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ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活  作者: 沢鴨ゆうま
第二章 剣士となりて

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第三十九話 門出と思い出

Szene-01 レアルプドルフ、町役場


 武具屋店主の手下たちに連れられて、カシカルド王国の人材調査員が町役場に到着する。

 役場前ではデュオ二組が待ち構えていた。


「カシカルド王国の人材調査員様ですね? 町長は隣の建屋におりますので、ご案内します」


 一人の剣士は、町長が待つ建屋に手のひらを向け、ついて来るよう調査員に促す。

 もう一人の剣士は武具屋の手下たちへ受け継いだ合図を送った。

 調査員は四方をデュオに囲まれ、案内とは言えない形にされる。

 剣士から合図を受け取った手下たちは、調査員が振り向いた時には既にその場を後にしていた。


「もういない……速いですね」


 二組のデュオは調査員の言葉に反応をせず、町長の待つ建屋へと歩く。


Szene-02 レアルプドルフ、東門


 ブーズのある東地区へ向けて東西街道を歩いているダン一行。

 剣聖と、その横に並ぶ町民に人気の従者。

 後に続くのは、英雄の娘と名の通った上級剣士の娘。

 二人の剣士に付き添うのは、藍色で長髪な少女と赤い短髪猫っ毛な二人の従者。

 街道を行き交う町民たちの目を引かないわけがない。

 たっぷりと目線を浴びながら一行は東門に着いた。

 剣聖一行ということで、衛兵がさらに気合を入れて姿勢を正す。


「ダン様、いよいよですか?」

「ああ。これからは東門の出入りが多くなる。一層の監視を頼むぞ」

「心得ています」

「衛兵の数は増やす予定だ。何せスクリアニア側だからな」


 衛兵は、他の面子を見てからダンに言う。


「それにしても、さすがは剣聖様という感がありますね」

「ん?」


 ダンは、衛兵の目線が自分の後ろへ向けられている事に呆れた表情をする。


「まったく、他にも素晴らしい女性たちはいるだろうに」


 ダンの言葉にヘルマが反応した。


「あら。素晴らしい女性だと思ってくださっていたのですね」

「あ、いや。まあ、その……」


 ダンは思わず出てしまった言葉に困っているのか、頭を掻いている。

 そんなダンの様子を見て、ヘルマはクスクスと笑った。

 それを見てティベルダがエールタインの袖を引っ張り、小声で尋ねる。


「ご主人様。ヘルマさんって、ダン様で楽しんでいますよね?」

「あはは。ダンはヘルマに勝てないからね……あれ? ボクとティベルダもそういう関係になっていない?」


 エールタインはティベルダの顔を覗き込んで言う。


「んっと、どうなんでしょう。私はご主人様の傍に居られることが幸せだと思ってはいますけど、楽しんでいるのとは少し違う気がします」

「幸せからくる楽しさって感じかな。ボクも同じ気持ちだ」


 エールタインはティベルダの頭を撫でて微笑んだ。


「ルイーサ様も私がいて幸せですか?」


 ヒルデガルドはティベルダのやり取りを見て気になったのか、ルイーサに尋ねた。


「何よ、あの人達の真似をしないで。いつも言っているでしょ、ヒルデは私の傍にいるって決まっているの。私は一人でいるのが嫌いだから、ヒルデの傍に居てあげるの。わかった?」

