ったとおり幼馴染みで、後はみんな同じクラスだし特に言うことないかな。山田君は私のこと知っているよね」


「おお、さすがに知っているぞ、エリエモンだっけ?あ、違うか、お母さんだったな」


 二郎が突然話しを振られたことに驚きながら返事をした。


「それは良かったわ。同じクラスで知らないって言われたらショックだしね。(エリエモンって三佳がいつだかボケて私につけたあだ名よね。何で山田君がそんなこと知っているのかしら)」


 エリカは二郎のぼそりと言った言葉を心の中で気にしながらも、場を盛り上げようと冗談めかして返事した。


「なんだお母さんって」


 そんな二人の会話に剛が反応して声を掛けた。


「いや、エリカはクラスでお母さんって呼ばれているらしいぜ」


「へー、面白いあだ名つけるね5組は」


「まぁね、成り行きでね」


 拓実、剛、エリカが3人であだ名の事を話していると三佳が自己紹介を始めた。


「じゃ次は私ね。私は馬場三佳です。あと2年5組の陸上部です。あまり目立たないようにしてるから地味だけど、今日はよろしくね!」


「いやいや、馬場よ。お前ほど目立つ生徒はいないだろ」


「そうなの、何でかな。私友達も多くないし、部活も一人で走っているだけだよ」


「自己評価と他人の評価がここまで離れている奴も珍しいわ、ホント」


 あきれながらの二郎のツッコミに三佳があっけらかんと答えていると一が話し始めた。


「まぁまぁ、それじゃ次は俺だな。一ノ瀬一、2年5組でバスケ部です。そこの二郎と忍とは部活とクラスも同じなので付き合いが長いです。あと一応生徒会をやっています。1組の二人とは顔は知っているけど、がっつり付き合いはなかったから、今日は楽しみにしていたよ。これからよろしくな」


「お前のことも皆知っているだろ。学年で一番顔が広いし、男子じゃ一、女子じゃ馬場が一番の有名人だろ多分。まぁいいや。俺は山田二郎。2年5組のバスケ部です。今日は忍がどうしても来てくれと言うので、参加しました。まぁよろしく頼のんます」


 二郎が一にツッコミを入れつつ、自己紹介を済ませると、忍が後に続いた。


「いちいちあんたはうるさいわね。私は成田忍です。2年5組で女子バスケ部です。そこのブツブツうるさいバカと一はバスケ部の付き合いがあって多少は知り合って感じです。工藤君も服部君も無理を言って参加することになってごめなさい。邪魔ならすぐに連れて帰りますので、よろしくお願いします」


 忍が二郎の保護者かのように挨拶をすると、最後にすみれの番となった。


「最後に私ね。橋本すみれです。2年5組で吹奏楽部です。工藤君の事はちゃんと覚えてるし、私、忘れた事なんてないからね」


「え、あ、そうか、ありがとう、橋本さん」


「うん、えっと今日は頑張りますので、よろしくお願いします」


「頑張るって、何を頑張るんだ、橋本は」


 すみれのやけに気合いの入った自己紹介に剛が面を食らっているところに、二郎が再度ツッコミを入れようとして、横からキツい一撃が入った。


「ぺしっ」


「痛って、何だよ忍、いきなり」


「良いから、あんたは黙ってなさい」


「「ナイス、忍!!」」


 女性陣からのグッジョブサインがすみれの見えないように、三佳とエリカから送られていることを剛は不思議に見ていた。

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