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ある梅雨の日 その4 ~進撃の剛~

 梅雨が続くある日、すみれはエリカや忍、そして三佳に片思い中の工藤剛について打ち明けることにした。それは同じクラスだった一年の頃から剛に片思いしており、いつか告白するつもりでいるという内容だった。


 すみれにとってこれは三佳への釘刺しだった。というのも、最近部活の様子を見ているとサッカー部と陸上部が校内での練習フロアが重なっているせいで、剛と三佳の接する機会を良く見るようになったからだ。


 校舎三階の窓から見ただけでは何を話しているのかわからないが、それが逆にすみれに良からぬ想像をさせて不安を増長させたのだった。しかし、実際のところ、あれからも校内練習が続き、何度も剛と会話をしていた三佳は、未だに名前も知らない気の良いサッカー部員の一人程度と剛を認識していた。そのため、すみれから剛の話を聞いても普段会話する男子がすみれの意中の相手の剛の事とは当初は全く気づかなかった。


 数日後ようやく最近良く声を掛けてくるサッカー部の男子がすみれの意中の相手と気がついた三佳は柄にもなく剛の事を気にしていた。なぜならば普段何度も告白され恋愛なんて面倒とばかり考えていた事でも、他人の事となればそれは別で、恋愛に疎い三佳でも多少は興味を引くモノとなっていたからだ。そのせいで剛との会話が以前と比べてぎこちなく不自然になっていた事を本人は気づいていなかった。


 ある日の部活の準備運動中に三佳は剛を発見した。剛も部活前のストレッチをしており、部活中に二人が雑談するのは決まってこの時間帯だった。剛こそがすみれの意中の相手だと知ったせいか、この日三佳はいつも以上に剛をチラチラ見ていた。剛もその視線にすぐに気づいた。


「馬場さん、どうも。今日は調子どうですか」


 剛は不思議に思いながらもいつものように三佳に声を掛けた。


「え、あ、うん、いつも通り元気だよ」


 三佳は怪しまれないように平然を装い返事した。


「馬場さん、どうかした。俺のこと見てなかった。顔になんかついているかな?」


「え、いや、別に、そんなじろじろなんて見てないよ。ただ君が剛君なんだなと思ってね。いや、何でもないよ、はははは」


 三佳は下手なごまかしを入れながら、剛の追求を回避しようとした。


「え、どういうこと。俺が剛って当たり前じゃん。てか、初めて俺の名前呼んでくれたよね。びっくりしたよ。何度も会話しているけど、もしかしたらちゃんと自己紹介してないから、俺の名前を知らないのかと思っていたからさ」


「そうだったかな、そうかもね、もしかしたら私も自己紹介してなかったかもね。でも、ほらサッカー部のいつも一緒にいる男子が君の事、剛っていつも叫んでいるじゃん。だから、下の名前は聞いたことあったんだよ」


 三佳はなんとか話しをそらせたことに安心して、剛の話に合わせて返事した。


「あー拓実のことか、確かにそうだね。そういえば、馬場さんってエリカと同じクラスで友達だよね。俺と拓実とエリカは小学校の同級生で幼馴染みなんだよ」


「え、そうなの。エリカはそんなこと一度も話したことなかったな」


 三佳と剛がそんな会話をしているとそれぞれ声がかかった。


「三佳、練習始めるよ、集合!」


「剛、こっちも筋トレ始めるぞ」


 二人は練習開始の為、それぞれのフロアに戻っていった。

 時間にして1,2分程度の会話だったが、2人にとっても初めてまともな話しをした時間になった。


 そんな一幕を3階の窓からすみれは見ていた。


(三佳ったらどういうこと。いつもは数秒くらいしか接してないのに、あんなに長く何を話しているわけ。私が片思いしている事を何のために話したと思っているよ)


 この日以降、すみれの焦りは日に日に増してくことになった。


 さらに偶然別館2階に上がって来ていたエリカもその様子を離れて見ていた。


(なんで剛とそんなに仲よさげに話しているの?!今まで何の関わりも無かったはずなのに。楽しそうに笑っちゃって。どういう関係なの)


 エリカは普段サッカー部を見るときは拓実を中心に見ていたので、すみれのように剛と三佳がたまに雑談をするような間柄とは知らなかった。そのため、驚きと疑問そして不安が一気に頭によぎることになった。


 その日を境に剛と三佳は以前よりも会話をする回数が増えていった。部活の時間だけでなく、普段の学校生活や下校時間など三佳を見かければ、剛は自然と声を掛けるようになっていた。


 三佳としてもすみれの想い人という事もあり邪険に扱うことも出来ず、普段の友人と接するようになっていた。さらに出来ることなら普段世話になっているすみれを応援したい気持ちもあり、剛との繋がりを作り、アシストできればと無意識に考えていたため、それが剛にとっては積極的に感じとられていた結果、自分に好意を持っているように思わせる原因となった。


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