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僕はロイ
本当の名前かどうかも分からないが
今はこう呼ばれている
元々は日本で育って死んだと思ったら
この世界に転生していた。
捨てられていたところを拾われたようで、
スラムの盗賊団に育てられていた。
育てられたと言っても、
録な食事も与えられず
教育も受けれずただ雑用をこなすだけ。
自分の正確な年齢も分からないが、
ここには僕と年が近い女の子がいた
そこではニーナと呼ばれていた。
僕たちは同じ時間を過ごすことが多くなった。
彼女は体が弱く、過酷な雑用はこなせなかった。
見たところここの子供の行く末として
2パターンある。
1つは、このまま盗賊団の一員として
使い潰されること。
2つ目が奴隷として売られてしまうこだ。
どちみち未来はないが、奴隷になる前に
動いた方が逃げやすい。
このままだとニーナは売られてしまう
僕らはかつて二人で生きていこうと誓った
一人では無理でも二人の力で幸せになろう、と
そして
僕はニーナを守り抜くと誓った。
もちろん二人で生きていこうと
誓いあった以上僕はニーナのことが嫌いではない
むしろ好きだし、
ニーナもある程度好きでいてくれているだろう。
ただこれは、
愛し合っているから二人で添い遂げるんだ
といったようなロマンチックなこともなく
二人で協力したほうが生きやすい
そういった生存本能からだろう。
まずはニーナを助けなければならない。
ここから逃げなければならない。
思い立ったその日の夜僕たちは
いつものように倉庫のようなほこりっぽい
物置小屋に放り込まれていたのだが、
僕はニーナに一言言った。
「逃げよう」
「……分かった」
何も反対せずに彼女は頷いてくれた
「今から行ける?」
「ん……」
短いやり取りだが人生を懸けた僕らの
脱獄が決定した。
盗賊団の連中は身寄りもない
小さな子供である
僕たちが逃げるなんて考えてもいないようだ。
確かにこんな子供が逃げ出したところで
どこで生きていけると言うのだろうか
外がどんな世界かもわからないのに。
快適とは言えないまでも、
最低限の衣食住が与えられているのだ。
そう思うのが普通だろう
逃げ出そうという発想にならないのが普通だ。
でも僕達は偶然真実を知ってしまったので、
奴隷として売られないために
他の選択肢がなかった。
だから逃げ出すまでは簡単だった。
問題はその後だ。
ひたすら走って逃げ込んだ先は
またスラム街だった。
身寄りのない僕たちが穏やかに暮らせる場所など
どこにもなかった
……廃墟を見つけてそこで暮らすことにした。
他にも住民は居たが、
誰もが関わろうとしなかった。
ここには街の残骸があり、
そこに何人かの人間が住み着いていた。
そこからは盗賊としての経験も活かし、
盗みによって食料を得ていた。
他には着るものなどもゴミを拾って、
使っていた。
ニーナはそう動けないので、
留守番を頼んでいた。
家にいる間は僕が拾ってきた本を読むことが
多いらしい。
教育は受けていないが、ある程度文字が分かる。
分からない部分は解読しながらの作業なので
十分暇は潰せるようだった。