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ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活  作者: 沢鴨ゆうま
第一章 見習い剣士と新人奴隷
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第二話 剣士見習いⅡ

 Szene-03 ダン家、玄関


「行ってらっしゃいませ」

「行ってきまーす」


 エールタインは、ヨハナとヘルマに笑顔で大きく手を振り、ダンと共に町へと歩いてゆく。

 二人の姿が見えなくなると、ヘルマが両手をたたいた。


「さてと。一人増えるかも知れないから、基本の装備を準備しておきましょうか」

「そうね。エール様の好みはすぐに調達するでしょうけど」


 ヨハナも両手を腰に当てて大きく息を吐き、背筋を伸ばす。

 エールタインの世話をまかせる後輩のために、二人は気合を入れた。


 Szene-04 レアルプドルフ、東西街道


 二つの街道が町のほぼ中央で交差している。

 街道は国に所属している全ての町を結んでいるため、様々な人たちが利用する。

 様々な人が行き交い、賑わいをみせている。


「相変わらず人が多いなあ。最近は剣士も外の仕事に出ているし、町が平和な証拠だね」

「そうだな。こんな状況が続いてくれるといいんだが」

「ボクたちの望みと他の国の考えが同じにはならないの?」

「それは人同士である以上、難しい問題なんだよ」


 東西街道を東へと進む。

 町の東玄関となる町壁の東門前に到着した。

 ここには町が運営している奴隷紹介所がある。

 そこに一人の剣士が入っていった。

 ダンは剣士に目をやり、目的地に着いたことをエールタインに伝えた。


「エール、着いたぞ」


 言われたエールタインが、閉まりかけの扉に目を向けた。


「なんだか緊張してきちゃった」

「初めてのことだからな。話は俺がするから少し待ってな」

「はい」


 Szene-05 レアルプドルフ、奴隷紹介所


 いよいよ奴隷を扱っている、町の施設に入っていく。

 室内は、よく手入れされているロビーが広がっていた。

 正面にある受付で、ダンが話を始める。


「一人お願いしたいんだが」

「ダン様ではないですか! お久しぶりです。お元気そうで」

「あはは。俺が来ただけでそんなに驚くなよ」

「す、すみません。ダン様がこちらに用があるなんて思いもしなくて。ヘルマは元気ですか?」

「ああ元気だ。気にかけてくれていたと伝えておくよ」


 ダンの後ろにいたエールタインは、キョロキョロと辺りを見回している。

 それに気づいた受付係がダンに尋ねた。


「エールタイン様……ですよね?」

「そうだ。今日はこいつに一人付けてやるために来たんだ」

「やはり剣士になられるんですね」

「この町に住んでいる上にあいつの子だ。本人の希望も案の定というわけでな」


 ダンの背中から、エールタインがひょこっと顔を出した。

 受付係の女性はニッコリと笑う。


「本当にかわいい子。もうここへ来る歳になったのですか。早いですね」


 ダンはエールタインの肩をガシッと抱いて、受付係の目の前に立たせた。


「こんにちは。好みの子がいるといいですね」

「……ですね」

「どうも緊張しているらしい。まったく、助手を付けるだけなのにな」

「うふふ。早速会ってもらいましょうか。案内しますね」


 Szene-06 奴隷紹介所内、面会室


 受付係に案内され、二人は奴隷との面会室に入室した。

 そこで登録者のリストを渡される。


「凄い……。こんなにいるんだね。どんな子なのかも書いてある」

「いやあ久しぶりだ。一人連れて帰りたくなるな」

「二人がすねるよ?」

「ははは。冗談に決まっているだろ」

「なあんだ。言いつけてあげようと思ったのに」


 そばで受付係がクスクスと笑っている。


「さあ、次の方をお待たせしてしまうので、面会を始めますよ」


 カウンターで分けられた面会室。

 奴隷が現れる側には椅子が五つ、面会側には三つの椅子がある。

 二人が座ると五人ずつ現れ、リストを見ながら一人ずつ話しをしていく。


「十歳から十五歳の子達だ。一番上でもエールと同じ歳だから気楽に選びな」

「うん」


 数グループとの会話が終わると、エールタインが伸びをした。


「気に入る子がいないようだな。まだまだいるが、今日はここまでにするか?」

「うーん、せっかくだからもう少し会ってみるよ。ダンに付き合ってもらっているんだし」

「それじゃあ次を頼む」


 次のグループが現れる。

 判断力が鈍くなるのを感じていたエールタインだが、俯いている一人の少女に目を奪われた。

 赤茶色のストレートヘアで、吸い込まれそうに透き通った青い目。

 少女は少し怯えているのか、肩をすくめて小刻みに震えている。


「次の子。えっとティベルダちゃん、十二歳だね。怖いのかな、大丈夫?」


 後ろから受付係が説明を始めた。


「その子ですが、父親からの教育が厳し過ぎて男性恐怖症になっていまして。剣士様は過半数が男性ということで、連れてこられた時からこんな調子なのです」

「そうなんだ……大変だったね」


 初めは力のない目をしていた少女ティベルダ。

 しかし、エールタインを見た途端に震えが止まり、しっかりと目を開けた。


「あら、珍しい。あんな表情ができる子だったかしら」

「そうなんだ、かわいいね……それに能力も高い。しっかり鍛えられたみたいだね」

「お? 今までで一番印象が良さそうだな。エールがこの先ずっと一緒にいたいと思える子にすればいいからな。ここにいる子たちの技術は全員優れている。あとは相性だけなんだよ」

「それじゃ……この子にする! いい笑顔ができる子だと思うんだ」


 ダンは受付係に目で合図をする。

 受付係がティベルダに手招きをすると、彼女はカウンター横にある扉に歩いて来た。


「今日からこの方があなたの主人よ。やさしい方だから安心しなさいね」

「初めまして、ボクはエールタイン。今日からよろしくね、ティベルダちゃん」

「……よろしくお願いします」


 ティベルダは満面の笑みを見せてから深々とお辞儀をした。


「この子もエールが気に入っているようだな。いい子に出会えて良かった」


 エールタインが手を差し出し、握手を交わす。

 面会室から出ようとエールタインは歩き出すが、握手をした手が離されない。


「ん? 握手は終わりでいいよ? 一緒にボクの家に行こう」


 改めて歩き出そうとするが手が離れる様子はない。


「あらら、不安なのかな。それじゃこのまま手をつないで行こうか」


 ティベルダはうれしそうにエールタインに付いていく。

 そして目の色が青色からオレンジ色に変わり、口角は若干上がっている。

 三人はその変化に気づくことはなかった。


「それでは契約の証ですが、どうします? 入れ墨と指輪がありますけど」

「お前だとやっぱりこっちか?」


 ダンは中指をつかむ仕草をしている。

 それを見てエールタインは大きくうなずいた。


「うん。とても入れ墨を入れさせる気にはなれないよ」

「だそうだ」

「うふふ、わかりました。ではお名前を打ちますので少々お待ちを。その間、契約書にサインをお願いします」


 奴隷契約書には、師弟二人のサインが必要だ。

 サインが終わるとティベルダは、いったん離していた手をすぐにつかんだ。


「不安だよね。でも指輪をしたらボクから離れちゃダメになるんだ。ティベルダをボクが離さないってことだから安心して欲しい」


 主従関係を結んだ二人に銀色の指輪が渡され、ダンが二人の左中指にはめた。


「これでエールも剣士へさらに近づいたな。修練にはげめよ」

「うん!」

お読みいただきありがとうございます。

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