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ボクっ娘剣士と奴隷少女の異世界甘々百合生活  作者: 沢鴨ゆうま
第三章 平和のための戦い

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第四十一話 女王からの本題

Szene-01 カシカルド城、ヨハナとヘルマの客間


 ローデリカとヨハナは二人だけで話すために、客間へ移動した。


「小さな拠点を改築しただけだから、客間も小さくてごめんね」

「とんでもないです。特に私はヘルマと共に廊下でもかまわないぐらいですから」

「もう、相変わらずね。そんな扱いするわけないでしょ――では、ざっとこれまでのことから話しましょうか」


 ヨハナとヘルマに用意された客間の真ん中で、椅子に座って向き合っている二人。ローデリカが話を始める。


「今日までどうだった? ティベルダが来る前までは特に連絡も無かったから、平穏に過ごして来たようには思うけれど」

「レアルプドルフについてずっと気にしていらっしゃるのですね」

「当然。両親はあの町の出身で、私も生まれたところなのだから。傭兵の父に連れられて他の町を転々としながら育ったから、こんな女にされたわ」


 ヨハナは両手を膝の間で軽く重ねて背筋を伸ばし、じっとローデリカの話を聞いている。


「あのね、そこはせめてクスリとぐらい笑って欲しいな。否定するところだよ」


 ヨハナは姿勢を崩さずに、軽く笑みだけ浮かべて見せた。


「あなたらし過ぎて――妙に安心しちゃうわ」


 ローデリカも軽く笑みを浮かべつつ、片手の指先をおでこに当てて自身を納得させると話を続けた。


「おかげで他の国のことを良く知れたけどさ。その経験が無ければ王様なんてやれないし」

「確か――アウフ様とダン様の前で突然宣言されましたね」

「あっはは、そうそう。野営している時に星を見ながら口走ったやつね。そしたらアウフも私のものにできる! とか思っちゃってさ。王様なんだから何でも思い通りになるんでしょ、なんて言ってたしね」


 始めは山の近くならではの冷気を感じる客間であったが、話が進むにつれて互いの膝に掛けられているブランケットが温まってゆく。

 ブランケットの温もりに合わせて、久しぶりに会った心も徐々につながってゆくのを感じる二人。

 ローデリカは話しを段々と本題へと寄せてゆく。


「あなたとヘルマと――ウルリカもそばにいて、戦場なのに楽しかったねー」

「ウルリカのことは――残念でなりません」

「可愛かったからねえ。私さ、レアルプドルフ出身だから奴隷――じゃなくって従者だっけ、を付けることができるのよね。だからアウフの勧めでウルリカを招いて。正解だったなあ、あんないい子に会えるなんて思ってもいなくって」


 ローデリカは、膝に掛かっているブランケットの端をいじりながら話す。


「剣士の手伝いとしか思っていなかったからさ、誰でも鍛えてあるんでしょう? とかひどい事を言ってた。アウフに訂正されてからは気持ちがガラッと変わって、こういうことか! ってね」

「ローデリカ様は他国での暮らしが長かったのですから、それはやむを得ないですよ。ウルリカはあの人なら大丈夫ってよく言っていました」

「そーなの!? あー、今抱きしめてあげたい!」


 座ったままで抱きしめる仕草をして見せるローデリカを見て、ヨハナはくすっと笑った。

 ローデリカはヨハナの笑いを逃さずに見てから言う。


「それでね、ヨハナ。あなた、私に付く気はない?」


Szene-02 カシカルド城、王室


「う、う」


 カシカルド城の王室では、残されたダン一行がローデリカとヨハナの話が終わるのを待たされている。

 デュオごとにティーを飲みながら雑談をしていたが、ティベルダの様子が怪しくなってきた。

 エールタインが手をつかみ直してみるが、ティベルダは戻りそうにない。


「どうしたの?」

「う、あのー、エール様が――」

「あー、わかったよ。ダン、ちょっと席を外しても大丈夫かな」


 ヘルマに遊ばれているダンが、少し助かったような顔をしながらエールタインに答えた。


「まだあの二人は帰って来ないだろうし、ちゃんと戻って来るならかまわんが」

「ちょっとティベルダがね、その――」


 ヘルマがティベルダを見ると、ルイーサとヒルデガルドものぞきこんだ。

 目の色がオレンジと紫色の二色で光り出している。


「おっと、それはエールに任せるしかない。行ってきな」


 王室内で女中と共に待機している侍女が対応した。


「客間までご案内します」

「すみません、お願いします」


 女中が真顔で目を光らせるティベルダに釘付けになっている中、侍女は驚きもせずエールタインに後を付いてくるように会釈をしながら目で伝える。

 静かに王室の扉が閉まると、ヘルマが呟いた。


「二日目で限界なのね。ずっと手をつないでいるだけでは効果が無いのは辛そう」


 残された四人と小鞄の中にいる一匹は、閉めらた扉を見つめていた。


Szene-03 カシカルド城、ヨハナとヘルマの客間


 ヨハナはローデリカからの突然な誘いに少々困惑しているようで、くすっと笑った顔が解かれてしまう。


「今のお立場で私が必要とは思えませんが――」

「と思うでしょ? ところがね、国がいつまでも平穏を保つのはすっごく大変なの。今すぐではないけれど、将来私が戦いに出る可能性も無いとは言えない」


 ローデリカは前に乗り出してヨハナの手を両手で包んで言う。


「正直ね、今の立場で戦場に出るのが怖いの。今でも攻め込まれたら――なんて考えるとどうしたらいいんだろうって。だから、そばにいて欲しいの。ヨハナ、だめ?」


 ヨハナはローデリカに手を包まれたままでしばし考える。そしてゆっくりと答えた。


「ローデリカ様にお仕えすることは光栄なことですし、私のことをよくご存じの方。ですが、私はダン様とエールタイン様に仕えている身です。私が決められることでは――」

「わかったわ。ダンとエールタインに話してみる!」

「あ、あの、ローデリカ様?」

「ダンなら大丈夫よお、ヘルマがいるもの。問題はエールタインよね。ティベルダがいるから良さそうだけど、まだヨハナが必要だと思う。やっぱりエールタインを引き取りたいわー」


 ローデリカは前のめりから姿勢を戻して膝を叩いている。


「アウフ様が笑っていそうですね」


 ローデリカとヨハナは一緒に笑い出し、冷えていた客間はすっかり温かくなっていた。

お読みいただきありがとうございます。

のんびりまったりなファンタジーを楽しんでもらえていたら幸いです。

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