「ルイーサ様のお言葉が複雑になっているので、分かり難いのですが……」


 ルイーサは片足で地面を一蹴りして言う。


「もう、分かりなさいよ! 幸せってことでしょ。あなたは当然私といて幸せよね?」

「幸せ過ぎて毎日怖いです」

「……ならいいわ」


 東門の前でダン一行の会話が弾んでしまった。

 その光景を見て、衛兵の従者が言う。


「主人と奴隷があんなに仲がいいなんて……素敵」

「アウフリーゲン様が訴えていた奴隷の扱い……。本当に家族として迎えているのか」


 どうやら衛兵は、ダン達のようなデュオの関係を目の当たりにしたのが初めてだったようだ。

 ダンが衛兵の驚いた様子に気づいてヘルマとのやり取りを切り上げた。


「すまんな、どうもこいつらは無駄口が多くて。ではブーズへ行ってくる」

「あ、はい。お気をつけて」


 衛兵はダンの野太い声で緊張を取り戻し、三組のデュオを見送った。


Szene-03 レアルプドルフ、謁見部屋


 カシカルド王国の人材調査員は、役場前から二組の剣士に謁見部屋へ案内された。

 役場横にある小さな建屋の一階。

 中に入ると、物の数が少ない一般的な家といった部屋に町長と役人の二人がいた。

 椅子に座っていた町長が立ち上がり、調査員に挨拶をする。


「私がこの町の町長です。長い道のりご苦労様でした。お話があると伺いましたので、役場ではなくこちらまで足を運んでもらいました」

「こちらこそ謁見の手順を踏まず、申し訳ありません。事前にご連絡をしなければなりませんのに」


 町長は片手で椅子を指し、調査員に座るよう促した。


「伝令から少々話を聞いておりますので、本題を伺いましょうか」


 役人がハーブティーを出すと、調査員は話し始めた。


「では本題から。私の役職からもお察しできるように、我が国では剣士を探しております」

「カシカルド王国……ローデリカ様、懐かしいですな。あの方が戦力で困るとは考え難いのですが」


 調査員は、驚いた様子で目を見開いている。


「失礼ですが、陛下とは親しいのですか?」

「あなたは調査員になられてまだ日が浅いのですかな? この町には、そちらの陛下をよく知る者が数名おりますよ」

「そう……なのですか」

「その様子だと話さない方が良さそうですな。戦力の補強に動いていることは分かりました。次はトゥサイ村の事について聞かせていただきましょうか」


 調査員は国からの派遣者ということで、話を優位に進める気があったようだ。

 しかし話せば話すほど、町長が話を先導していく。


「は、はい……トゥサイ村には物資の供給と引き換えに、人材を探す手伝いを委託していました」

「ほほう。ではなぜあなたは直接来られたのですかな?」

「なかなか情報が届かないので、陛下が痺れを切らしてしまいまして」

「彼女は回りくどい事が嫌いですからな。情報が遅い時点で、既にトゥサイ村の事を切り捨てているでしょう」


 町長は納得したように両手を一度叩いた。


「やはりトゥサイの独断でしたね。それが分かれば全ての話を進ませられる。調査員殿、お話助かりました。山越えは大変ですから、ゆっくり休んでいってください」

「ちょ、ちょっとお待ちを! 状況を探る以外にも私に課せられた役がありまして」


 すっかり次の行動へ移ろうとしていた町長は、調査員に止められる。


「他に何か?」

「能力を持った奴隷を従えた英雄の子を連れてくるようにと」


 町長は調査員へ振り返った状態のままで聞き返した。


「英雄の子ですと!?」


 町長は思わず大きな声を出してしまう。

 それに驚いて肩が上がってしまった調査員に聞き直す町長。


「連れてくるとはどういう意味ですかな? ただ会うだけなのか国が引き取るという意味か」

「会いたい……とのことでした。その真意については私も分かりません。私的には会いたいのみと捉えております」


 町長は机に両手をついて大きく息を吐いた。


「どちらの可能性も無くはないが、恐らく……会ってみたいということなのだろうな。ふむ、彼女がそう思うのは当然のことですな。すみません、取り乱してしまって」

「いえ、私が何か失礼な事をしていなければよいのですが」

「いやいや、寧ろ有益な情報ばかりで助かりましたよ。陛下には時期を見て、会えるようにしますとお伝えください。そして、今後も友好関係をよろしくと」


 町長が調査員に向けて片手を差し出した。

 それを見て、調査員は立ち上がり町長と手を合わせる。


「改めて、体を休めてからお帰りください。陛下の機嫌を考えると一刻も早く帰りたいところでしょう。しかし体に障っては台無しだ。せめて食事や道中用の装備を揃えるなどしてください」


 町長はデュオに向けて案内をするように合図を送る。

 剣士は会釈をして調査員と共に謁見部屋を出てゆく。


「ローデリカ様。お元気そうではあるが、寂しさも消えてはいないのですな。彼の子は立派に成長していますよ」


 町長は椅子に座り、冷め切ったティーを一気に飲み干した。

お読みいただきありがとうございます!

ゆるーい百合物語はのんびりと進んでいきます。

ドタバタ活劇ではありませんが、ツボる方に出会えたら幸いです。

完結までお付き合いのほど、よろしくお願いします。

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